皆さんは薬剤師にどんなイメージがあるでしょうか。
「かっこいい」「頭が良い」「薬に対する知識が豊富」など様々でしょう。
おそらく相当な勉強をして、相当努力を重ねたからこそ、自分の仕事には誇りを持って働いている人が多いのではないかと思います。
私の親戚に薬剤師がいますが、「自分でいうのもなんだけど、月に〇〇万円近く貰っている」と自分で嬉しそうに言っていました。
今回は派遣で薬剤師として働くことについて、平均時給や年収、メリット・デメリット、働く時の会社選びのポイントについて紹介します。
派遣の薬剤師は高時給!年収800万円なんていうこともある
派遣の場合、年収が低いイメージという人も多いですが、派遣の薬剤師は高時給のため年収も高いです。
最初に、厚生労働省が出している平均時給を見てみましょう。(参考:厚生労働省 平成29年度 「労働者派遣事業報告書表8 派遣労働者の賃金)」)
職種 | 時給 | 月収 | 年収 |
医師、歯科医師、 獣医師、薬剤師 |
2,914円 | 489,636円 | 5,875,632円 |
上記の表では薬剤師の職種は医師と同じ分類にされていて、平均時給は2,914円となっています。
月収にすると月約50万円、年収では600万円近くにもなりますね。
ちなみに、全ての職種を混ぜた派遣社員全体の平均年収は約300万円ですので、薬剤師は派遣全体の平均の2倍もの年収を貰えるということになります。
ただ、このデータは薬剤師のみに限定していないので、実際のところ派遣の薬剤師のみに限った平均時給は正確ではありません。
派遣の薬剤師の求人を実際に見てみると、時給は約2,500円前後が多いですが、人手不足となっている地方での求人であれば時給3,000円~4,000円と高時給な案件も沢山あります。
このように、薬剤師の年収は時給によって年収に差がありますので、表にして比較してみましょう。
時給 | 2,300円 | 2,500円 | 2,800円 | 3,000円 | 3,500円 | 4,000円 |
月収 | 386,400円 | 420,000円 | 470,400円 | 504,000円 | 588,000円 | 672,000円 |
年収 | 4,636,800円 | 5,040,000円 | 5,644,800円 | 6,048,000円 | 7,056,000円 | 806,4000円 |
時給が2,500円前後であれば月収は約40万円前後。そこまで大きな差には感じないのですが、年収にすると100万円近くも差が出ます。
派遣の薬剤師と正社員薬剤師で年収を比べると派遣の方が高い?
薬剤師の平均年収は以下の通りとなっています。
年齢 | 男性 | 女性 |
25~29歳 | 477万円 | 459万円 |
30~34歳 | 580万円 | 512万円 |
35~39歳 | 654万円 | 560万円 |
40~44歳 | 674万円 | 581万円 |
45~49歳 | 656万円 | 613万円 |
50~54歳 | 682万円 | 566万円 |
55~59歳 | 692万円 | 571万円 |
もし派遣の薬剤師として、時給2,500円で働くと年収はおよそ500万円、時給3,000円で働くと年収はおよそ600万円。
年齢や勤務先次第では、月収のみならずボーナスを含めた年収ベースでも正社員で働くよりも派遣で働く方がよいというケースがあるのです。
もしその場所でずっと働くつもりがなく短期的に働くことを考えるなら、正社員よりも派遣として働いた方が年収としては良いかもしれませんね。
派遣の薬剤師メリット、デメリット
派遣の薬剤師の年収は派遣全体のおよそ2倍ということが分かりましたね。
私の中での薬剤師は親戚のイメージがあるので「どうりで豊かな生活を送っているわけだ」と思いました。
ただ、派遣で働く薬剤師の中には、親戚のように「あえて派遣で働きたい」という人もいれば「派遣では目的が叶わない」と思っている薬剤師もいます。
派遣として薬剤師をすることで、メリットもあればデメリットもあるのです。
ここからは、派遣の薬剤師のメリット・デメリットを紹介します。
派遣で薬剤師になるメリット
最初に、メリットから紹介しましょう。
時給が高い
派遣の薬剤師は何と言っても高時給なところがメリットの一つです。
私の親戚は、年収600万円近く貰えると言っていましたので、おそらく時給3,000円くらい貰っているのでしょう。
同じ派遣社員でも薬剤師の時給は高く、私が一般事務で働いていた時の倍以上です。
そして正社員として薬剤師で働く場合と比べても、先ほど述べているように高い年収を得られるケースが多いです。
常に需要が高く派遣の中ではかなり恵まれている職種であると言えるでしょう。
残業なしの求人も多い
派遣の薬剤師は残業なしの求人も多く、定時に帰れることができるのもメリットです。
私の親戚は子供のお迎え時間があるため、あえて派遣の薬剤師を選んだと言っていました。
9時から6時まで働き、たとえ仕事が残っていても派遣は残らずに定時で上がれるようです。
これが正社員だったとしたら、子供を理由に残業しないなんて許されませんよね。しかし、派遣の場合は最初からそういう契約をすれば許されるのです。
自由なシフト、フルタイムではなくてもOK
正社員なら週5日勤務、1日8時間勤務であることが基本的。
しかし、子育てをしている人などだとそこまでは働きたくない、もっと少なくていいと思う人も多いですよね。
たとえば時給3,000円なら週3の6時間勤務でも21万円以上の収入になるわけですからそれで十分という人だっているはずです。
派遣の場合、フルタイムではなくても自分が望む働き方を選びやすく、プライベートとの両立ができるというメリットがあります。
条件を満たせば休日だけなどの単発、日雇い派遣も可能
派遣として薬剤師をするメリットの一つに、「休日の2日間だけ働く」といった日雇い派遣ができるということがあります。
日雇い派遣は原則禁止なのですが、下記のどれかに当てはまる人であれば例外として派遣薬剤師として働くことが可能です。
- 60歳以上
- 雇用保険の適用を受けない学生(昼間学生)
- 正業収入が500万円以上で副業として従事する人
- 世帯収入が500万円以上で主な生計者以外の人(複数の仕事をしている場合は一番収入額が高いものが主な仕事とする)
中でも、上記3番目の「正業収入が500万円以上で副業として従事する人」は、もともと年収500万円以上の仕事に就いているが、さらに単発で副業したいという薬剤師に当てはまりますし、4番目の「世帯年収が500万以上で主な生計者以外の人」に当てはまるのは、配偶者がメインで生計を立てている専業主婦の薬剤師や、子育て中のママ薬剤師でしょう。
直接雇用される話も少なくない
薬剤師の場合、派遣された職場で、契約期間満了後に「うちの社員として働きませんか」と誘われることも多いのもメリットの一つです。
派遣先としても、もともと派遣社員で働いていた人に声をかける方が、新たに採用面接する手間や教育にかけるコストを抑えることができるのでメリットなのでしょう。
派遣社員としても、引き続き同じ職場で働ける上に直接雇用になれるのは嬉しいですし、もしかすると直接雇用時の待遇も交渉できるかもしれません。
薬剤師であれば、正社員としての仕事探しも他の職種に比べて苦労するわけではありません。
ただ一度派遣で働いていると、その職場での雰囲気や待遇をわかった上で働くことができるので、転職して後悔することが少なくなるというメリットがあります。
地方の場合は住居付きの求人も多数
薬剤師として地方に派遣される場合は、住居付きの求人も多いのもメリットの一つです。
私の親戚は、独身時代に地方で薬剤師として働いてきましたが、住居付きだったため相当お金を貯められたと言っていました。
例えばワンルームで家賃8万円だった場合、住居付きだとその8万円が丸々貯金に回せますので、家賃だけでも年間96万円が貯まります。
さらに地方となると時給はぐんとアップしますから、想像するだけでも貯金額は相当なものですよね。
独身で貯金しようと思ったら、地方の住居付きの求人に挑戦するのもありかもしれません。
派遣で薬剤師をするデメリット
次に、派遣で薬剤師をするデメリットを紹介します。
キャリアアップが難しい
最初に、キャリアアップが難しいというデメリットがあります。
例えば調剤薬局であれば、年数を経て管理薬剤師になり、エリアマネージャーとなって薬局の運営などをするといったキャリアプランがありますが、派遣の場合は同じ職場に3年以上いることはできないため、管理職へ昇進するといったケースはありません。
また、管理薬剤師については、派遣法で派遣することさえ禁じられています。
このように「いつか管理職に就きたい」と思っている薬剤師には、派遣という長年勤めることができない雇用形態はおすすめできません。
しかし、派遣後に直接雇用の話がかかった場合は、ゆくゆく管理職への道も開かれる可能性はあるでしょう。
同じ職場では最大3年まで働けない
派遣社員として同じ職場で働くことができる期間は最大3年と派遣法で決められています。
また3年というのはあくまで最大期間であり、会社都合でもっと短い期間で契約期間が終わるケースも少なくはなく、だいたいは1年未満で終わります。
職場が気に入り、そこで働き続けたいと思ってもそれができなくなってしまうという点は一つのデメリットと言えますね。
かかりつけ薬剤師になりにくい
派遣の薬剤師には、かかりつけ薬剤師にはなりにくいといったデメリットもあります。
かかりつけ薬剤師になるには、以下の5つの条件を満たしていなければなりません。(参考:厚生労働省「平成30年度診療報酬改定」)
- 薬局勤務の経験が3年以上
- 勤務先の薬局に12か月以上在籍
- 勤務先の薬局に週32時間以上の勤務
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること
- 医療に関わる地域活動の取組に参画していること
上記要件の2番目「勤務先の薬局に12か月以上在籍」の部分は、派遣先によっては半年以内で終了してしまう可能性があるので難しい人もいるでしょう。
また4番目の認定薬剤師の資格取得は、平成29年4月1日から施行となった規定ですが、派遣の場合は派遣会社の福利厚生にある講座などを利用して、必要な単位数を集めてから認定申請することが必要となっています。
ただ、その他にも「かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの機能」として「24時間対応・在宅対応」などがあり、派遣の薬剤師には向かないものがあるため、現実的ではありません。
仕事では監査や投薬業務ばかり任されることも
薬剤師は、棚にびっしりと並べられた薬の位置を覚えるだけでも一苦労です。
そのため、派遣先によっては薬の配置を覚える手間を省くために、「患者に投薬」する仕事と、処方箋に記載のある薬が正確に調剤されているかを確認する「監査業務」を派遣社員にさせるといったケースが多く見られます。
つまり、薬の調合は他の薬剤師や長く勤めているパートが担当し、それを監査して患者に渡す役をするのが派遣社員ということです。
そのため「調合ができない」「薬剤師として機能していないようで虚しい」と感じることがあるかもしれません。
一人で業務にあたることも多く、忙しいことが多い
派遣の薬剤師の場合、思った以上に忙しい職場で、慣れていないうちから一人業務になってしまうということもデメリットの一つです。
例えば、大学病院の近くにある大きな調剤薬局などでは、患者の出入りも激しく多種類の薬が処方されるため薬局内も忙しくなり、慣れていないうちから調剤から手渡しまでを一人で行うというケースも多いでしょう。
また小さな薬局やドラッグストアの場合でも、薬剤師の人数が少ないところだと、思った以上に忙しいということもあります。
派遣社員として入って間もないうちから一人で業務にあたるのは、体力的にも精神的にもきついですよね。
患者との関係構築ができない
派遣の場合は契約期間に定めがあるので、患者との関係構築ができないといったデメリットがあります。
例えば薬局や病院勤務の場合、いつも来る通院患者と毎週・毎月のように顔を合わせることが多く、「この患者にはいつもこのお薬を処方する」といったように、「誰には何の薬を〇日分」という覚え方になることもあるでしょう。
また、処方薬の説明をする際は自分の名前を名乗る薬局も多いため、そのうち患者から「〇〇さん」と親しげに呼ばれることもあり、何年も続けばそれが一つの信頼関係になっていきます。
しかし派遣の場合は、業務に慣れてきたと思った時には契約終了となり、派遣先を去らなければなりませんので、患者との関係構築ができないままということになってしまうのです。
派遣薬剤師に対するひがみなど、人間関係に問題があることも
派遣の薬剤師は高時給のため、中には「派遣のくせに私より給料を貰っている」などといったひがみから、派遣社員に対して意地悪をする人もいます。
私の親戚の場合、小さな薬局で勤めていた時に、親戚よりも長く勤めるパートの「お局」のような存在がいて、自分のことを気に入ってもらえず「無視され続けた」と言っていました。
このように、人間関係に問題がある職場で働くと居心地が悪く、辞めたくなってしまうこともあるでしょう。
派遣の薬剤師として働く時の会社選びのポイント
派遣の薬剤師は、派遣先によって忙しい職場に放り出されたり、職場の人間関係問題に巻き込まれたりと、場合によっては悪い職場に当たってしまうことが分かりましたね。
一日のほとんどは職場にいるのですから、できれば不明点が出た時に先輩に聞くことができる環境が整っていて、問題なく仕事に専念できる職場で働きたいものです。
では、どのような求人を選べば問題なく働くことができるのでしょうか。
ここからは、派遣の薬剤師として働く時の会社選びのポイントを見ていきましょう。
研修制度やフォロー体制の整っている派遣会社を選ぶ
まずは派遣会社の選び方です。
転職するに当たって、求人数が多い派遣会社を選ぶというのも大事なことですが、研修制度やフォロー体制が整っている派遣会社を選ぶことが最も重要でしょう。
何故なら、派遣の薬剤師は契約期間ごとに職場が変わるため、その都度覚えることが多すぎて焦燥感や自己嫌悪に陥りやすく、フォローが必要になることが多いからです。
派遣会社の中には、薬剤師に対しての教育体制・フォロー体制が充実していて、例えば「調剤実技研修」や「無菌調剤研修制度」があったり、セミナーを開催していたりするところもあります。
自分の仕事をバックアップしてくれる派遣会社を選ぶことが大事でしょう。
派遣先の担当者が訪問したことのある職場を選ぶ
次に、派遣先の担当者が訪問したことのある職場を選ぶということも大事なポイントです。
仕事紹介をされた時は担当者に「〇〇さんはその職場を訪問されたことがありますか?〇〇さんから見た職場の雰囲気はどのような感じでしたか?」と聞いてみましょう。
人間関係が悪い職場に派遣されるケースのほとんどは、派遣会社の担当者がそんな職場だとは知らずに派遣していることが多いのです。
その担当者と自分の感覚が全然違う可能性もありますが、自分から見て感じの良い担当者が「良い職場」だと言うのなら、信じても良いかもしれません。
仕事を紹介される前に「実は昔、派遣先の人間関係で悩んだことがあるので、できれば人間関係の良い職場に行きたいです。」と言っておくのも良いでしょう。
もしその担当者が訪問したことがない派遣先だった場合は「どなたか訪問したことのある人に職場の雰囲気を聞いてみたいのですが…」といえば、もしかしたら違う担当者にきいてくれるかもしれませんね。
未経験OK、ブランクOKの職場を選ぶ
次に、未経験OK、ブランクOKの職場を選ぶことです。
薬剤師という仕事は基本的に即戦力が求められますから、実際のところはどちらもOKとなっている求人はそこまで多くはありません。
しかし、未経験やブランク経験OKの職場だと、自分のハードルを下げてくれているので、最初から一人業務にならずに済む可能性は高くなるでしょうし、ママ薬剤師の復帰を歓迎していたりするため、アットホームな職場が多く、割と丁寧に仕事を教えてもらえるかもしれません。
将来のプランに向けて「今だけ派遣で薬剤師」をするのは非常に良い選択
今回は薬剤師について説明しました。
ここまでをまとめてみましょう。
まとめ
- 派遣の薬剤師は時給が高く約2500円前後。地方に行くと時給は4,000円、年収800万円貰えることもある
派遣で薬剤師になるメリット:
高時給・残業なしや単発、日雇いでできる職場がある・住居付きの求人もある・直接雇用の話が多い
派遣で薬剤師になるデメリット:
キャリアアップを目指したり、かかりつけ薬剤師になるのは難しい・監査や投薬業務ばかりの可能性がある・忙しく一人業務の可能性がある・患者との関係構築ができない・高時給をひがまれるなど、人間関係が悪い職場もある
- 派遣で薬剤師として働く時は、研修制度やフォロー体制が整っている派遣会社を選び、担当者が訪問したことのある職場で、未経験OK・ブランクOKの求人がベスト
派遣の薬剤師は、正社員以上に給料を貰えることが一番のメリットです。
ですからキャリアアップはできなくても、「子育てをしながら薬剤師をしたい」「結婚前の数年間だけお金を貯めたい」「将来のキャリアアップをするための準備期間として働きたい」というように、何か将来のプランがあって、そのために「今だけ派遣で薬剤師」をするのは非常に良い選択でしょう。
好きな期間だけ派遣で薬剤師をして、ぜひ計画通りの人生を歩んでくださいね。