男性の派遣社員の割合は意外と女性と変わらない。業界別の割合や派遣を続けるメリット・デメリットについて

派遣社員の働き方

派遣は男性が少ないからやめたほうが良いのではないか、あるいはすでに派遣で働いているけどこのまま続けようか迷っている。今まさにこのような悩みを抱えていませんか?

今回は、派遣労働者の男性は就業人口の何割の人なのか、派遣社員全体での割合と大卒・高卒などの学歴別、業界別、年齢別、そして給与の差など詳しく分析し、男性が派遣社員で働くメリットとデメリットなども併せてまとめてみました。

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派遣で働く男性の割合

労働力調査(詳細集計)2019年」によると労働者派遣事業所の派遣労働者の数は約141万人います。内訳は女性が85万人に対し男性は56万人と差が29万人もあるので数の上では男性がだいぶ少なく見えます。

ただしこの数字は「労働者派遣事業所」の派遣社員の数です。実際職場での男女比はどうなっているのでしょうか?

派遣労働者の性別割合

「平成29年 度厚生労働省派遣労働者実態調査」によれば、派遣労働者の職場での男女比を確認すると、男性が49.5%、女性は50.5%となっています(2017年10月1日現在)。

派遣労働者が所属している事務所の男女比ではそれほど大きな差は見られず、ほぼ同じ割合であることがわかります。

産業別派遣労働者の割合

全体では男女比にそれほど差がありませんでしたが、産業別に派遣労働者の男女比を比較するとどうなるでしょうか。

産業 男(100%) 女(100%)
総数 49.5 50.5
鉱業・採石業・砂利採取業 45.1 54.9
建設業 49 51
製造業 60.3 39.7
電気・ガス・熱供給・水道業 29.5 70.5
情報通信業 65.6 34.4
運輸業・郵便業 56.1 43.9
卸売業・小売業 40.8 59.2
卸売業 31.2 68.8
小売業 49.8 50.2
金融業・保険業 8.8 91.2
不動産業・物品賃貸業 22.3 77.7
学術研究・専門・技術サービス業 56.9 43.1
宿泊業・飲食サービス業 39.9 60.1
生活関連サービス業・娯楽業 45.9 54.1
教育・学習支援業 32.7 67.3
医療・福祉 22.7 77.3
複合サービス事業 14.2 85.8
サービス業(他に分類されないもの) 33.6 66.4

女性は金融業・保険業と複合サービス事業の8~9割を占めているのに対し、男性は情報通信業と製造業の6割以上を占めています。一口に派遣といっても産業によって男女比は異なるのです。

派遣に女性が多いと思われる要因

男性が多い情報通信業と製造業でも女性は3割以上いますが、女性が多い金融業・保険業では男性は1割未満です。他にも女性が6割を超える職場は金融業・保険業と複合サービス事業を含め9つもあります。

そのため男性の派遣労働者は少ないというイメージが強くなっているのです。

 

ところが男女の割合が近い産業は、運輸業・郵便業と小売業、そして学術研究・専門・技術サービス業など6つあり、すべての産業の数値を平均すると男女の割合が男性49.5%、女性50.5%となります。つまり実際はそこまで大きな男女比の違いは無いのです。

※この男女比はあくまで派遣労働者の男女の割合です。正社員や契約社員、そしてアルバイトなどは含まれていません。

 年代別の男女比

年代別で男女比はどうなっているのか 年代ごとの表にまとめました。

年代別 男(100%) 女(100%)
15~19歳 0.2 0.2
20~24歳 6.1 6.3
25~29歳 12.3 10.2
30~34歳 11.6 14.4
35~39歳 12.9 14.1
40~44歳 15.0 18.0
45~49歳 10.8 15.4
50~54歳 8.6 10.3
55~59歳 6.4 5.0
60~64歳 6.2 3.3
65歳以上 9.6 2.5

 

派遣労働者の割合は24歳まで男女に大きな差はありません。「25~29歳」では男性のほうが2.1%多く、それ以降は「50~54歳」までは女性が多くなっています。しかし「55~59歳」からは男性のほうが再び多くなり、これは退職後に派遣労働者になるケースが影響を及ぼしていると考えられるのです。

派遣業務別派遣労働者割合

産業別の次に派遣業務別で派遣労働者の割合を確認します。

派遣業務 男性(100%) 女(100%) 総数(100%)
ソフトウェア開発 11.6 1.4 6.4
機械設計 6.4 1.1 3.7
事務用機器操作 5.2 18.9 12.2
通宅・翻訳・速記 0.1 0.8 0.5
秘書 0 0.9 0.5
ファイリング 0.5 6.5 3.5
調査 0.4 0.1 0.3
財務処理 0.6 2.7 1.7
取引文書作成 0.1 0.8 0.4
デモンストレーション 0 0.1 0
添乗 0.3 0.1 0.2
受付・案内 1.7 5.4 3.6
研究開発 4.9 2.2 3.5
事業の実施体制の企画・立案 0.2 0.1 0.1
書籍等の制作・編集 0.2 0.3 0.3
広告デザイン 0.1 0.5 0.3
OAインストラクション 0.3 0.2 0.2
セールスエンジニアの営業、金属商品の営業 0.6 0.3 0.5
放送機器等操作 0.5 0.2 0.4
放送番組等演出 0.7 0.2 0.4
建築物清掃 0.6 0.5 0.6
建築設備運転、点検、整備 1.9 0 1.0
駐車場管理等 0
インテリアコーディネーター 0 0
アナウンサー 0 0
テレマーケティング 1.2 0.2 0.7
放送番組等における大道具・小道具 0 0
水道施設等の設備運転等 0.8 0.4
営業(18号及びテレマーケティングを除く) 1.3 0.4 0.9
販売 2.9 5.5 4.2
一般事務 7.4 38.6 23.2
介護 0.5 1.4 1.0
医療関連事務 0.1 3.7 1.9
物の製造 29.1 13.5 21.2
倉庫・搬送関連業務 13.6 2.2 7.8
イベント・キャンペーン関連業務 0.4 0.5 0.4
その他 8.3 5.3 6.8

総合で派遣労働者を最も使っている業務は23.2%で「一般事務」、次いで21.2%で「物の製造」、3番目が12.2%で「事務用機器操作」となっており一般事務が圧倒的に派遣労働者の割合が多いです。

男性は「物の製造」が29.1%で1番多く、2番目が13.6%の「倉庫・搬送関連業務」、3番目に11.6%で「ソフトウェア開発」。女性は1番が38.6%の「一般事務」、2番目が18.6%「事務用機器操作」、そして3番目が13.5の「物の製造」となります。

派遣業務別割合に関する男女の差

派遣労働者を使用している割合が高い業務ベスト3で、順位こそ違え女性は総合と同じ業務がランクインしています。それに対し男性は同じ業務は「物の製造」だけです。

このことから「物の製造」は性別に関係なく派遣労働者が多く従事していることがわかります。また総合と女性で1番の「一般事務」は、女性が38.6%と男性の7.4%の約5倍です。

派遣の種類ごとの男女比

派遣には登録型と常用雇用型の2種類があり、種類ごとに登録数の男女比を確認します。

その前に登録型と常用雇用型の違いを理解しておきましょう。

登録型

登録型は、まず派遣労働を希望する労働者を派遣元事業所が登録しておきます。次に派遣先事業所から求めがあった場合、仕事内容に合った労働者を派遣元事業所が雇い入れた上で、派遣先事業所に派遣するのです。派遣労働者は登録しただけでは契約は成立しておらず、派遣されて初めて雇用関係が成立します。

常用雇用

常用雇用とは、その名の通り派遣元事業所が労働者を常時雇用し、その事業活動の一環として労働者を派遣先事業所に派遣する形態です。

ではこの2つの派遣の種類で男女比はどうなるのでしょうか?

[派遣の種類]
派遣の種類 男(100%) 女(100%)
登録型 39.0 68.5
常用雇用型 61.0 31.5

登録型は女性が多いですが常用雇用型では男性が多く、ほぼ真逆の結果になります。

 

派遣労働者の人数は男性より女性のほうが多いですが業種によっては男性の割合が多く、そのため産業の割合では男女比にそれほど差はありません。また登録型と雇用型で派遣労働者の数を比較するとその割合が反転し、明らかな性差が現われています。

参考サイト:「平成29年度 厚生労働省派遣労働者実態調査」より

※上記データより表・図を作成。

派遣労働者として働く男性社員の最終学歴

派遣労働者の男女比を確認してきましたが、今度は男性の派遣労働者はどのような最終学歴が多いのかを分析します。

(「不明」は男:0.3、女0.1)

参考サイト:「平成29年度 厚生労働省派遣労働者実態調査」より

高校卒が最終学歴の人が43%を超えて1番多く、2番目に多いのは30.5%の大学卒、そして12.9%で専門学校修了と続きます。

派遣に学歴は必要ない

派遣の求人には「高卒以上OK」と書かれている場合が多く、高卒が多い要因の1つに考えられます。

派遣労働者に求められるのは即戦力となることなので学歴は求められませんし、派遣先企業が派遣社員の学歴を知ると違法になります。

大卒が2番目に多い理由

大学を卒業しても就職先がなかった就職氷河期世代が現在も派遣労働者として働いていることがあげられます。また転職をしようとして上手く行かずに派遣に登録している方もいるのです。

このような理由から高卒が派遣労働者になる割合が最も多く、次いで大卒となります。

初就職の雇用形態

学校卒業後に初めて職に就いたときの雇用形態は何が1番多いかも確認しておきましょう。

初めて就いた職 男(100%) 女(100%)
正社員 74.0 73.2
正社員以外 25.4 25.5
派遣労働者 11.1 6.0
短期労働者 5.9 6.0
有期契約労働者 4.4 7.1
その他 4.0 6.4

男性も女性も70%以上の方が正社員であり、最初から派遣労働者になる人は男性が11%、女性はわずか6%しかいません。

具体的な人数(2019年)

労働力調査(詳細集計)2019年(令和元年)平均(速報)」によると、雇用者数5660万人のうち,正規の職員・従業員数(正社員)は3,494万人で、男性は2,334万人、女性が1,160万人です。労働者派遣事業所の派遣社員(派遣労働者)は141万人で、男性が56万人、女性は85万人となっています。

派遣労働者の時給

派遣労働者で働いた場合、時給はいくらぐらいになるのでしょうか。

時給 総数(100%) 男(100%) 女(100%) 登録型(100%) 常用雇用型(100%)
1,000円未満 14.5 14.1 14.9 13.6 15.6
1,000~1,250円未満 35.5 35.6 35.3 38.6 31.9
1,250~1,500円未満 21.1 18.9 23.2 21.3 20.8
1,500~1,750円未満 14.3 11.3 17.1 16.6 11.5
1,750~2,000円未満 4.2 4.3 4.0 3.6 4.9
2,000~2,250円未満 1.9 2.7 1.0 1.6 2.2
2,250~2,500円未満 1.0 1.9 0.1 0.4 1.7
2,500~2,750円未満 0.8 1.3 0.3 0.3 1.3
2,750~3,000円未満 0.6 1.0 0.1 0.4 0.8
3,000円以上 3.0 1.4 1.4 1.1 5.1
不明 3.4 3.2 2.6 2.6 4.3
平均賃金 1,363円 1,435円 1,294円 1,296円 1,442円

参照URL:「厚生労働省 平成 29 年派遣労働者実態調査の概況」より

全体では「1,000~1,250円未満」が 35.5%と最も高く、次いで「1,250~1,500円未満」が21.1%、3番目に「1,000円未満」が14.5%となっています。平均賃金は1,363円です。

時給に関する男女の差

「2,250~2,500円未満」から「2,750~3,000円未満」まで、男性は1%以上存在しますが、女性は0.3%以下しかいません。男性のほうが派遣の人数は少ないものの時給が高い人の割合は多いと言えます。ただし圧倒的に多い「1,000~1,250円未満」は男女ともほぼ一緒の割合です。

また平均賃金は男性が1,435円なのに対し女性は1,294円と141円の差があり、1日8時間労働で1ヵ月に22日働いたとすると24,816円の開きになります。

派遣の種類による差

どちらとも「1,000~1,250円未満」が最も割合が多いのですが、登録型が38.6%なのに対し常用雇用型は31.9%と6.7%も差があります。対して「3.000円以上」が登録型は1.1%しかないのに、常用雇用型は5.1%と4%も多い結果になっています。

平均賃金では登録型が1,296円、常用雇用型は1,442円と146円の差になり、1日8時間労働で1ヵ月に22日働いたとすると25,696円の開きになります。

 

派遣労働者の時給の平均からは、男性のほうが女性より有利で所属するなら登録型より常用雇用型のほうが良いと言えます。

男性が派遣労働者として働き続けるメリット・デメリット

働くなら派遣よりやっぱり正社員になりたい、そんなふうに考えていませんか? たしかに正社員のほうが福利厚生もしっかりしていて賞与などもあります。しかし派遣には正社員にはないメリットもあるのです。

ここでは派遣のメリットとデメリットを確認していきます。

派遣のメリット

派遣労働者には4つのメリットがあります。

メリット1. 副業が可能

正社員と異なり、気兼ねなく副業が出来るので空いた時間にバイトやFXなどをすることができます。また平日は派遣社員、土日は展示会スタッフといった働き方もできるのも派遣社員ならではです。

メリット2. 幅広い経験ができる

派遣なら1つの業種にこだわらず様々な企業や職場で経験を積むことが可能です。正社員は出向するか転職でもしないと他の職場で働くことはありませんが、派遣なら契約が終われば別の職場へ行くことができます。同じ職種でもそれぞれの企業に特徴があるため、複数の企業で働くことで自分の技術に磨きをかけることも可能です。

メリット3. 時給が高い

都内であればほとんどの仕事で時給1,000円は超えていて、中には3,000円~5,000円の派遣先もあります。また高時給なのに対してあまりスキルを必要としない仕事も多くあるのもポイントです。

メリット4. 比較的責任が少ない

派遣労働者は与えられる仕事も限定されたものである場合が多く、大きな責任が伴うことは少ないです(=仕事上のストレスが少ないことが多い)。

 

派遣の最大のメリットは自由度が高いと言うことです。正社員では所属した職場が嫌でも通常簡単に変えることはできません。しかし派遣なら派遣元の担当者に相談し現在の仕事を更新しないという方法がとれます。

また職種を変更することも可能で、例えば事務職で働いていたのを契約終了後、次は製造業で働くということも派遣元に仕事があれば不可能ではありません。正社員では転職に時間や手間が必要ですが、派遣では面接などもなく比較的スムーズにできます。

派遣のデメリット

メリットを確認したところで、今度は3つのデメリットも確認しましょう。

 デメリット1. 正社員よりも収入が低い

派遣社員と正社員は仕事内容がほぼ同じであったとしても、年収に大きな差がある場合があります。

厚生労働省の「厚生労働省 派遣労働者実態調査」によれば、賃金に対する評価で「満足していない」が39.1%もあります。派遣労働者の満足していない理由をみると、「派遣先で同一の業務を行う直接雇用されている労働者よりも賃金が低いから」が26.7%と最も高いです。

月給で見ると派遣社員の方が高くなったとしても、ボーナスや決算手当、住宅手当などを入れた年収で見ると正社員の方が多いとも言えます。

デメリット2. 職場環境が変化しやすい

派遣では同じ会社に最長3年までしかいられないため、雇用が安定せず職場を転々としなければなりません。平均的には半年~1年半の期間で職場が変わります。

派遣のデメリットは正社員よりも待遇が悪いことに加え、同じ職場に3年以上いられないことです。ただし給与に関しては契約社員やアルバイトに比べると派遣のほうが高い場合が多いです。

 

派遣労働者にも正社員にもそれぞれメリットとデメリットがあります。今後転職を考えているなら、どちらが自分に合っているかを比較してみてください。

また転職をする際に経験がなくて採用されない職種でも、派遣に登録すれば就ける場合があります。派遣で経験を積んでから正社員を目指す方法もあるので、そのような形でも派遣を活用してください。

性別や雇用形態ではなく自分に合った働き方を

男性だから派遣労働者に向かないとか、正社員のほうが派遣労働者よりもいいとかは一概には言えません。

派遣労働者の人口は女性が多いのは事実ですが、仕事によっては男性が多いものもありますし職場によっても同様です。

また派遣労働者を続けるかどうかについては、たしかに正社員のほうが待遇の良い場合が多く、派遣と違い長くても3年までしか同じ場所にいられないということもありません。

しかし場合によっては人間関係などで別の職場になりたいことや自分の時間が欲しいということもあるでしょう。そういう方は派遣が合っているのではないでしょうか。

転職を考えているなら、この機会に派遣も検討してみると良いでしょう。働き方の幅が広がり、やりたかったことや働いてみたかった会社が見つかる可能性も出てきます。

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