私たちが転職活動をする際には求人情報を見ますが、職種で検索をかける人も多いのではないでしょうか。そして、当然自分のやりたい業務の求人はあるだろうと思いますよね。
しかし、派遣には禁止されている業務があることを知っていますか。
私は派遣として働いていましたが、派遣には様々な業務があり求人数も多いので、その時は禁止されている業務があることに気付きもしませんでした。
本記事では、派遣社員の禁止業務について、理由や例外業務についてもくわしく説明していきます。
派遣社員になろうと思っていざ転職したら、やりたかった業務の求人がなかったということがないように、派遣の禁止業務について知っておきましょう。
派遣の禁止業務(適応除外業務)とは
派遣事業では派遣が禁止されている業務があり、法律では適応除外業務と呼ばれています。
以下は適応除外業務における厚生労働省の引用文です。
1 適用除外業務に係る制限
何人も、次のいずれかに該当する業務について、労働者派遣事業を行ってはならない(法第4条第1項)。
① 港湾運送業務(港湾労働法(昭和63年法律第40号)第2条第2号に規定する港湾運送の業務及び同条第1号に規定する港湾以外の港湾において行われる当該業務に相当する業務として政令で定める業務をいう。)
② 建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの準備の作業に係る業務をいう。)
③ 警備業法(昭和47年法律第117号)第2条第1項各号に掲げる業務
④ その他その業務の実施の適正を確保するためには業として行う労働者派遣(第2から第5までにおいて単に「労働者派遣」という。)により派遣労働者に従事させることが適当でないと認められる業務として2の(5)に掲げる業務
以上の業務(以下「適用除外業務」という。)については、一般労働者派遣事業であると特定労働者派遣事業であるとを問わず、また、許可を受け、又は届出をして労働者派遣事業を行っているか否かを問わず、労働者派遣事業を行ってはならない。
また、労働者派遣事業を行う事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その指揮命令の下に
当該適用除外業務のいずれかに該当する業務に従事させてはならない(法第4条第3項)。(引用:厚生労働省「労働者派遣に適用除外業務」)
上記の内容を簡単にまとめると、派遣の禁止業務は主に以下の4つに分けられます。
- 港湾業務
- 建設業務(一部林業を含める)
- 警備業務
- その他の業務(医療業務、士の業務など)
上記4つの禁止業務は、一つ一つの項目ごとに非常に細かく規定があるため、全て説明することは非常に難しいので簡単に説明していきますね。
港湾業務
港湾運送業務は、港湾労働法といって「港湾労働者の雇用の改善や能力向上を図るために作られた法律」に基づいています。
禁止業務の例としては、船舶に積んだ貨物の荷解きをしたり、貨物を積み降ろす所の清掃をすることなどです。
また、厚生労働省によって適用除外業務に該当する港湾も指定されています。
建設業務
これは建築、土木などの建設や変更、また、修理や解体の作業に係る業務です。
ちなみに、林業の中の「造林作業の地ごしらえと植栽」については、建設現場における整地業務と作業が似ていることと、土地の改変が行われることから、建設業務に該当すると定められているようです。
では、建設業務の事務員は派遣で禁止されているのでしょうか。
実はそうではありません。なぜなら、禁止業務とされているのは建設工事の現場において直接作業する労働者に限られているからです。
また、施工管理業務は建設業務に該当しませんので、派遣が可能になります。
警備業務
これは、運搬中の現金等の盗難事故の発生を警戒したり、住宅や駐車場の盗難事故防止業務や、お祭りや催し物等によって混雑する場所での雑踏整理導等を行う業務です。
混雑する場所で雑踏整理をしている警備員は度々見かけますが、派遣社員は一人もいないということですね。
その他の業務(医療業務、士の業務など)
最後に、その他の業務として挙げられるのは医師業や歯科医業、看護師や助産師等の医療業務があります。
また、弁護士や司法書士、税理士などの「士」がつく業務の多くも同様です。
ただ、これらに関しては「○○に限り禁止」となっていることも多くあるので、詳しくは厚生労働省の「労働者派遣に適用除外業務」で確認が必要です。
派遣にはなぜ禁止業務があるのか、その理由は
派遣の禁止業務は大きく分けて4つに分類されましたが、なぜ禁止されているのか気になりますよね。
ここからは、なぜ禁止されているのかの理由を項目ごとに説明します。
尚、4つ目のその他の業務については例外もあるので、まずは「港湾業務、建設業務、警備業務」について説明していきますね。
港湾業務が禁止されている理由
派遣事業は労働者派遣法に基づいているのですが、港湾業務の場合はそれとは別に「港湾労働法」が存在します。
この港湾労働法には「港湾労働者派遣制度」というのがあり、厚生労働大臣が指定する港湾労働者雇用安定センターのみが、労働者の斡旋を行うことを許可されているのです。
これによって全日本港湾労働組合のホームページでは「港湾は派遣禁止です。」と大きく書かれています。
建設業務が禁止されている理由
建設業務の場合は、派遣労働法とは別に「建設雇用改善法」が存在します。
この法律には「建設業務労働者就業機会確保事業制度」というのがあり、派遣とはまた違った方法で労働者の雇用の維持や安定を図っているのです。
例えば一時的に労働者が溢れてしまった場合、建設事業主は労働者を同じ事業主の団体に属する他の建設事業主に送り出ることになっています。
この制度があるため、建設業務は派遣の禁止業務の一つになっているのですね。
警備業務が禁止されている理由
警備業務の場合は、派遣労働法とは別に「警備法」が存在します。
この警備法によって、警備業務は派遣ではなく請負形態によって業務を処理するように求められているため、派遣することが禁止されているのです。
つまり警備業務の労働者は、請負形態で直接雇用されて指導や教育を受けているのですね。
医療関係業務には禁止の例外もある
医療関係の業務の中でも、一部派遣禁止の例外があり、派遣が認められるケースもあります。
まずは主な対象者を挙げてみましょう。
- 医師
- 歯科医師
- 歯科衛生士
- 看護師、准看護師
- 薬剤師
- 保健師
- 助産婦
- 管理栄養士
- 放射線技師
たとえば医療事務等であれば禁止されていません。
また上記に挙げた対象者には、派遣が可能となる場合があります。
それは、以下の項目に該当する場合です。
- 紹介予定派遣で働く場合
- 病院、診療所等(介護老人保健施設または医療を受ける者の居宅で行われるものを含む)以外の施設(社会福祉施設等)で行われる業務
- 産前産後休業や育児休業・介護休業中の労働者の代替業務として働く場合
- 就業場所がへき地で、離島の病院等や地域医療の確保のため、医療対策協議会が必要だと認めた病院等における医師の業務
上記のような例外もありますので、派遣社員で医療業務に携わりたいという人はチェックしておきましょう。
最後に
今回は、派遣の禁止業務について、業務内容や禁止の理由の説明をしました。
派遣会社が労働者派遣法という法律に基づいて事業をしているのと同じように、業種によって独自の法律があるのですね。
中には「なるほど…」と納得できたこともあったのではないでしょうか。
派遣禁止業務について理解しておけば、怪しい求人に前もって気付くこともできますし、周りの人が派遣登録する際に知識として教えてあげられたりと今後役立てることがあるはずです。
派遣についてさらに知識を深め、転職活動に役立てていきましょう。