派遣先から直接雇用の話が出ても断る人の割合やその理由。断ることのデメリットや断り方のポイントなどについて

派遣社員の基礎知識

派遣社員の中には「できるなら直接雇用になりたい」と希望している人も多いでしょう。

しかしいざ直接雇用の話が出たら、その申し出を断る人もいるのが現状です。悩みに悩んだ末に出した結論だという人もいれば、最初から派遣以外は考えていなかったという人もいます。

第三者側として聞くと、せっかく直接雇用の話が出たのに断るなんてもったいないと思いますが、直接雇用を断る人にはそれなりの理由があるのです。

本記事では直接雇用を断る人の割合やその理由、直接雇用を断る時に考えるべきデメリットや断る前に確認することなど詳しく説明します。

直接雇用を断った人の割合

派遣社員で直接雇用を断った人の割合を見てみましょう。

以下は厚生労働省が公表したデータをもとにグラフ化したものです。(参考:厚生労働省「平成29年派遣労働者実態調査の概況」

派遣会社から正社員として直接雇用の募集情報提供があった人は全体の18.2%、つまり直接雇用の話が出ること自体が少ないということが分かります。

しかしその少ない確率の中でせっかく直接雇用の話が出たにも関わらず、応募しなかった人はそのうちの12.6%もいますから、結局約7割の人が直接雇用の応募を断ったことと同じです。

逆に言うと正社員として直接雇用されたいと思った人はたったの3割しかいません。

次に派遣会社から正社員としてではなく、契約社員やパート・アルバイトとして直接雇用の募集情報提供があった人の割合を見てみましょう。

正社員以外での雇用形態で募集がかかった場合、その中で応募した人は先ほどよりも少なくたったの2割程度にまで減っています。約8割の人は断っているのと同じですね。

では、派遣先から直接雇用の募集情報の提供があった人の場合はどうでしょうか。正社員の場合と正社員以外それぞれの募集提供についての割合を見てみましょう。

派遣先から直接雇用の募集情報提供があった人は全体の2割以下、先ほどと同様、直接雇用の話が出ること自体が非常に少ないことが分かります。

さらにその中で派遣先の正社員募集に応募した人は約25%、約4人に1人のみという結果です。残りの約75%の人は応募していません。

また正社員以外の雇用形態の場合では、約80%の人が応募を断っています。

結局、派遣元や派遣先から直接雇用の話を出されても、断る派遣社員が大半だということが分かりました。

直接雇用を断る人の理由

派遣元や派遣先から直接雇用の話が出ても、断る人が意外と多いというのは先ほどのデータで分かりましたね。

少し古い情報ですが、2010年にエン派遣が行った調査でも「直接雇用を申し込まれたら断る」という回答をした人は約1割いました。その理由は以下の通りです。(引用:エン派遣「派遣先からの直接雇用の申し込みについて」

一番多い回答だったのは「派遣という働き方が合っているから」次に「辞めにくくなる」「残業があるのは困る」という回答が並んでいます。

「その他」として回答した人の理由としては「Wワークを希望」「扶養控除内で働きたい」「配偶者の転勤がある」などがありました。

この理由について、もう少し具体的に見ていきしょう。

派遣は自由に働ける

派遣は「保育園の近くの職場で働きたい」「平日の9時から16時まで」「土日のみ」「週2日の夜間だけ」など、勤務地や勤務時間、勤務曜日などが自由に設定できる働き方です。

そのため家事や子育てとの両立がしたい人、資格取得のための勉強をしたい人や独立を目指している人など、目的がある人には非常に向いています。

しかし正社員になると会社都合で転勤もありますし、週2日働きたいなどというわがままは通用しません。場合によっては休日出勤だってあり得るでしょう。

こういった理由から、直接雇用の話が出ても断る人がいるのです。

派遣は辞めやすい

派遣は辞めたくなった時に辞めやすいという特徴もあります。

派遣は「長期派遣」で募集がかかっていても、3カ月ごとの契約更新となっていることがほとんどです。最初から半年契約、1年契約ということはまずありません。

そのため「今回の契約期間が終わったらもう更新はしないでおこう」「〇月から違う仕事をしよう」「来年の〇月に留学する」などと自分の都合で計画的に辞めることができます。(ただし辞める際は派遣期間満了の1か月前には派遣会社に言うこと)

たとえ派遣先がどんなに忙しい時期だとしても派遣期間満了と同時に辞められますし、辞める際は派遣会社に伝えるだけでいいのです。

しかし正社員になるとそうはいきません。正社員は一度採用されれば会社が存続する限りずっと雇用契約が続きます。人間関係などでトラブルがあった場合でも、簡単には辞められません。正社員が会社を辞める場合は自分で会社に伝えなければならないですし、それが繁忙期であれば迷惑が掛かるのは目に見えていますから、辞めると言い出すタイミングも難しいものがあるでしょう。

こういった理由から、直接雇用の話が出ても断る人がいるのです。

派遣は残業が少ない

派遣の場合、残業が少ない派遣先を選ぶこともできますし、残業が多い派遣先を希望することも可能です。

私の場合は仕事が終わったら保育園に子供を迎えに行かなくてはいけなかったので、残業の少ない派遣先を希望しました。求人には「残業一切なし」という派遣先も沢山あります。

しかし正社員になるとそうはいきません。「子どもがいるので残業できません」なんて言う言い訳は通用しないでしょう。

会社によっては残業が当たり前というところも多く、実際に私の派遣先でも正社員は朝の8時にはすでに出勤していて、定時を過ぎても全員残業していました。当然サービス残業です。

派遣の場合は残業になったとしても、その分の時給は必ず出ますからサービス残業は一切ありません。

もともとしっかり残業代が出る派遣社員からサービス残業に変わることほど辛いものはないでしょう。

派遣は様々な職場で経験を積める

派遣は様々な職場で経験を積める働き方です。

派遣期間が短い人の場合、1年の間に3、4回派遣先が変わるということも少なくありません。私の友人は短期間で事務職、アパレル店員、飲食業、営業と4つの職種を経験していました。

また派遣の場合はダブルワークや副業が禁止されていないことが多いので、仕事を掛け持ちしている人も沢山います。

Aという職場ではコールセンターをし、Bでは金融事務をするということも可能なのです。

ですから必然的に経験豊富になったり、多様なスキルが身に付く人も沢山います。

一方正社員の場合は副業を禁止している会社も未だに多く、自分から辞めない限りずっと同じ会社で働くことになりますから、沢山の経験を積むという点では派遣に劣り、同じ環境に長年身を置くことが苦痛な人には非常に退屈な働き方だと感じるかもしれませんね。

派遣の方が給料が良い

派遣社員は職種によって時給の相場が大きく異なります。

特に技術職や専門職は時給が高く、場合によっては正社員よりも時給が良いということもあるのです。

以下で派遣の技術職の時給の一例を見てみましょう。

(参考:はたらこねっと「2019年11月職種別平均時給」

職種 時給 月給
運用管理・保守 2,238円 375,984円
ネットワーク
エンジニア
2,508円 421,344円
SE・プログラマ
(WEB・スマホ系)
2,165円 363,720円
設計
(電気・電子・機械)
2,030円 341,040円
WEBデザイナー 2,108円 354,144円

上記の職種はどれも時給が高く、月給が35万円近くあります。

中でも一番高い時給はネットワークエンジニア。月給40万円以上も貰えますね。

しかし某求人サイトに掲載されているネットワークエンジニアの正社員求人情報は以下のような条件でした。

ネットワークエンジニア

  • 正社員
  • 年収250万円~300万円
  • 東京都 港区

想定年収(給与詳細)

250万~300万円
月給195,000円~
【基本給:175,000円~、能力給:10,000円~、学卒手当:(短大・専門)10,000円、(四大卒)20,000円】
※四大卒の方は、月給205,000円~となります。

上記を見ると、四大卒でも派遣社員の半分以下の給料です。

このように、技術職や専門職などの場合では、派遣の方が待遇が良いという場合が沢山あります。

派遣は責任の重い仕事をすることが少ない

派遣は責任の重い仕事をすることが少ないです。

たとえば派遣で人気の一般事務では、データ入力や書類チェック、ファイリングなど業務は様々ですが、基本的にマニュアルがあり未経験でも問題なく仕事ができる内容になっています。

また黙々と作業をしていく工場勤務に関しても、派遣は検品作業のみ、梱包作業のみ、ラベル貼り作業のみといった単純作業の繰り返しです。

一方重要な業務は全て社員が行います。派遣には簡単な作業、手間のかかる雑務などを任せる代わりに、責任の重い仕事は社員が行わなくてはいけないのです。

派遣社員に比べると、仕事のストレスやプレッシャーを抱えているのは断然社員の方だと言えるでしょう。

もちろん派遣先にもよりますが、基本的に派遣は「ミスしたらどうしよう」という不安な気持ちで取り掛かるような業務はあまり与えられません。

私の派遣先でも実際に、イレギュラーなケースが発生した場合などは全て社員が対応してくれました。そもそもこれは派遣の仕事ではない、という線引きが社内で徹底されていたので非常に楽だった記憶があります。

私のように「派遣は責任のない仕事なので気楽」と感じる人にとっては、正社員のように責任のある仕事を任されることを嫌い、直接雇用を断るのでしょうね。

直接雇用を断る時に考えるべきデメリット

ここまでは、直接雇用を断る人の理由について説明しました。

派遣には派遣なりの良さが沢山あるので、直接雇用を希望しない人も多いというのは頷けますね。

しかし直接雇用の話が出た際に、何も考えずに断るだけではかえって損かもしれません。

ここからは直接雇用を断る時に考えるべきデメリットについて説明します。

雇用が安定しない

直接雇用を断る時は、今後も雇用が安定しないという覚悟が必要です。

直接雇用の場合は雇用期間に定めがないので、会社がだめになるまでは何年でも働くことが可能です。

しかし派遣社員には必ず雇用期間が存在するため、3カ月で終わる人もいれば半年~1年の人もいます。また最大で働けたとしても一つの職場(課)で3年が限度というルールがあるためたとえ長期派遣として入社した場合でも、同じ職場で3年以上は働けないのです。

ほとんどの人は3年も経たずに契約期間が満了となり、次の仕事を探すことになるでしょう。

派遣社員として働くということは「この仕事はいつまで続くのだろう」「あと半年で3年経ってしまうけど、次の派遣先はすぐに見つかるだろうか」などという不安は常につきまとうものなのです。

昇給やボーナスがない

直接雇用を断る時は、今後も昇給やボーナスがないという覚悟が必要です。

直接雇用の場合、会社によっては正社員だけでなく契約社員にも昇給やボーナスが与えられることがありますが、派遣社員には昇給やボーナスはありません。(ただし時給アップならできる可能性があります。)

そのため昇給もボーナスもある会社の正社員と比べると、年収格差が非常に大きくなってしまいます。

派遣社員として働くということは、いくら頑張っても金額としての見返りがなく、後で「ボーナスや昇給がなくて悲しい」と虚しくなることの覚悟が必要なのです。

退職金が出ない

直接雇用を断る時は、退職金が出ないという覚悟が必要です。

厚生労働省が平成30年に調査したデータによると、退職給付制度がある企業は約8割となっています。つまり会社の直接雇用となった場合、退職金制度を設けている会社であれば、退職金が貰えるのです。

しかし直接雇用を断って派遣社員のままでいるならば退職金は貰えません。

ただ2020年の4月から日本で開始される予定の「同一労働同一賃金」という働き方改革によって、非正規社員にも退職金が支給される可能性が示唆されています。

キャリアを積めない

直接雇用を断る時は、今後もキャリアを積めないという覚悟が必要です。

直接雇用になればずっと同じ職場で働けるため、5年、10年という長いキャリアを形成することができます。

しかし派遣社員のままでいれば3年以上同じ会社で働けません。また新人として違う派遣先でスタートするしかないのです。

もちろん経験値は上がりますが、キャリアを積めないので管理職を目指したいという人には厳しいでしょう。

断った後が気まずい

直接雇用を断る時は、断った後の気まずさを覚悟する必要があるでしょう。

派遣先によっては断った後に嫌な思いをしたり、気まずい空気になって働きづらくなったという声も多いようです。

実際に残業が多い会社で働いていた派遣社員が、派遣先から直接雇用の話を打診され、サービス残業が嫌だからと思い断った途端、翌日から「残業代泥棒」と呼ばれるようになり、辛くなって退職したという話もあります。

このように派遣社員のままでいる方が直接雇用になるよりも対偶が良い、という人の場合は特に気まずい思いをする可能性が高いので覚悟しておきましょう。

直接雇用の話が出たら断る前に確認すべきこと

直接雇用の話が出たら「もともと派遣社員以外を希望していないので」と後腐れなくスパッと断りたいという人もいるでしょう。

しかし雇用形態や勤務条件を聞かずして断ると、後で後悔するかもしれません。

私の友人は派遣先と面倒なことになりたくないからと言って、直接雇用の話を潔く断ったがために後々後悔することになりました。

ここでは直接雇用を断る前に確認すべきことを見ていきましょう。

契約社員か正社員か

まずは直接雇用になった後の雇用形態は「契約社員」か「正社員か」を確認しましょう。

直接雇用後の雇用形態が契約社員だった場合、契約期間に定めがあるのは派遣の時と変わらず、派遣先から「次の更新はありません」といつ打ち切られてもおかしくはない状態なので雇用の不安定さは続きます。

ただ一回当たりの契約期間は長くなり、半年~1年、2年更新ということもあるでしょう。

労働契約法によって契約社員や派遣社員のような有期雇用労働者の場合は、同じ会社で5年間働くと無期雇用契約への転換を希望することができますが、その前に打ち切られる可能性は否めませんので、条件があまり良くないのであれば断っても特に後悔はしないかもしれませんね。

一方、直接雇用後の雇用形態が正社員の場合は契約期間に定めがないため、一度入社して雇用契約を交わしたら、何十年と同じ会社で働くことが可能です。よっぽどのことがない限り解雇されることはありません。

派遣社員の時とは違って雇用の安定が補償されるのです。

私の友人は直接雇用の話が出た時にスパッと断ってしまい、友人の代わりに正社員を引き受けた同僚の昇進を横目で見ながら「私はあと1年しかこの職場に居られないのに…」と後々後悔したと言っていました。

直接雇用後の雇用形態は確認しておくべきですね。

勤務条件は今より良いか

次に、今と比べて良い勤務条件なのかを確認しましょう。

たとえば直接雇用後は昇給やボーナス、退職金は出るのか、有給休暇の取りやすさや休日出勤の有無、サービス残業はないかなど。

派遣先の正社員の様子を普段から見ておくと、何となく分かることもあるでしょう。

私の友人の場合は時給が低く、「手取りが少ないから残業したいけど、派遣だからさせてもらえなくて帰される」といつも言っていました。彼女の派遣先では派遣社員は残業してはいけないというルールがあったようです。

しかし派遣先から直接雇用の話が出て、「雇用形態は契約社員、残業は多いが残業代はしっかり出る」ということが確認できたので直接雇用になりました。

このように、直接雇用の話が出たら自分にとって勤務条件が今より良くなるのかを確認してから返事をしましょう。

直接雇用の上手な断り方

派遣会社や派遣先からせっかく直接雇用の話をもらっても、やっぱり断りたいという人もいるでしょう。

勤務条件が今と大して変わらなかったり、むしろ今のままの方が良いのであれば、受け入れる理由もないですからね。

直接雇用の上手な断り方として、以下のような言い方をすると良いでしょう。

「直接雇用のお話を頂き大変有難く思っているのですが、(家庭の事情もあり)この環境で引き続きスキルアップを図っていきたいと考えています。ご期待に沿えず申し訳ございませんが引き続き宜しくお願い致します。」
「直接雇用のお話を頂き大変有難く思っているのですが、(今の働き方には満足しているので)この環境で引き続きスキルアップを図っていきたいと考えています。ご期待に沿えず申し訳ございませんが引き続き宜しくお願い致します。」

上記のような言い方をすれば、変わらず今の状態のままで働いていきたいという意向が伝わり、失礼にあたらずにスムーズに終わるはずです。

間違っても「待遇が今より悪くなるので…」というような本音は言わないように注意しましょう。万が一印象が悪くなってしまったらこの契約終了ですと言われ兼ねません。

直接雇用の話が出たら条件を確認してから断るか考えよう

今回は派遣社員が直接雇用を断ることについて説明しました。

派遣社員は今の働き方に満足している人も多く、直接雇用の話が出ても断る人が7、8割もいます。(そもそも直接雇用の話が出る会社すら全体の2割以下なのですが)

理由としては派遣の方が自由に働けるし辞めやすい、残業時間の少なさや給料など待遇が派遣の方が良い、沢山の経験を積めるし責任の重い仕事が少ないなどが挙げられ、それぞれに派遣という働き方のメリットを感じていることが分かりました。

ただ直接雇用を断ればその分雇用はずっと安定しないままですし、昇給やボーナス、退職金を貰うチャンスを失うことや、管理職に就きたいなどといったキャリアアップに関しても諦めないといけない可能性も覚悟しなければなりません。

直接雇用されることが良いのか悪いのかは、直接雇用後の雇用形態と勤務条件が今と比べてどうなのかによって大きく変わります。

直接雇用の話が出たら、焦って結論を出さずによく確認してから返事をすると良いでしょう。