派遣社員であれば気になる「派遣切り」。
2008年の「リーマンショック」と呼ばれた世界的な不況からの金融危機により、派遣切りされた派遣社員が山のようにいたことからその言葉が広まりました。
しかし「派遣切りは昔の話だから関係ない」とは言えません。何故なら今現在も派遣切りは続いているからです。
本記事では、派遣切りについてその理由などの背景から派遣切り対策、万が一派遣切りされた場合の対処法について詳しく説明していきます。
※1 2020年5月
派遣切りは3つのケースに分かれている
まず「派遣切り」には3種類のケースがあります。
- 契約途中にも関わらず、会社都合で契約が打ち切られ、解雇されるケース
- 派遣社員の意思に関わらず、契約更新のタイミングで更新してもらえないケース
- 派遣社員の意思に関わらず、契約更新のタイミングで更新してもらず、派遣会社からも解雇されるケース
上記の3つのケースが「派遣切り」になりますが、2番目の「契約更新のタイミングで更新してもらえないケース」は「雇止め」とも呼ばれます。
本記事では、最初に挙げた「契約途中にも関わらず、会社都合で契約が打ち切られ解雇されるケース」について詳しく説明します。
契約途中で解雇される派遣切りとその理由
派遣社員が契約途中にも関わらず解雇される理由は、派遣先企業が経営不振に陥ったからでしょう。
企業は自分の会社の経営が傾いてきた時に、経費削減を図ります。その一つとしてやむを得ず人員削減を実施するわけです。
人員削減するとなれば、企業側は自分の会社の社員から切るわけにいきませんから、他社の人である派遣社員をまず対象にします。
この人員削減=整理解雇が契約途中で解雇される理由です。
ただ、この整理解雇はあくまでも企業側の都合によるものですので、整理解雇が認められるかは法律により厳しく判断されます。
ここで派遣切りと解雇について図で表しているものを見てみましょう。(参考:厚生労働省「派遣切りと解雇の関係」)
上記図のとおり、派遣先企業は派遣切りを行うにあたって、事前に派遣会社にそのことを通知しなければなりません。
また、派遣先企業の関連会社をその派遣社員に紹介するなどして就業を斡旋する必要があるのです。
派遣切りされた場合の給料、休業手当、解雇予告手当について
派遣先企業の都合によって派遣切りされた場合でも、派遣会社と派遣社員の雇用は契約期間満了まで継続しています。つまり派遣会社はその間の給料を支払う義務があるのです。
また、労働基準法により、派遣会社が派遣社員を休業させることにした場合は、休業期間中は給料の60%以上の休業手当を派遣社員に支給しなければいけません。
また、解雇を行う場合は30日前までの予告が必要です。
もし予告を行わない場合には、解雇までの日数に応じて解雇予告手当を払わなければいけません。(参考:厚生労働省「派遣契約の中途解除に伴い派遣労働者を安易に解雇しないでください」)
違法となる派遣切りとは、やむを得ない事情がない場合の解雇を指す
派遣切りは、会社の業績不振などのやむを得ない事由がない限りは違法にあたります。
企業の中には、正当な理由のない不当解雇をするところも存在するのです。
この不当解雇に該当する場合は、違法だと認められれば慰謝料や給料を請求することができます。
例えば不当解雇に当たるものとして、妊娠や病気を理由にされたり、単に上司との相性が悪くて解雇されたというのが挙げられるでしょう。
不当解雇については第三者が話を聞いておかしいと思うものが多いです。
不当な派遣切りだと認められたケースとして、契約期間が1年だった派遣社員Aさんの話があります。
Aさんは1年契約で入社したにも関わらず、会社の業績悪化に伴って2か月目で派遣切りされました。しかし、その間に派遣会社から紹介された次の派遣先はたった1件のみ、しかも条件が非常に悪いだったので断ったのです。Aさんは納得が行かずに裁判を起こしました。
結局、裁判では「派遣会社として当然請求することができる権利の行使を怠っている」と判断され、派遣社員の給料の約6か月分の金額が解決金として支払われることになったのです。
ただ、スキル不足により業務に支障が出てしまっているための解雇は不当解雇には当たりません。
できるだけ派遣切りされないための対策
絶対に派遣切りされないための対策というのはありません。
派遣切りは派遣社員の問題ではなく、派遣企業の経営の問題であることがほとんどだからです。
ここからは、できるだけ派遣切りされないための対策を挙げていきます。
大手派遣会社を選ぶ
小さな派遣会社を選ぶより、大手の派遣会社を選びましょう。
何故なら大手の派遣会社は法律を重んじているため、取引先である派遣先企業も法律を遵守する企業が多いこともあり、不当な派遣切りや解雇はされにくいからです。
会社にもよりますが、小さな派遣会社の中には法律よりも独自のルールに沿って運営しているところもあるため、派遣切りや解雇に対して知識が浅いこともあるでしょう。
また、小さな派遣会社は大手企業の案件よりも中小企業からの求人を受けることも多く、派遣切りの可能性が高いような派遣先に当たりやすいということもあります。
スキルを活かして副業する
派遣社員の場合、いつ派遣切りされてもおかしくない状況ではあるので、万が一のことを考えると副収入はあった方が良いと思います。
派遣は副業が許可されていることも多いので、スキルを活かして副業していれば、万が一派遣切りされてしまった場合でも収入の足しになりますよね。
現代は気軽にインターネットでお小遣い稼ぎができますので、事前に備えておいた方が良いでしょう。
働きながらスキルアップを図る
派遣先企業の業績不振に陥ってしまった時はやむを得ず人員削減されますが、派遣社員が多数いる派遣先では、徐々に減らされる可能性もあります。
そうなった時に選定されるのはやはり派遣社員の仕事に対する「スキル」でしょう。
派遣先企業にとって、少しでも長く居てもらいたいという人材はスキルがある人です。
やむを得ず派遣切りされてしまった場合でも、周囲に認められるスキルがあれば派遣会社としても「ぜひこの人を派遣したい」と思ってくれますので、次の雇用先が見つかるまでの期間も早いでしょう。
そのスキルは派遣社員として働いていく中で身に付けるしかありません。次にやりたいと思う業種に活かせそうな資格を取るのも良いですね。
現在はIT系の会社が増えていますが、プログラマーやエンジニアは人手不足となっていますので需要が高いです。
自分の将来のために動くことが派遣切り対策にも繋がっていくでしょう。
実際に派遣切りされた場合にすべきこと
派遣切りは会社の経営事情のとばっちり。とは言っても起こる時は起こりますから、もし実際に派遣切りされた場合はなんとか対処していくしか方法はありません。
ここからは実際に派遣切りされた場合にすべきことを見ていきましょう。
数社の派遣会社にすぐに仕事紹介をしてもらいましょう
登録している派遣会社にすぐに声をかけ、できるだけ早いうちに仕事の紹介をしてもらいましょう。
登録している派遣会社が多い分、沢山の求人を紹介してもらえますね。
また、自分でも積極的にインターネットで求人検索をしておくと、これまでと違った良い案件が見つかるかもしれません。
不当な解雇の場合は窓口に相談しましょう
不当解雇に当たると思った場合は、厚生労働省の「総合労働相談コーナーのご案内」-厚生労働省に相談してみましょう。ここでは、解雇や雇止め、パワハラなど様々な分野の労働問題を扱っています。
その他にも、無料で弁護士に電話相談したり、無料で弁護士と面会ができる法律事務所もあるので利用してみるのも良いかもしれません。
場合によっては慰謝料や給料を請求することが可能でしょう。
失業保険を貰いましょう
会社都合の場合は失業保険がすぐに貰える可能性が高くなります。
何故「すぐに貰える」と言い切れないかというと、会社都合の場合でも、原則として6か月以上の雇用保険の被保険者期間がないと失業保険がすぐに貰えないからです。
「会社都合だからすぐに失業保険を貰えると思っていたら、まだ4カ月しか被保険者期間がなかった…」となってしまった場合は、諦めてすぐに仕事を探すしかないでしょう。
最後に
今回は派遣切りについて説明しました。
派遣社員にとって派遣切りは、いつ飛んでくるかわからない爆弾のようなものです。
ただ、派遣切りは派遣先の会社の問題であって、派遣社員個人の問題ではありません。もし個人的なことを理由に契約を切られた場合、やむを得ない理由でなければそれは不当解雇に当たるでしょう。
派遣社員として働くにあたって「派遣切り」を関係ないと考えるのではなく、自分に降りかかってきても冷静に対応できるように、今からスキルアップを図るなど普段から派遣切りに負けない対策をとっておく必要がありますね。
このように、まだ起こっていないことを想定して今から備えておくことで、実際に派遣切りが起こった時に悲しみに暮れることなく乗り越えていけるでしょう。
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