皆さんは昇給した経験がありますか。
私は「派遣社員になったからには昇給なんてないものだ」と覚悟していましたが、友人から「派遣社員でも昇給できるよ」と言ってもらい、「そんな方法があったなんて」と棚から牡丹餅でした。
実際に友人は派遣社員で就業中に給料が上がったのです。
本記事では、派遣社員の昇給について、昇給のタイミングや昇給額の相場、昇給する人の割合や昇給する時のポイントについて詳しく説明します。
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派遣には昇給がある?
派遣社員で働いて2年目…時給アップってしないのかなぁ。
派遣社員でも、人によっては昇給できるんだよ。
「派遣社員には昇給がない」と思い込んでいる人は多いのではないでしょうか。
実際に私もそう思い込んで諦めていたうちの一人です。
しかし、実際は派遣社員にも昇給はあり得ます。
ここでは派遣形態別に見ていきましょう。
登録型派遣の場合
多くの派遣社員は、時給制である登録型派遣として働いています。
「昇給」と聞くと、毎月の給料額が上がることを指しますが、登録型派遣の場合、「時給〇円アップ」という形で昇給することがあるのです。
例えば時給1,000円の仕事が時給1,050円に上がるといった感じですね。
今回の記事では、この「登録型派遣」の昇給に関してピックアップして解説していきます。
無期雇用派遣の場合
無期雇用派遣の場合、「一つの職場で3年まで」という期間制限はないですが、月給であるとは限りません。
つまり時給制のままということが多いため、昇給は登録型派遣と同様に「時給〇円アップ」という形になることがほとんどです。
もちろん月給制の無期雇用派遣の場合は、会社によって昇給もあり得るでしょう。
正社員型の常用型派遣の場合
派遣会社の正社員として働く常用型派遣の場合は月給制で、年1回の昇給がある場合が多いです。
また、正社員なのでボーナスがある会社の場合は、昇給分がそちらにも反映されることになるでしょう。
紹介予定派遣の場合
「派遣期間が最長6か月」と決められている紹介予定派遣では、基本的に時給アップ等の昇給はありません。
また、派遣期間終了後に直接雇用された場合、月収でみると上がるケースもありますが、逆に下がってしまうケースもあるのです。
例えば、「派遣期間中は時給1,500円、直接雇用後は月給20万円~23万円(残業代別途)」だとすると、派遣期間中の月収は約25万円になりますが、直接雇用後の月収は低くなってしまいますよね。
もし直接雇用の打診を受けたときは、その点についてしっかり確認・検討が必要です。
派遣の昇給タイミングは?
派遣の昇給のタイミングは以下の2つです。
- 契約を更新するとき
- 派遣先を変更するとき
上記のいずれかであることがほとんどでしょう。
具体的に以下で説明していきます。
契約更新時の時給アップ
最初に、契約更新時の時給アップです。
派遣会社と派遣先の双方にとっては、優秀な人材に仕事を続けてもらう為に、時給を上げてくれるというケースはゼロではありません。
派遣先からの評価も非常に高く「〇〇さんは期待以上に頑張ってくれているから長く働いてもらいたい」などと派遣会社に伝わっている場合は、派遣会社側から時給アップを提案してくることもあるのです。
ただし毎回更新のたびに昇給するわけではなく、多くても1年に1回程度である場合が多いでしょう。
ですから契約更新時には自分から時給交渉していくことも必要です。
派遣先を変更する時の時給アップ
次に、派遣先を変更する時の時給アップです。
派遣社員は各派遣先によって時給が決まっている為、派遣先を変えることで時給が上がるというケースが多くあります。
同じ職種でも、派遣先が変わるだけで時給が何百円と違うこともあるのです。
時給が100円上がるだけでも月収は16,800円増えるので、年間にすると約20万円も収入が変わるのですから大きいですよね。
ただ逆に時給が下がるケースもあるので、派遣先選びは重要です。
派遣で本当に時給は上がる?昇給の実態や相場、割合
ここまでは、派遣社員の時給がアップする可能性と昇給のタイミングについて説明しました。
時給制の派遣社員の場合、昇給はあり得るということをお伝えしましたが、実際に時給アップした人はどのくらいいるのでしょうか。
ここでは、実際に時給アップした人の割合や、時給アップの相場について詳しく説明していきます。
派遣社員の年代別月収状況から見る給料の上がり幅
最初に、厚生労働省が公表した平成30年度のデータによる派遣社員の給料の上がり幅を年代別に見てみましょう。
派遣社員だけのデータではありませんが、「正社員・正職員以外」と言うくくりで派遣社員を含めた非正規労働者の平均賃金を年代別に公表しています。
(参考:厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」)
年齢階級 | 男女計 正社員・正職員以外 賃金 |
年齢計 | 209,400円 |
~19歳 | 165,500円 |
20~24 | 182,100円 |
25~29 | 198,200円 |
30~34 | 204,900円 |
35~39 | 207,700円 |
40~44 | 205,600円 |
45~49 | 206,100円 |
50~54 | 204,300円 |
55~59 | 206,200円 |
60~64 | 236,500円 |
65~69 | 208,200円 |
70~ | 199,500円 |
年齢(歳) 勤続年数(年) |
48.3 8.7 |
上記では、20代前半で18万2千円だった給料が、40代前半になると20万5千円となっており、上がり幅は約2万円ということが分かるでしょう。
派遣社員の場合、20代後半から50代後半までの平均賃金はほぼ同じ金額なので、給料の上がり幅は非常に小さいと言えるのです。
派遣社員で時給アップする人の割合は?
次に、派遣社員で時給アップする人の割合を見てみましょう。
日本人材派遣協会では、派遣社員に対して「過去3年間の派遣就業中に給与が上がったか」というアンケートを実施しています。
(参考:一般社団法人 日本人材派遣協会「派遣社員WEBアンケート調査2017年度」)
上記のグラフから、トータルで見ると昇給した派遣社員は約3人に1人の割合ということが分かりました。
通算期間別にみると、1年以上3年未満では4人に1人、5年以上ともなると約半数近くの派遣社員が昇給しているようですね。
つまり通算期間は長い方が昇給に繋がりやすいと言えるでしょう。
派遣社員の時給アップって実際どれくらい?
では、派遣社員の時給アップは実際にどれくらいなのか見ていきましょう。
転職サイトのエン・ジャパンでは、2019年2月末~ 3月27日までの間、回答者2,151名にアンケート調査を実施しています。
(参考:エン・ジャパン「お給料・時給(2019年3月調査)について」)
上記の円グラフからは、約半数の人の時給が10円~50円アップしていることが分かるでしょう。
次に多いのが51円~100円、また10人に1人は201円以上も時給アップしているようですね。
相場としては50円以内というところでしょうか。
時給アップを月給に換算してみると・・・
派遣社員の時給がアップすると、月給に換算したらどのくらい給料が上がるのか具体的に見ていきましょう。
時給アップの金額を20円刻みで計算してみます。
時給アップ額 | 月給 (実働8時間×21日) |
20円 | 3,360円 |
40円 | 6,720円 |
60円 | 10,080円 |
80円 | 13,440円 |
100円 | 16,800円 |
120円 | 20,160円 |
140円 | 23,520円 |
160円 | 26,880円 |
180円 | 30,240円 |
200円 | 33,600円 |
上記の表のとおり、時給が20円アップするごとに月給は3,360円上がっていくことが分かるでしょう。
時給が20円アップする人と時給が200円アップする人では、月給は3万円も変わるのです。
実際にこうして見ていくと、せめて少しだけでも時給アップしたいという気持ちが強くなりますね。
正社員の平均昇給額との比較
次に、派遣社員の昇給額を正社員の平均昇給額と比較してみましょう。
(参考:厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」)
以下は全産業の正社員の平均昇給額です。
平成30年の一人あたりの平均昇給額は5,675円です。
上記のように、従業員が5,000人以上の大企業の場合は平均昇給額は7,100円ほどにもなりますが、多くの会社は5,000円~5,600円くらいになっていることが分かるでしょう。
この平均昇給額を1日8時間、月21日稼働として時給に換算すると正社員の時給アップ率は33円程度となります。
となると、先ほどのアンケート調査で派遣社員の6割が時給10円~50円となっていましたが、実は派遣が特別悪いわけではないのです。
ただ派遣の場合、昇給が全くしないことがあったり、派遣先が変わるタイミングで時給が下がってしまうという点で、長期間で見ると正社員ほど伸びていきません。
また職種にもよりますが、派遣の場合は時給に上限があります。
たとえば事務の仕事で時給が1,800円までいくというのは、よっぽどでない限りあり得ません。そんな高い時給で働く派遣を派遣先の企業は望まないでしょう。
派遣で高収入を望むのであれば、ITスキルなど特別なスキルが必要なのです。
派遣のITエンジニアの主な種類と仕事内容。平均時給、平均年収はいくら?将来性はある?
派遣で昇給する為にやるべきこととは?
派遣社員にも実際に昇給があって、月に数千円上がっている人もがいることが分かったら、当然自分も同じように昇給したいと思いますよね。
これまでは「時給が10円上がったところで…」と考えていた人も多かったはず。しかし正社員の昇給額でさえ時給33円程度なのだと思えば、「派遣でいるのも悪くない」という気持ちが湧いてきたのではないでしょうか。
では、派遣社員で時給アップした人は実際に多くの人はどのようにして時給アップをしているのでしょう。
ここからは派遣で昇給するためにやるべきことを説明します。
派遣会社に時給交渉をする
最初に、派遣会社に時給交渉をすることです。
転職サイトのエン・ジャパンが行ったアンケート調査では、派遣社員で時給アップした人の中に、「交渉をしたらアップした」という人もいることが分かりました。
(参考:エン・ジャパン「お給料・時給(2019年3月調査)について」)
このデータを見ると、時給交渉すれば約4割の確率で時給アップが可能ということになります。
一方で交渉せずに時給が上がった人は28%、上がらなかった人は59%です。
交渉せずに上がった人は約3割なので、交渉した方が時給アップする可能性は高いと言えるでしょう。
交渉をせずアップもしていない人のほとんどは「言いづらい」とか「言ったところで…」と思っているでしょうが、それは勿体ないかもしれませんね。
より時給が高い派遣先に仕事を変える
昇給を狙うなら、今よりも時給が高い仕事に就くことがベストでしょう。
「ずっと同じ職種で働き続けたい」と思う気持ちも分かりますが、前にも述べたとおり職種によって時給にはある程度の上限がありますから、事務職をどんなに極めても時給の相場というのはだいたい決まっているものです。
ですから長い目で見て高い時給の仕事に就けるように、スキルアップしておくことが大切になりますね。
派遣の時給交渉のポイント
派遣社員が昇給するには、時給交渉が大切だということが分かりました。
では、時給交渉をする時のポイントは何でしょうか。
「こんなに頑張っているんだから時給を上げてくれないと更新しません」というような横柄な態度はもちろんNG。
かと言って謙虚に出過ぎても却下されそうですし、どのように交渉すれば良いのかは難しいところですよね。
ここからは、派遣の時給交渉のポイントについて見ていきましょう。
タイミングは勤続1年以上たった契約更新時
最初に、時給交渉のタイミングを抑えましょう。
時給交渉は、最低でも勤続年数が1年以上経ってからが基本です。
先程の調査でも、昇給した4人に1人が勤続年数が1年~3年で、3年以上の勤続年数の人であれば約4割が昇給していましたね。
ですから、まだ入社して1年も経っていないのに時給交渉をするのはやめた方が良いでしょう。
また、交渉するタイミングとしては数カ月に1回の契約更新時です。
契約更新が近づいたら、派遣会社が派遣先に訪問してくることがほとんどなので、その面談時に交渉すると自然ですね。
交渉相手は派遣会社の営業担当、派遣先の上司はNG
派遣社員の時給アップの交渉相手は派遣会社の営業担当です。
派遣の時給は派遣会社が決めていて、派遣先から受け取る派遣料金の中から賃金が支給されます。
基本的には、派遣先が派遣会社に支払う派遣料金をアップしてくれたら時給もアップされるので、派遣会社と派遣先の間でも交渉が必要になるでしょう。
あくまでも派遣社員への賃金を支給するのは派遣会社ですから、時給交渉の相手は派遣先の上司ではなく派遣会社の営業担当です。
突然派遣先の上司に言うのはNG行為ですので気を付けましょう。
交渉時のアピールポイント
ここでは、実際に交渉によって時給がアップした人がアピールしたポイントをいくつか挙げてみます。
- 後輩の指導をしている
- 自分の提案で業務が効率化した
- 業務に関わる資格の取得
- 目標に対する自分の結果
- 他の派遣社員と比べた仕事量
- 正社員よりも仕事量が多いのに時給が安い
- 家が非常に遠いのに交通費なしで毎日遅くまで残業している
- 期待以上の働きぶりだと上司から褒められている
- 仕事量が増えても良いから時給を上げてほしい
上記のように、自分の立場や実績をアピールするのが一番説得力がありますが、具体的な実績がなくても普段の自分の頑張りによって交渉が成立している人は多いようですね。
派遣社員が時給交渉するには、派遣先での評価が高いことが大事です。
派遣として働いて1年以上経ち、派遣先の上司から仕事ぶりを評価されている自覚があるなら、一度時給交渉をしてみるのも良いかもしれませんね。
自分の将来のために今すべきことは何かを考えよう
今回は、派遣社員の昇給について説明しました。
ここまでの記事をまとめてみましょう。
まとめ
- 登録型派遣や時給制の無期雇用派遣の場合「時給アップ」という形で昇給することがある
- 正社員型の常用型派遣の場合は、月給制なので年に1回の昇給がある場合が多い
- 紹介予定派遣では派遣期間が最長6か月なので基本的に昇給はない
- 時給アップのタイミングは、契約更新時と派遣先を変更する時
- 派遣社員の平均賃金は20代後半から50代後半までほぼ同じなので、給料の上がり幅は小さい
- 派遣社員で時給アップする人は3人に1人の割合
- 派遣社員の昇給の相場は10円~50円
- 正社員の時給アップ率は33円程度
- 時給が20円アップするごとに月給は3,360円上がる
- 派遣社員が時給アップするには「時給交渉」か「派遣先変更」
- 時給交渉は勤続年数1年以上の契約更新時に、派遣会社の営業担当にする
- 交渉時のアピールポイントは自分の立場や実績・普段の自分の頑張り
派遣社員は最初から時給が決まっていますが、その時給は絶対とは言い切れず、自分の頑張り次第でアップすることも可能です。
多くの派遣社員は昇給に対してマイナスイメージを抱いていますが、自ら交渉に踏み切らず、チャンスを逃している人は多いのかもしれません。
時給交渉しづらいという人は、スキルアップに努めて時給の高い仕事に就くのが最短でしょう。
自分の将来のために今すべきことをして、後悔のないように働いて下さいね。
もしも派遣社員の給料・待遇に不満がある方は正社員も検討を
派遣社員でも時給アップはしていきますし、場合によっては正社員よりも時給換算した時の給料が高くなるケースもあります。
ただ、そのようなケースは全員に当てはまるわけではなく、多くの方は中々時給が上がらないということに不満をいだいていることも事実です。
また、時給が高くなりすぎると派遣先の会社からしても人件費が高くなるので「それだったら社内教育をして戦力化した方が長期的に良い」と判断をして、結果的に派遣社員の採用をしなくなることもありえます。
もしも、派遣社員の時給が上がらないということや、その他の待遇面で不満があるという方は正社員への転職も検討をしてみましょう。
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