請負社員とはどんな雇用形態か知っていますか。
請負社員の場合も、派遣社員と同じく現場に出て労働することが多いようなのですが、同じ現場にいても働き方も違えば給与形態までも全然違うのです。
また、中には「偽造請負」という偽の請負をさせる悪い会社もありますから、今後自分が騙されないようにしっかりと知識を入れておきましょう。
本記事では派遣社員と請負社員の違いについて徹底的に調べ、わかりやすく説明していきます。
※1 2020年5月
そもそも請負とは何?
請負とは労働の結果として仕事の完成を目的として行うものです。
請負業者は、ある仕事を完成することを前提に注文主と契約を結び、仕事の結果に対して報酬を貰います。
民法第632条で示されている請負の定義は以下の通りです。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第632条 )
例えば、歴史的建造物を建設する計画があったとして、発注者が請負業者に仕事を発注します。請負業者はこのプロジェクトを遂行するための労働力として100人の労働者を雇い、建設の指示を出し、期限までに建設を終えるとようやく報酬金が入るという仕組みです。
一般的に言われる請負は「客先請負」と呼ばれますが、「個人請負」と言って、請負業者と雇用関係を持たない労働者もいます。
派遣社員と請負社員の違いとは
まず派遣社員とは、派遣会社に雇用されて、派遣先の会社から仕事を貰い、派遣先から指揮命令を受けて労働する人のことを言います。
一方、請負社員とは、請負会社に雇用されて、発注者があらかじめ請負会社に委託した仕事を貰い、請負会社から指揮命令を受けて労働する人のことです。
この派遣社員と請負社員には、大きく分けて以下の3つの違いがあります。
- 指揮命令関係
- 雇用期間
- 給与形態
では以下で具体的に見ていきましょう。
指揮命令関係の違い
厚生労働省では、派遣と請負の違いは「指揮命令関係の違い」だとしています。
最初に派遣社員の場合の雇用関係や指揮命令関係の図を見てみましょう。
(引用:茨城労働局「派遣と請負の違いは」)
上の図からは、派遣社員の場合は雇用主と指揮命令をする人が異なることがわかります。
次に、請負社員の場合の雇用関係や指揮命令関係の図を見てみましょう。
上の図からは、請負社員の場合は発注者から指揮命令されないことがわかるでしょう。指揮命令するのは雇用主である請負会社になります。
つまり請負会社は「私が仕事を貰いますよ」と言って発注者と請負契約を交わして仕事を貰い、請負労働者を雇って指示を出し、自分の代わりに労働させるのですね。
請負社員の場合に気を付けなければいけないのは、客先請負として実際に働いている場所にいるその会社の上司や社員から指揮命令等はできないという点です。
雇用期間の違い
派遣社員は一般的に3か月ごとの契約更新が多く、いつかは契約終了になります。同じ職場の同じ部署で働ける最大期間は3年間です。これは3年ルールという法律に基づいています。
一方請負社員の場合は、発注元のプロジェクト遂行のために仕事をしているので、長期プロジェクトになることもあれば短期プロジェクトもあり、期間はまちまちです。
請負社員は派遣法等の制約をうけません。客先で仕事をするという点では派遣社員と同様ですが、長期プロジェクトで3年以上客先に常駐することになっても問題はないということです。
給与形態の違い
派遣社員の場合は時給制になりますので、残業代も含めて労働したら労働した時間分の給料が出ますが、交通費は出ません。
また、休日数が多い月はその分出勤日数が減るため給料が下がってしまいます。
一方、請負社員の場合は、請負会社に契約社員か正社員として雇用されているので月給制で交通費も出ますし、会社によってはボーナスや退職金が出ることも。
ちなみに個人請負の場合は、仕事に対する成果報酬型になり、一つのプロジェクトが終わるとその成果に応じて給料が支給され、プロジェクトの内容によって支給額に大きな差が出ることが多いです。
そもそもの目的の違い
派遣社員と請負社員の目的の違いは、労働力を提供するのが派遣社員で、企業の求める成果物を提供するのが請負社員となります。
派遣社員と請負社員の契約を見てみると、派遣社員は派遣元と雇用契約を結ぶのに対して、請負社員も請負元と契約を締結します。
また、派遣社員は同じ職場で働ける期間が法律で長くても3年までとなっていますが、請負社員の場合はプロジェクトが長い場合などは継続して業務をすることが可能でしょう。
他の大きな違いとしては、請負社員は直接発注者から指示されて働くことがありませんが、派遣社員は派遣先から指示を受けることがあります。
偽装請負とは?請負だと思ったら実は派遣だったなんてこともあるので要注意
偽装請負という言葉は聞いたことがあるでしょうか。
厚生労働省では、偽装請負について以下のように述べられています。
偽装請負とは、書類上、形式的には請負(委託)契約ですが、実態としては労働者派遣であるものを言い、違法です。
労働者派遣法等に定められた派遣元(受託者)・派遣先(発注者)の様々な責任が曖昧になり、労働者の雇用や安全衛生面など基本的な労働条件が十分に確保されないという事が起こりがちです。
例えば、請負社員だと思っていたのに、自分の雇用主から業務の指示や命令をされるのではなく、直接発注者から業務の指示や命令をされたりするのであれば、請負というよりも労働者派遣になりますから、「偽装請負」と言えるでしょう。
請負か派遣かは契約という形式ではなく、現場の実態で判断されます。
では、偽装請負の4つの代表的なパターンを挙げてみましょう。
- 発注元が直接労働者に業務指示を出し、勤務時間等の勤怠管理まで行うパターン
- 一見責任者かのように見えて、実は発注元の指示をそのまま労働者に伝えているだけの形式的な責任者がいるパターン
- 請負会社Aは、発注者から請け負った仕事をさらに別の請負会社Bに丸投げし、請負会社Bに雇用されている労働者が発注元に行き、発注者や請負会社Bの指示によって労働する、結局誰に雇われているのか分からないパターン
- 請負会社Aは、別の請負会社Bで働くように労働者に促しておきながら、実際は請負会社Bはその労働者と労働契約は結ばず、個人請負(個人事業主)として請負契約を結ばせて業務指示や命令を出し労働させるパターン
上記のように、直接の指示や管理する人が雇用主ではなく他社の人になるのが偽装請負です。しかも労働者に対してあれこれ命令する割には、労働基準法という法律を無視します。
例えば上記の4つ目の「個人請負にさせるパターン」でよく問題になっているのは「休日出勤や残業代が全く出ないこと」です。
一般的な請負(客先請負)では、労働者は請負業者と雇用関係にありますから、月給に加えて残業代や休日出勤代も支払われます。
しかし、個人請負の場合は誰とも雇用関係を持たないので、どんなに残業しようが休日出勤をしようが、給料には上乗せされないのです。
請負会社からすると、その分コストがかからないですよね。偽造請負ではそれを利用して、わざと個人請負にさせるのです。
では、偽装請負かどうかを見分ける4つのポイントを挙げてみましょう。
-
- 発注者の事業所等で就業する場合、請負会社の責任者が現場にいて、業務指示や勤怠管理、就業規則や仕事の割り付けなどをしているか
- 職場での規律や服装等の人事管理を請負会社が自ら行っているか
- 必要になった交通費などの資金を発注者に請求したりせず、請負会社自らが資金調達するなど経理上で独立しているか
- 労働者が使う機械や設備等は請負会社が自ら調達したものか、発注者が設備等を調達する場合は無償で使用させていないか
請負社員として働く人は上記のポイントをしっかりと抑え、偽装請負かどうかをしっかりと見極める必要があるでしょう。
偽装請負を回避するポイント
偽装請負は、様々な企業で起こり得る違法行為ですが、偽装請負を回避するためには普段から仕事における指示が誰からどのスタッフに行われているかチェックしておくと良いでしょう。
また、派遣社員は働いているスペースと、請負社員が業務しているスペースを変えることで、派遣と請負の違いははっきりすることができて偽装請負を回避することもできるでしょう。
請負社員で働いている方が、仕事の現場で自分の仕事が偽装請負ではないかと感じたら、他のスタッフに偽装請負である可能性について聞いてみることで、実際にどの程度の偽装請負をしているのか把握できることもあります。
もしも重大な偽装請負であると判断できる場合は、早い段階で他の会社を探すことを検討するのも良いでしょう。
偽装請負や派遣と請負の違いで頻繁に起こる問題
偽装請負と請負の違いでよく起こる問題は「残業代の不払い」や「労災の責任逃れ」があります。
残業代の不払い
請負の場合は、基本的に仕事についての完成結果に対する報酬でお金が支払われるので、残業代などは基本的に支払われないことが多いですが、業務量などが契約内容よりも超過する場合は、事実上残業代に等しい金額を増額することが可能でしょう。
請負であるのに頻繁に派遣の様に業務内容を増やされるケースを考慮して、事前に契約内容に業務量の増加分を残業代のように上積みするように記載されているかチェックすると良いでしょう。
労災の責任逃れ
請負では、原則として労災に加入できませんが労災に加入していないのに、派遣社員のように仕事先のスタッフから直接指示をされることがあり、断れない場合があります。
実質的に仕事先での指示を断ることができないケースでは、仕事をしている会社の従業員と同じような扱いになっているので、労災に加入できる可能性が出てきます。
それでも労災に加入できないで派遣と同じような環境で請負として業務をしていれば、実際には労災の責任逃れのような状況で仕事をしていることにもなり得ます。
派遣社員と請負社員の双方のメリット・デメリット
では、派遣社員と請負社員はどちらの方が良いのか気になりますよね。ここからはの双方のメリット・デメリットを比較してみましょう。
派遣社員のメリット
- 残業時間が少ない
- 派遣会社に仕事の相談ができる
残業が少ないのは派遣社員
派遣社員はあらかじめ残業時間の希望を出して就労することが可能です。
なので全く残業がない会社を選ぶこともできますし、残業があっても月0時間~10時間くらいという会社を選ぶことも可能です。
職種にもよりますが、例えば事務職の求人を見ると、残業が多い会社でも月20時間程のところが多いです。
しかも派遣社員は時給制ですので、残業代もしっかりと給料に上乗せされます。
一方、請負社員の場合は、プロジェクトを完成させることが前提で請け負っていますので、締め切りは絶対に守らなければいけませんし、そのためには残業することもあります。
例えば3日後が締め切りだとして時間が足りないとなれば、徹夜してでも仕事に打ち込む必要がありますし、それはまれなことではありません。
残業時間で比較すると、圧倒的に派遣社員の方が少ないでしょう。
派遣会社に仕事の相談ができる
派遣社員は、何が仕事で困ったことがあった時は電話などですぐに派遣元の営業担当者に相談できるシステムがあります。
正社員と比べた場合、正社員では仕事で問題があっても同じ会社のスタッフになかなか相談しづらいことがあり、問題を解決できないケースが多いのに対して、派遣社員は問題が発生したら派遣元に相談でき、客観的な意見を聞けて問題解決できる良さがあります。
派遣社員のデメリット
- 派遣の期間に上限がある
派遣期間に上限がある
派遣社員には長くても同じ職場で働ける期間が3年という上限があります。
派遣社員の中には、同じ職場で3年を超えて仕事をし続けたい方もいるので、派遣期間の上限は派遣社員のデメリットと言えます。
派遣社員の上限が3年となっていますが、実際には半年や数カ月で仕事を変えるケースも多く派遣社員を検討している方は、事前に知っておいた方が良いでしょう。
請負社員のメリット
- 雇用に安定性がある
- 仕事に対する達成感がある
雇用の安定性があるのは請負社員
請負社員で正社員として雇用される場合であれば、一つのプロジェクトが終わったとしても雇用自体は継続されています。
つまり次のプロジェクトが開始されるまでの間も給料は発生している状態なのです。
一方、派遣社員の場合は同じ会社の同じ部署で働ける最大期間は3年間と決まっていますので、いくらその人の働きぶりが良くても3年経てば契約終了になってしまいます。
3年未満であっても、更新して貰えなければもっと早く終わります。
また、一度契約期間が終了すると派遣会社との雇用も切れてしまうので、次の仕事までのブランク期間があった場合は給料は発生しません。
そのため雇用の安定性があるのは請負社員と言えるでしょう。
ただ請負社員でも契約社員という雇用形態であれば、派遣同様有期雇用となり、プロジェクトが終わると更新して貰えなくなる場合もあります。
仕事に対する達成感が得られるのは請負社員
仕事に対する達成感を得られるのは請負社員でしょう。
請負社員はプロジェクトに向けてチームで仕事をする機会があるため、一つのプロジェクトが完成した時に、仲間と達成感を味わうことが多いです。
特に請負社員の場合は残業時間も多いので、そういった「過酷な日々を乗り越えた仲間」という意味でも、達成感は大きいのでしょう。
一方で派遣社員の場合は、チームで何かを遂行するというよりも、どちらかと個人プレーで「大量の仕事を黙々とこなす」ことが多いですし、期限や目標が定まっているわけではないので達成感は得られないことがほとんどでしょう。
請負社員のデメリット
- 希望している職種の求人がない場合がある
自分が希望する職種の求人がない時がある
請負社員の求人は探してみると、それほど多くない職種もあるのであまり職種を絞り過ぎない方が良いでしょう。
元々請負社員は、成果物の納品を目的としている契約をするため、エンジニアなどの限られた職種になる傾向があるため、職種によっては自分を希望する職種を見つけることが難しいでしょう。
派遣社員と請負社員の共通点
派遣社員と請負社員はそれぜぞれにメリット・デメリットがありますが、どちらも共通している点も多くあります。
経験やスキルを積むことができるのはどちらも同じ
経験やスキルを積むことができるのはどちらも同じくらいでしょう。
派遣社員の場合でも、同じ業種だけを選ぶことによって特化したスキルを磨くことができますし、短期的に違う職場を選んで様々な職種に就き、経験値を上げることができます。
請負社員の場合も同様に、長期プロジェクトによっては一つの業務に従事することができるのでスキルを積むことができますし、様々な経験を積むことが可能です。
法律などの規律に従って管理されるのはどちらも同じ
法律などの規律に従って管理されるのはどちらも同じです。
派遣社員は雇用主である派遣会社によって管理されますし、請負社員も雇用主の請負会社に管理されることになります。
どちらも雇用契約がある限りは、雇用主によって管理されているのです。
ただ、偽装請負の場合は、結局のところ使用者が誰なのかが曖昧になってしまうために法律などの規定に従って管理されないということがありますので気をつけましょう。
信頼できる大手の派遣会社を選ぶことが大事
派遣社員と請負社員の違いについて説明してきましたが、どちらも一見派遣のようでいて、実は雇用形態が違うのですね。
どちらの雇用形態にもメリットとデメリットはありますが、偽装請負の話もありますから、どちらにしても信頼できる会社選びをするのが一番大事だと言えるでしょう。
派遣社員に転職を考えている人は、ぜひ大手の派遣会社に登録してください。大手の派遣会社は法律を遵守しますので、労働者は法律に守られている中で仕事をすることができます。
派遣会社にも色々ありますから、一つ良い条件の求人があるというだけでよくわからない小さな派遣会社に登録するのはあまり好ましくないでしょう。
すぐにでも働きたい気持ちはわかりますが、ただやみくもに会社を選ぶのではなく、周りの人にも知っている派遣会社を聞くなどして、よく吟味することが必要です。
信頼できる大手派遣会社に登録し、安心して働けると良いですね。
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