派遣をしていると、時折派遣社員から契約社員に直接雇用にする話を受ける人がいます。
直接雇用は「雇用が安定する」「交通費が出る」などのメリットもありますが、もちろんデメリットもあるので注意が必要です。
本記事では、派遣社員から契約社員になるといった会社の直接雇用になる場合の注意点を解説し、契約社員になる前と、なった後に出てくるさまざまな疑問とその回答について紹介します。
今後、派遣社員から直接雇用を目指したい人はぜひ参考にして下さい。
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そもそも派遣社員と契約社員の違いとは
まずは、派遣社員と契約社員の3つの違いについて解説します。
雇用主
派遣社員と契約社員の1つ目の違いは雇用主です。
- 派遣社員:派遣元の会社が雇用主になる
- 契約社員:実際に働く会社が雇用主になる
契約社員は、正社員やアルバイトなどと同様に働く会社で直接雇用されています。
それに対して、派遣社員は派遣元の会社に雇用されつつ、働くのは紹介された企業になるわけです。
雇用期間
派遣社員と契約社員の2つ目の違いは雇用期間です。
- 派遣社員:通常3か月更新が多い
- 契約社員:半年~1年更新や2年更新の場合が多い
このように、派遣社員のほうが頻繁に更新することになっています。
給料の体系
派遣社員と契約社員の3つ目の違いは給料体系です。
- 派遣社員:時給制+交通費出ないことがほとんど
- 契約社員:月給制+交通費支給がほとんど+ボーナス ※ボーナスは会社により異なる
派遣社員は時給制なうえに、交通費が出ないのがほとんどでしょう。
それに対して、契約社員は月給制で交通費が出るケースが多くなっています。
派遣社員から契約社員になる場合のQ&A
派遣社員だった人が契約社員になる場合、色々と疑問点が生まれるでしょう。
今までは何か疑問が出てきた時や派遣先での悩み事など、全て派遣会社が仲介して解決してくれました。
派遣先に直接言いにくいことも派遣会社が間に入ってくれたので、安心感があったという人も少なからずいるのではないでしょうか。
しかし派遣社員から契約社員になったら、今後は全て自分で解決しなくてはいけなくなります。ただ、会社に直接質問しにくいというものもあるでしょう。
ここからは、派遣社員から契約社員になる時に出てくる疑問についてQ&A方式で紹介します。
契約社員になったら確定申告は必要?
契約社員を含めた給与所得者は、年末になると会社側で年末調整を行ってもらえるので、自分で確定申告する必要はありません。
ただ、以下のような場合は例外で、確定申告が必要です。
- 給料が年間2,000万円を超えている場合
- 給料以外の所得(収入ー経費)が20万円を超えている場合
上記のように、年収が高い人や20万円以上の副業収入を得ている人は確定申告の必要があります。
契約社員になったら健康診断は受けられる?
年に1回の定期健康診断は会社側が労働者に受けさせるという義務ですので、契約社員も当然健康診断の対象者になります。
(健康診断)第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
ただ、いつ受けるかは「半年勤務した者」「勤務日数が◯日以上」など会社によって基準が異なるので確認が必要です。
また「契約期間が1年以上、もしくは更新によって1年以上雇用されることが見込まれている場合」は、雇入時にも健康診断を受ける必要があります。
(雇入時の健康診断)第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
無期雇用になるまでの期間はどのくらい?
契約社員になってから無期雇用になるまでの期間は5年間です。
例えば、2年間派遣社員として働いていた場合でも、契約社員になってから5年経たないと無期雇用には転換されません。つまり派遣社員である期間を含めると7年後にようやく無期雇用転換できるのです。
あくまでも契約社員になってから5年後になり、派遣社員であった時の期間は合算されないので注意が必要です。
また、無期雇用転換を希望する場合は本人による申し込みが必要ですので会社側から声はかかりませんから、自ら申し出るようにしましょう。
派遣期間中に直接雇用されたら違約金が発生するの?
「派遣期間途中で派遣先に直接雇用される」といった引き抜きが起きた場合、引き抜きされた派遣社員側に違約金発生の義務はありません。
しかし、引き抜きをした派遣先の会社は、派遣会社に対して違約金(手数料)を支払う必要があります。
派遣社員の引き抜きについては、詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
派遣社員から契約社員に直接雇用される場合の注意点
「派遣社員から契約社員になる」と聞くと、非常にいいことのように聞こえます。もちろん、いい面がたくさんあるのも事実です。
しかし、雇用形態が変わると雇用期間や待遇などの状況が変わりますので、話をよく聞かないで返事をすると後悔するかもしれません。
実際に、派遣社員で働いてる私の友人が悩んでいたのは「直接雇用される場合の注意点」をよく調べていたからなのです。
そこで具体的に直接雇用される場合の注意点を知り、納得した上で契約社員になるか決めるようにしましょう。
給料が下がる可能性がある
派遣社員から契約社員に直接雇用されたら、給料が上がるかと思いきや下がるケースもあります。
派遣社員の場合は職種によっては時給が高く、残業したとしても働いた分だけきっちりと返ってきますが、契約社員になることで今よりも給料が下がったり、サービス残業があったりして、正確に給料に反映しない可能性もあるでしょう。
実際に、「時給に直したら派遣社員だった時の方が給料がよかった」という人もいるのです。
給料交渉はできるのか
直接雇用の話が上がったら、自分のスキルや経験をアピールして給料を交渉してみるのは可能でしょう。
何も言わずに契約を結んでしまって、後になって給料の交渉をする方が印象が悪いでしょうから、契約を結ぶ前に給料交渉の話を持ち掛けるのがおすすめです。
ただ、すでに会社から定時されている給料は、おおよその自分のスキルや経験を考慮されている上での給料であることが多いため、交渉が成立しない可能性も考え、成立しなかったときに受け入れるかどうか予め決めておくと悩まず済みます。
契約社員の平均月収、平均年収について
契約社員の平均年収は275.5万円、平均月収では20.9万円というデータがありました。
(引用:とらばーゆ)
半数近くの契約社員は年収が200万円~300万円、また、3割近くの人は年収300万円~400万円と答えています。この差は賞与があるかどうかによって大きく左右されるのです。
契約社員の年収について、詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
長期的に働けるとは限らない
契約社員になったからといって長期的に働けるとは限りません。
契約社員の雇用期間は派遣社員の時と同様に、契約期間が定められています。もしも会社から契約終了を言い渡されれば、更新はありません。
ただ、3か月や半年ごとに更新だった派遣社員の時よりも、更新までの期間が長くなることはあります。
有給は持ち越せずに消滅する
派遣社員だった時の有給休暇を消化しきれずに残ってしまっている場合、その有給は持ち越せずに消滅してしまいます。
なぜなら、派遣会社との雇用関係が無くなってしまうからです。
有給は派遣会社との雇用関係が成り立っている間だけ使えますので、派遣先を退職するまでの間に消化するしかないでしょう。
直接雇用として働き始めると、半年後に10日間の有給が付与されます。
仕事内容が変わることもある
派遣社員として働いていた時と同じ職場でも、直接雇用になったら仕事内容が変わることもあり得ます。
例えば、私の友人で以下のような話がありました。
今まで事務職で働いていたのに、直接雇用になってから上司に「今後は営業事務を少しずつ覚えて欲しい」と言われ、担当を変えられてしまいました。
友人は「事務職が好きだから、このまま直接雇用されたい」と思っていたのでショックだったようです。
雇用契約書から大きく逸脱していれば変更を拒否できますが、契約範囲内で仕事内容が変わってしまうのであれば、残念としか言いようがありません。
正社員並みに仕事量が増え、内容も幅広くなることが多い
派遣社員を経験している人の中には「単純作業だけしていればよかったので案外楽だった」という人も多いでしょう。
しかし直接雇用されて契約社員になると、派遣社員の時のような「簡単な仕事」だけでは済まないケースが多いです。
私も実際に契約社員の経験がありますが、正社員並みに仕事量が多く、仕事内容も正社員とほぼ変わらないものばかりで、幅広い業務内容を任されていました。
私が派遣社員だった時と比べると、仕事にかかる責任の重さも全然違いましたし、その分やりがいもありましたが、ストレスは派遣社員の時の方断然少なかったように感じます。
人によってはこのギャップにしんどさを感じるかもしれません。
副業が禁止されることもある
派遣社員だった時は副業してもよかったけれど、契約社員は副業禁止という会社もあります。
趣味で副業していたり、家庭の経済事情で副業しているという人には辛いところです。
副業を禁止している会社では、副業によって本来の業務に支障をきたすのではないか、会社に不利益が生じるのではないかという見方をしています。
副業に関しては会社の規定によって異なりますので、会社の就業規則確認してみましょう。
直接雇用になったタイミングで挨拶をしておく
派遣社員として今まで働いていて顔馴染みとなっていても、直接雇用になった際には挨拶をしたほうがいいでしょう。
しっかりと挨拶をしておくことで、周囲に好印象を与えられて仕事が円滑に進められるようになります。
慣れている関係だからといい加減にするのではなく、礼儀やマナーなどは常に気を使って働くようにしてください。
派遣・契約社員のそれぞれのメリットとデメリット
続いて、派遣社員と契約社員のそれぞれのメリットとデメリットを解説します。
派遣社員のメリット
先に、派遣社員のメリットについて確認してみましょう。
契約社員より時給が高いことが多い
派遣社員は契約社員よりも時給が高いとされています。
「契約社員の平均月収、平均年収について」でご説明した契約社員の平均月収から時給に換算すると、約1306円(20.9万円÷20日÷8時間)という額が算出されます。
一方で、2022年1月時点では派遣社員の時給は1,509円(*)となっているのです。
派遣社員は正社員と比べると収入が少ないものの、契約社員と比べると高い傾向にあります。
(* 参考:ディップ株式会社)
就業先企業との交渉も派遣会社が行ってくれる
契約社員は給料や待遇などの交渉を自分でする必要があります。そのため、なかなか話が進まないといった悩みが多いのが実情です。
しかし、派遣社員なら派遣元の企業が間に入って、派遣先へ交渉をしてくれます。
万が一トラブルになっても、会社が守ってくれるので安心感が高いのが特徴的です。
福利厚生や研修など派遣会社のサポートを受けられる
派遣会社の中には、福利厚生や研修制度などがしっかりしているところがあります。
そのような派遣会社に登録すれば、充実した環境で働けるうえに社会人としてスキルアップも図れるので一石二鳥です。
ただし、勤務先の福利厚生は利用できないので、派遣社員は派遣元の待遇を気にする必要があります。
派遣社員のデメリット
次に、派遣社員のデメリットを確認していきましょう。
仕事内容は契約で定められた業務内容のみであることがほとんど
派遣社員は契約で定められた特定の仕事をするためにいるので、基本的には契約で定められた仕事しかできません。
「色々な仕事を任せてもらったほうが嬉しい」と考える方には向いていない可能性があります。
あなたが決められた仕事だけしたいというなら、むしろメリットと言えるでしょう。
同じ職場で働けるのは最長3年まで
派遣社員が同じ職場で働けるのは最長3年までと労働者派遣法によって定められています(*)。
そのため、同じ職場で働き続けたいと思った場合は、派遣先から直接雇用してもらう必要があるのです。
直接雇用なので、当然派遣社員ではなくなって、正社員や契約社員、アルバイトなどになります。
賞与や交通費が出ない
派遣社員は賞与や交通費がないのが大半です。
そもそも、派遣先企業は派遣社員を雇うのはコスト削減が大部分を占めています。
交通費を出すと人件費が高くなるので、多くの企業では派遣社員に対する交通費の支給はしていないのです。
中には交通費が出る企業もありますが、実は給与から差し引かれているだけというケースが多いため、交通費が出る企業は給料が安くなっている可能性があります。
契約社員のメリット
続いて、契約社員のメリットについて解説します。
長い期間、同じ職場で働ける
派遣社員はどんなに長くでも最長で3年間しか同じ職場で働けません。同じ職場で働き続けるには派遣社員を辞める必要があるのです。
それに対して契約社員は最長年数の定めがないため、会社が契約更新を続けてくれる限り同じ職場で働き続けられます。
ボーナスがあることが多い
派遣社員にはボーナスがありません。
しかし、契約社員にはボーナスがあるケースが多くなっています。
もちろん正社員ほど多いボーナスはもらえなくても、全く出ないのと少しは出るのとでは、仕事に対するモチベーションも変わってくるでしょう。
正社員登用のチャンスがあることも
契約社員として長く働き続けて、しっかりと成果も出しているなら、会社側から正社員登用の話を持ち掛けられる可能性があります。
派遣社員のように勤務先企業とは別に雇用主がいるわけではないので、あなたと会社が同意すれば簡単に正社員に変わることができるのです。
正社員を目指しているけれど、なかなか就職ができないから、契約社員になって正社員登用を目指すといった方も意外に少なくありません。
契約社員のデメリット
最後に、契約社員のデメリットについて解説します。
契約終了後は再び自力で転職活動をしなければならない
派遣社員なら、契約が終了したら次の派遣先を派遣元企業に紹介してもらえばOKです。
しかし、契約社員は契約が終了した時点で、どの企業とも繋がりがなくなるため、一から転職活動をして働き口を見つける必要があります。
職歴に空白期間を設けないためには、契約が終了する前に就職活動を始める必要があるのです。
正社員に比べるとキャリアを積みにくい
契約社員は、正社員と比べるとキャリアを積みにくい傾向にあります。
そのため、長く働いてもなかなかアピールできる実績にならないのです。
やはりキャリアを積みたいなら正社員になったほうがいいでしょう。
雇用期間に定めがある
契約社員は契約で定められた雇用期間があります。
雇用期間が経過したら、その時点で契約延長か契約終了かのどちらかの道に進まなければなりません。
契約終了になった場合は一から転職活動をする必要があるので、準備をしておく必要があります。
それぞれに向いている人とは
「自分が派遣社員と契約社員のどちらに向いているのか分からない」という方は多いでしょう。
そこで、それぞれに向いている人の特徴について解説します。
派遣社員がおすすめの人
派遣社員に向いている人の特徴は、以下に当てはまるような方です。
✔ 最初の働きやすさを重視している。
✔ 雇用の継続性が大切。
✔ 決まった範囲内で仕事をしたい。
派遣社員なら、派遣元企業が研修などを行ってくれるので、仕事が始めやすい傾向にあります。
また、契約が終了しても次の働き口は派遣元企業が紹介してくれるので、安定した雇用が確保できるでしょう。
仕事内容も契約で定められた内容だけなので、余計な仕事をしたくない方にはピッタリの働き方です。
契約社員がおすすめの人
契約社員に向いている人の特徴は、以下に当てはまるような方です。
✔ できるだけ長い期間、同じ職場で働きたい。
✔ 正社員を目指している。
✔ 第三者を介さず、自分で交渉したい。
派遣社員は最長でも3年しか同じ職場で働けません。しかし、契約社員なら契約が続く限り、長い年数にわたって働き続けられます。
また、正社員として受け入れてもらいやすい雇用形態でもあるので、転職活動で正社員になれなかったけど、いずれは正社員になりたいという方にはおすすめです。
契約社員なら給与や待遇などの交渉を自分でする必要があるので、第三者を介さずに自ら交渉したい人にもピッタリの働き方でしょう。
直接雇用の話が来たら、断るか受け入れるかしっかり考えた上で判断を
今回は、派遣社員から契約社員に直接雇用される場合の注意点と、その他の細かな疑問について触れました。
直接雇用は確かにうれしい話ではありますし、自分の努力が認められたという証拠でもあるでしょう。
ただ、持ち掛けてきた会社側にとってもきっと何かのメリットがあるのですから、直接雇用の話は必ずしもいいものばかりではないという可能性を知っておくのも大事です。
そして直接雇用の話がきたら、受け入れるか断るか、よく考え上で判断をするようにしてください。もしかしたら「受け入れた方がいい話」かもしれませんし、「断る方が賢い」かもしれません。
自身が後悔しなくて済むように、ベストな選択をしましょう。
もし直接雇用が待てない、直接雇用を狙うのも不安、という方は
派遣社員から契約社員へ直接雇用されることによって、待遇面では改善されるケースも多いですが、直接雇用に本当になるかはその時までわかりませんし、「直接雇用をしてもいい」と判断が出るまでは長い期間を要します。
直接雇用が確定するまでの間の働きぶりで、逆に評価を下げてしまって直接雇用への切符を失うこともありえます。
もしも「直接雇用の声がかかるまでは待てない」「直接雇用になれるか不安」という方は一気に正社員への転職することも検討してみましょう。
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