派遣社員で育児休業を取得できる条件・対象者・育児休業給付について

派遣社員の働き方

子どもが産まれたときに取得できる休業制度には、産前・産後休業と育児休業があり、近年では、パパとなった男性が育児休業を取得するケースが増えています。

育児休業を取得する男性を育児をするメンズとして「イクメン」などと呼んでいますが、この育児休業は派遣社員も取得することができるのでしょうか。

育児休業の概要と育児休業期間中の経済支援の種類、派遣社員が職場復帰する際のポイントを紹介していきます。

育児休業とはどんな制度なのか

育児休業は、1991年に制定された育児・介護休業法という法律に基づく制度で、働きながら育児を行う労働者のための両立支援制度です。

近年では子どもを産み育てやすい環境作りの一環として、育児休業を推奨する企業が増えています。

労働者が気兼ねなく取得できるよう配慮する企業が増えていますが、はじめに育児休業を取得できる期間や対象者の範囲など詳しく見ていきましょう。

育児休業を取得できる期間は基本1年間

育児休業を取得できる期間は、子どもが生まれてから1歳になるまでの間の1年間を基本として、労働者の申し出により取得することができます。

基本の育児休業期間

基本的には子どもが1歳になる前の日までの間で、本人が希望する期間の取得が可能。

  • 母親のみ・・・産後休業(出産日の翌日から8週間)終了日の翌日から
  • 父親のみ・・・子どもが生まれた日から

父母ともに育児休業を取得する際は、子どもが生まれてから1歳2ヶ月になるまでの間の1年間まで取得が可能です。

もしも、産後休業中に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくとも本人の申し出により再度、育児休業を取得することができます。

また、子どもが1歳になったときに保育所に入所できないなど事情があるときは、子どもが1歳になる2週間前までに申し出を行い育児休業を1歳6ヶ月まで延長が可能です。

なお、平成29年10月からは子どもが1歳6ヶ月以降も保育所に入所できない場合、最長で2歳になるまで再延長が可能となりました。

育児休業の延長は子どもが1歳になる前にも手続きが可能で、その際には、当初育児休業を終了する予定日の1ヶ月前までに申し出ることで延長できます。

育児休業の対象者

育児休業を取得できる対象となる方は、1歳未満の子どもを育てる労働者で、父母(男女それぞれ)が取得対象となります。

また、雇用形態により分けられているのではなく、育児休業を取得する条件をクリアしている労働者なら誰でも取得することができます。

育児休業の取得により会社側に義務付けられるもの

育児休暇は本人からの申し出により取得できる精度ですが、会社側もしっかりと整備をするように求められています。

もし、育児休暇を取りたいと申し出をした場合に「会社の規則として整備されていないからだめ」と拒否されないためには会社側へのある程度の義務は必要です。

時短勤務などの措置

3歳未満の子どもを育てる労働者のために、短時間勤務制度(原則1日6時間)を設けることが義務付けられています。

労働者の希望により短時間勤務を利用できます。

子どもの看護休暇制度

小学校就学前までの子ども1人につき年5日、2人以上は年10日を限度として看護休暇を取得することができます。

半日単位での取得もできます。

時間外労働の制限

会社は小学校就学前までの子どもを養育する労働者から請求があったときは、1ヶ月24時間、年150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。

転勤への配慮

労働者を転勤させる場合、育児状況への配慮義務があり、無理な転勤はさせることができません。

所定外労働(残業)の制限

3歳未満の子どもを育てる労働者が請求した場合、所定外労働を制限することができます。

所定内の残業に留めなければなりません。

不利益取扱いの禁止

育児休業などの申し出や取得を理由として解雇もしくは、他の不利益として取り扱うことは禁止されています。

そのため、育児休業は申し出に合わせて取得させなければなりません。

深夜業の制限

小学校就学前までの子どもを育てる労働者が請求した場合、22時~翌5時までの深夜において労働させてはならないため、原則深夜勤務をさせることはできません。

育児休業に関するハラスメントの防止措置

育児休業等を取得した労働者の上司や同僚による、育児休業等の制度やその措置への申し出・利用に関して、言動によるハラスメントを防止する措置を義務付けしています。

育児休業は派遣社員でも取得できる? 育児休業取得の条件を確認

育児休業制度の対象者は、雇用形態で分けられているのではなく、各種条件により区別されています。そのため、派遣社員でも各条件をクリアすれば取得が可能です。

では、育児休業を取得できる労働者の条件について、一緒に確認していきましょう。

1週間に3日以上勤務していること

1週間のうち3日以上勤務していることが必須条件となります。

フルタイムの正社員でなくとも、週に3日以上勤務していれば育児休業を取得できます。

1年以上継続して同一の企業に雇用されている場合(日々雇用されている方は除く)

派遣社員の場合は派遣元の派遣会社と雇用契約を締結しているので、派遣先での就労期間ではなく、派遣元企業を基準に考えます。

例えば下記の場合はどうなるでしょうか。

派遣元P社に登録し、派遣先企業A社で3ヶ月の契約を締結し3回契約更新した。
その後、同じ派遣元P社から派遣先企業B社を紹介され、3ヶ月の契約を締結し2回契約を更新した。

この場合は、派遣先企業Aには合計9ヵ月、派遣先企業B社には6ヶ月就労していたことになりますが、派遣元P社には合計で1年3ヶ月在籍しています。

この場合は、派遣元企業P社に1年3ヶ月働いていることとなり育児休業の取得が可能です。

もし、派遣先B社に就労する際に派遣元を替えた場合は、派遣元での雇用期間がそれぞれで1年未満になり育児休業の対象外となります。

子どもが1歳6ヶ月に達するまで雇用契約があること

子どもが1歳6ヶ月に達するまで雇用契約の満了が明らかではない(更新する可能性がある)場合、育児休業を取得できます。

子どもが1歳6ヶ月に達するまでに契約が満了となるケースや、その契約の更新の見込みがない場合は育児休業取得の対象外となります。

更新の可能性の判断基準として、派遣社員が育児休業を取得するには、派遣契約の契約満了日や更新の有無が重要なポイントになってきます。

その判断基準は主に、派遣会社の就業規則や労働契約が基準となり、更新した契約期間が子どもが1歳6ヶ月になるまで満了とならないか、満了になることが明らかではない場合に、育児休業を取得できると判断できます。

育児休業中の経済支援「育児休業給付」と免除になる各種保険料

産休や育休中は、会社から給与がでないことがほとんどです。

会社によっては給与の何割かを支給するところもありますが、基本的にはほぼ出ないと考えていて良いでしょう。

こうした産休・育休中は、会社の代わりに国からいくつかの経済支援を受けることができます。

育児休業中の経済支援の種類や具体的な金額など、併せてチェックしていきましょう。

育児休業期間中は会社からの給与は出ないが「育児休業給付」がもらえる

労働者が1歳未満の子どもを養育するために育児休業を取る場合に育児休業給付が支給されます。

これは、子どもが1歳を超えても休業が必要と認められる場合は最長2歳になるまで延長支給されます。

支給される金額は、育児休業開始から6ヶ月までは休業開始前賃金の67%、それ以降は50%となります。

育児休業給付の計算方法

育児休業給付額は、「育児休業給付=休業開始前賃金日額×支給日数×67%(休業開始から6ヶ月まで、それ以降は50%)」で計算され、自分で計算しておおよその支給額を把握することが可能です。

この休業開始前賃金日額は、原則として育児休業開始前6ヶ月間の賃金を180日で割った金額になり、支給日数は30日で計算します。

また、休業開始前賃金月額は、事業主である派遣会社が提出する休業開始時賃金月額証明書(票)を元に計算された456,300円を上限としています。

そのため、休業開始前賃金月額が上限を超える方は、一律で456,300円となります。

育児休業給付の支給対象者

育児休業給付の支給の条件は、1歳(父母共に取得する方は1歳2ヶ月、保育所に入所できないなどの場合は最長2歳)に満たない子どもを育てるために育児休業を取る雇用保険被保険者で、育児休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上ある方となります。

また、次の要件も確認が必要です。

  1. 育児休業期間中の1ヶ月ごとに、休業開始前の1ヶ月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
  2. 就業している日数が各支給単位期間(1ヶ月ごと)ごとに10日(10日を超える場合は就業時間が80時間以内であり休業日が1日以上ある)の要件を満たすこと。

申請をすれば無条件で適用されるわけではないので、しっかり自分が対象に入っているか確認をしましょう。

健康保険料・厚生年金保険料は申し出により免除になる

社会保険に加入している方は、社会保険料を給与から天引きされる形で支払っています。

派遣社員も天引きされて給与をもらっていますが、育児休業中は申し出ることで免除してもらうことが可能です。

免除期間は育児休業を開始した日を含む月から、終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間で、なおかつ子どもが3歳に達するまでの間と定められています。

雇用保険料は給与の支払いがない月は負担なし

育児休業中に勤務する会社から給与の支払いがない場合は雇用保険料の負担はありません。

所得税及び復興特別所得税は差し引かれることはない

所得税及び復興特別所得税は、育児休業給付そのものが非課税で給付されるため、育児休業給付から差し引かれることはありません。

育児休業取得のメリットとデメリット

現在派遣社員の方で妊娠中の方や今後育児休業を検討している方は、育児休業を取得する際のメリットとデメリットを把握しておくことをおすすめします。

同時に、職場に復帰する際のポイントも併せてチェックしていきましょう。

派遣社員が育児休暇を取得する際のメリット

収入が途絶えずに済む

派遣社員が育児休暇を取得する場合、収入が途絶えることなく育児ができるメリットがあります。

派遣社員を辞めて育児に専念した場合は、単純に収入が途絶えてしまうところ、社会保険料が免除されある程度の収入を確保できます。

仕事を辞めなくて済む

退職して育児に専念した場合は、再就職する際に一から面接を受け直す必要がありますが、育児休業なら退職させられることがなく、休業明けには職場復帰することができます。

赤ちゃんの側で育児に専念でき、時間を有効活用できる

赤ちゃんが生まれて1年ほどの間は成長が著しく、寝てばかりから歩きだすまで大きく成長します。

その過程をすぐそばで見守ることができ、夫婦一緒に育児休業を取得すればより一層家族が増えたことを実感できます。

また、赤ちゃんが寝ている時間は、自分自身の趣味を楽しんだりスキルアップのための勉強をしたりと、時間を有効活用できるようになります。

経済支援や復帰後の短時間勤務などにも対応してもらえる

育児休業中は育児休業給付が支給され収入が途絶えずに済むほか、復帰後は短時間勤務など子どもがいることに配慮してもらえます。

育児休業を取得することにより、会社に配慮や義務(残業や転勤、ハラスメント等)が発生するので、安心して育児と仕事の両立ができます。

派遣社員が育児休暇を取得する際のデメリット

育児休業前と比べて収入が減ってしまう

育児休業給付は、休業前の給与の1/2~2/3程度までの金額が支給されるため、どうしても収入自体は少なくなってしまいます。

社会保険などが免除になりますが、やはり育児休業期間中はトータル的に収入が低くなってしまいます。

職場復帰までに保育所を探さなければならない

職場復帰する際には子どもを保育園に預けなければならないため、復帰に合わせて保育所を探さなければなりません。

地域やタイミングによっては思うように保育所が見つからず、待機児童になることもあります。

職場を1年も離れる不安や復帰できない恐れ

育児休業は一般に子どもが1歳になるまでの1年間、最長で2年間と長いため、その間に職場の様子や人員が変わっている可能性があります。

職場が変化したことについていけるか不安になったり、派遣社員の場合は派遣先の都合もあるので、育児休業前と同じ状態での復帰は難しく、元の職場に戻れる保証はありません。

育休制度が整備されている派遣会社はどこ?

育休の整備は義務付けられているものの、会社によって差があるのが実情です。

なかには理解を得られずに育休を申請しても拒否されることもあるかもしれません。

そのような事態を避けるためにも最初から育休が整備されている派遣会社を選んでおくのが無難です。

ここでいくつか大手派遣会社の対応について紹介します。

テンプスタッフ

テンプスタッフは女性への支援が手厚く、育休もしっかり整備されています。

テンプスタッフの育休等の詳細については下記のページもご参照ください。

テンプスタッフ 福利厚生・社会保険

スタッフサービス

スタッフサービスでも産休・育休についての整備はされています。

女性だけではなく男性も条件を満たせば取得することができるので、今後育休の取得を検討している方は内容の確認をしておきましょう。

スタッフサービス 産休・育休

取得時期や不明点は必ず担当者へ確認を

産休・育休が整備されていると言っても、まずはしっかり担当者に相談をするのが大事です。

派遣先との調整や派遣会社の中での申請周りの対応などが必要になるので、復帰をする時に気持ちよく迎え入れてもらうためには一定の配慮は大事です。

ただ、会社側も産休や育休については年々取得に前向きな会社が多くなっていますので、担当者の方に不明点はしっかり回答をしてもらいましょう。

派遣社員でも産休・育休は取ることができる。不安なことはまず相談を

産休や育休は正社員に限らず派遣社員でも取得することができます。

会社によって多少の条件や期間、待遇などは異なりますが、基本的には育児・介護休業法に基づいて設定されている会社が多いです。

日本は人工が減少しているので、働き手の確保というのが会社にとっては重要なミッションとなります。

いま所属している方にはできるだけ退職をしてほしくないと考えるはずなので、産休・育休でしっかり休んでもらって1年~2年後に復帰してくれるなら産休・育休を拒否する理由はありません。

ただ、条件を満たしていない場合は産休・育休を取らせてあげたいけど無理という場合もあるため、条件に関しては担当者も交えて確認をするのがいいでしょう。

不安なことや不明点がある場合はまず相談を。

そこがスタートとなります。