これからエンジニアを目指す人、もしくは既にエンジニアとして職に就いている人の中で「派遣のエンジニア」に興味を持つ人も多いのではないでしょうか。
実際に現役派遣社員のうち、エンジニアを含む「専門的・技術職」を選択する人は2018年の時点で6万人いるというデータが日本人材派遣協会で公表されています。
しかし、エンジニアといってもIT系や機械系など沢山の種類があり、それぞれ必要な技術や資格は全く違うものです。
本記事では「派遣の機械系エンジニア」について有利な資格や派遣ならではの特徴などを紹介し、平均時給や年収、業務内容を実際の求人と照らし合わせて見ていきます。
機械系エンジニアとは
機械系エンジニアはものづくりエンジニアとも呼ばれ、主な仕事内容は機械製品の設計、開発、製造、提案、改造、製造、管理管理業務など多岐にわたります。
製造される「機械製品」の例をいくつか挙げてみましょう。
- 家電などの電子精密機械
- 産業機械
- 鉱業機械
- 食品生産機械
- 自動車
- 航空機
上記に6つの項目例を挙げましたが、これらは主に大きな機械です。機械系エンジニアはこの他にも細かな部品の製造も行っています。
機械業界は大きく分けて「建設機械業」と「工作機械業」の2つから成り、建設機械業界では「建築や土木に使われる機械」を製造し、工作機械業では「機械をつくるための機械」を製造しているのです。
派遣の求人に多いのはCADオペレーターと機械設計業務
派遣の求人に多く見かける機械エンジニアの主な募集職種は「CADオペレーター」と「設計」業務です。
設計といっても何を設計するのかは幅広く「筐体設計」「板金設計」「樹脂設計」「金型設計」「光学設計」など沢山の種類があります。
そしてこれらの設計をするためには「機械力学」「流体力学」「熱力学」「材料力学」などの知識が必要とされますから、素人には全く分からない高度な専門業務ということが分かるでしょう。
また、設計業務の中でもCADの技術が必要とされることは多くあります。
では具体的に見てみましょう。
CADオペレーター
CADオペレーターはCADを操作し、設計士が考えたデザインをコンピューター上で形にする仕事です。
設計士、デザイナーの指示のもと、図面を変更・修正・調整していくことを専門としています。
CADには「2次元CAD」と「3次元CAD」があり、2次元CADは従来の手書きによる製図をパソコンで作成するために使われることが多いです。
一方、3次元CADは立体を描くことが可能なので、現在は2次元CADから3次元CADに移行している傾向にあります。
機械設計
次に、機械設計業務です。
設計と一言でいっても、設計する「製品」は数多くあります。
ここでは「機構設計」「筐体設計」「樹脂設計」について見てみましょう。
機構設計
機構設計は家電などの電化製品や工業製品などの「形」を決めます。
一つの製品はよく見ると数種類の部品からできていますよね。
例えば電子レンジは沢山の部品からできていますが、各部品の耐熱などの強度を計算し、他の部品のサイズなども考えながら製品の形を決めていくのが機構設計者なのです。
機構設計者は基盤以外にもボタン、画面、スイッチなどの構造設計をしています。
筐体設計(きょうたい設計)
筐体設計は、機械や部品を収納する外側の箱を設計します。
例えば携帯電話は内部に様々な部品がありますが、私たちからは外側しか見えません。その外側の部分の設計のことを筐体設計というのです。
つまり外観の部分の設計ですね。自動車や航空機の外板も筐体の一つになります。
パソコンや携帯電話のように内部の部品から発熱するような機器は、筐体があることによって放熱されたり、水の侵入を防いだり、落とした時の衝撃から守られたりしているのです。
筐体設計は3次元CADを使うことがほとんどなので、設計をするにはCADを操作できることが求められます。さらにプラスチック筐体の場合は、樹脂成型の知識も必要です。
樹脂設計
樹脂設計は樹脂部品を作ったり、プラスチックを形成する金型の設計をする仕事です。樹脂とはプラスチックのことを指します。
今まで可燃性が高く劣化が早かったプラスチックですが、最近は強度なものが形成され、更に軽量であったり安価であるなど利点が多いので、金属部品がプラスチックに換えられることが増えてきました。
派遣の機械系エンジニアの求人にも樹脂設計の募集が多くあります。
実際のCADオペレーターや機械設計の求人例
派遣の機械エンジニアの求人で特に多いCADオペレーターや設計業務について、実際に求人例を見ていきましょう。
CADオペレーターの求人例
最初にCADオペレーターの求人例です。
【直接雇用の可能性有】未経験OK!空調機器メーカーで図面の修正
職種:CAD(電気・電子・機械) 業界:メーカー関連
時給 1,700 円
【月収例】約249,000円(時給1,700円×実働7h×21日)
勤務時間 9:00~17:00 残業:基本的にありません。
休暇 土・日・祝
仕事内容 CAD(電気・電子・機械) ビル・商業施設・病院向けの空調機器の設置や納入のレイアウト図面の修正
空調機器の設置や納入のレイアウト・構成図面の修正 ・組図等の機械図面の修正 ・Excelへのデータ入力
※ZWCAD(AutoCADのカスタマイズ版)
応募資格 ●未経験OK ●社会人経験がある方 ●Excel(表の作成)の操作ができる方
上記の求人では未経験者OKで時給は1,700円と高く、しかも9時~17時でほとんど残業なしという、良い条件の派遣求人がありました。
未経験でも月給約25万円も稼げるのは魅力ですよね。ただしエクセルの操作が必須となっています。
このように、CADオペレーターではエクセルを使用することもあるので、基本的なOAスキルは身に着けておきたいですね。
次に実務経験ありの場合のCADオペレーターの求人です。
職種:設計業務 / 設計(機械系) / CAD操作(機械系)
時間:8:40~17:40 休憩時間 1:00
残業時間残業時間 0~40 時間/月
月~金 週5日時給:1,800円~2,500円
【大手ゼネコン現場事務所~2,000円】
AutoCADを使用したCADオペレーター業務
対象物件:劇場、商業施設、駐車場など
設計士からの指示のもと、タイル割図・展開図・詳細図の作図やチェック・修正実務経験:建築施工図の理解のある方、建築図面の作成を1からできる方
上記の求人では時給が高いですが、残業時間のふり幅が大きいので、時期によっては残業が多くなるといった感じなのでしょう。
また、条件を見ると、1から建築図面を作成できる実務経験が必要ということなので、結構高度な技術が求められていますね。大手ゼネコンの現場事務所に出向くのでそれなりの技術とそれに見合った時給設定となっているようですね。
機械設計の求人例
次に機械設計の求人例です。
職種:設計業務 / 設計(機械系) / CAD操作(機械系)
機械設計業務
機械設計やCADモデリングなどの経験が生かせます
写真プリンタの機械設計業務/筐体や機構の機械設計
時間:08:15~17:10実働7時間50分 休憩65分
土日祝休み
時給:1950円
【月収例】30万4200円=時給1950円×156時間(残業代別途)/★時給は経験・スキルによって優遇します。
未経験の方、経験に自信のない方、スクールで知識を学んだだけ…という方でも是非一度ご相談ください
【大歓迎】 機械設計、CAD
上記求人は写真プリンタの機械設計とありますが、筐体設計や機構設計業務となっています。
ただ必須条件の記載はなく、未経験でも可、知識を学んだだけという人でも場合によっては可という条件ですのでハードルは低めでしょう。しかしその割には月給が30万円とありますので中々良い待遇なのではないでしょうか。
樹脂設計の求人例
次は樹脂設計の求人です。
職種:設計(機械系)
時間:8:00~17:00 休憩時間 1:10
残業時間 29~40 時間/月
月~金 祝日 週5日土日祝休み
時給:1,800円
スキルや経験などにより給与条件は異なります。仕事内容:自動車部品の樹脂金型設計を行っていただきます
・CADを使用したモデリング、製図
・CAMを使用して加工データ作成
・解析を行い、考察・実際に製品の加工
【以下のご経験をお持ちの方は大歓迎】
・樹脂部品の設計経験をお持ちの方・樹脂成形の知識をお持ちの方■実務経験:設計(機械)
上記求人を見ると、残業時間は毎日1時間以上はあることになりますが、樹脂設計の実務経験はなくても、機械の設計経験があればOKとなっていますね。
また、樹脂設計経験者は大歓迎となっていますので、樹脂設計経験者は人手不足だと言えるかもしれません。
ここまで求人例を見てきましたが、全体的に言えるのが設計業務ではCADの技術がほとんどの会社で求められているということでしょう。
派遣の機械系エンジニアの平均時給、月収、年収
機械系エンジニアの求人例を見てみると、時給は比較的高い印象でしたよね。
では派遣サイトによる平均時給や年収を見てみましょう。
ちなみに派遣全職種の平均時給は1,583円、月収では約26万円、年収にすると約320万円です。
(参考:はたらこねっと「2019年6月職種別平均時給」)
職種 | 時給 | 月収 | 年収 |
CAD (電気・電子・機械) |
1,799円 | 302,232円 | 3,626,784円 |
設計 (電気・電子・機械) |
2,119円 | 358,992円 | 4,307,904円 |
上記のデータから、機械系CADオペレーターの平均時給は約1,800円ということが分かりました。未経験でもOKで月給30万円程、年収は約350万円超えになり、平均以上となっています。
次に設計の場合です。設計の平均時給は約2,000円になっていますので、月給では35万円前後が平均となっていて、年収では約430万円となっていますね。
厚生労働省のデータによると、40代前半の正社員の月給が342,100円ですから、20代で機械エンジニアの派遣として働いた場合、すでに40代の正社員並みに稼げるということになるのです。(参考:厚生労働省「平成29年賃金構造基本統計調査」)
ちなみに、機械系でなく建築や土木、設備のCADオペレーター、設計業務のデータを見てみましょう。
職種 | 時給 | 月収 | 年収 |
CAD (建築・土木・設備) |
1,666円 | 279,888円 | 3,358,656円 |
設計 (建築・土木・設備) |
1,974円 | 331,632円 | 3,979,584円 |
上記のデータからCADオペレーターの平均時給は機械系に比べて100円低くなっていて、設計の平均時給は機械系と比較すると150円程低くなっているのが分かります。
会社によって待遇は違いますのでどちらが良いとは一概には言えませんが、平均的には機械系のエンジニアの方が、建築や土木、設備のエンジニアに比べて時給や年収が高めとなっていました。
機械系エンジニアの派遣の仕事の特徴
機械系エンジニアは専門的な知識も求められる分、派遣社員の中では十分に年収が高く、特に20代で機械系エンジニアになった場合は同じ世代の正社員よりも月給が高いということが十分にあり得る仕事です。
では機械系エンジニアの仕事を派遣社員としてした場合、どんな特徴があるのでしょうか。
ここからは機械系エンジニアを派遣として働くことについて、その特徴を詳しく説明します。
CADオペレーターには実務未経験OKの求人が沢山ある
派遣のCADオペレーターには実務未経験OKの求人が沢山あります。
私の友人は職業訓練校に通ってCADの勉強をし、派遣会社に登録してすぐに仕事が決まりました。
彼女は実務未経験でも派遣先を3社ほど紹介され、派遣先では先輩の指導の下でこれまで身に着けた知識を少しずつ実践しているようです。
彼女の場合は顔合わせの時に、派遣先の上司の感じが良かったことを決め手にしていました。未経験故に、上司が厳しそうな会社で働く自信はなかったようです。
このように、派遣の場合は派遣会社に職場の雰囲気などを事前に聞くことができ、会社によっては顔合わせもあるので未経験でも活躍できる職場で働くことができます。
無期雇用派遣(正社員型)の求人も豊富
機械エンジニアは高度な知識や技術を要しているため需要があり、無期雇用派遣(正社員型)の求人も豊富です。
実際にあった無期雇用派遣の求人例では、機械設計業務(自動車・航空・産業機器)で年収が350万円~500万円でした。条件としては特に厳しいものではなく「機械系学科卒業者(CAD使用経験)または機械設計経験者」です。機械系の学校を卒業していたり機械設計の経験があれば、既卒者でも無期雇用派遣として働ける可能性が高いのです。しかも入社後は社内研修を受講させてくれるところもあるので安心ですね。
正社員にステップアップしやすい
無期雇用派遣のように最初から正社員にはならなくても、派遣社員として経験を積み、技術の評価が高ければ正社員にステップアップしやすいのも派遣の特徴です。
機械エンジニアの実務経験を積み、スキルを高めれば転職して採用される可能性も高いですし、派遣先で見染められれば引き抜きにあう可能性もあります。実際に派遣先で引き抜きに合うエンジニアは少なくありません。
しかしこれが技術職でない場合はそうもいきません。例えばずっと派遣の事務職をしてきて正社員に転職する場合「何故今まで派遣だったのか」と問われ、会社によっては派遣という雇用形態を見下しているようなところも実際にあるのです。
機械系エンジニアの場合、雇用形態を重視されるというよりも実務経験を積んできたという事実や「その人の技術」を重視されますので、派遣だったかどうかはそこまで気にされないことがほとんどでしょう。
派遣先は大手の会社であることが多い
機械系エンジニアの派遣先は大手の会社であることが多いです。
実際に求人を見てみると、「大手メーカーの最先端メンバー」としての募集があったり、「大手ゼネコンで働きませんか」という文言を良く見かけます。
通常の採用試験で正社員として大手の会社で働くことを目指す場合、大手故にライバルが多く選考落ちしてしまうというリスクは大きいですが、派遣であればそのような難関の試験がありません。
また大手の派遣先での業務はそれなりに大きなプロジェクトに携われたりと、中小企業にはない経験が沢山できますし、エンジニアも多数いることから人脈が広がったり他の技術も学べる機会もあり、自身のスキルアップに繋がることでしょう。
機械系エンジニアに有利な資格
機械エンジニアになるに当たって有利な資格は主に以下の4つが代表的でしょう。
- 機械設計技術者
- 技術士
- CAD利用技術者試験
- 機械・プラント製図技能検定
上記4つの資格について、合格率を含めて説明していきます。
機械設計技術者(1~3級)
「機械設計技術者試験」は、日本機械設計工業会が主催する民間資格で、2級以上は実務経験が必要となります。
この資格は級によって内容は異なりますが、機構学、機械要素、材料力学、機械力学、流体工学、熱工学、制御工学、工業材料、工作法、機械製図といった機械工学基礎や応用・総合・環境・安全の知識など幅広い知識が必要です。
2018年の3級の合格率は30%、2級は29%、1級は35%とどれも難しいと言えるでしょう。
技術士(機械部門)
技術士は、日本技術士会が主催する国家資格です。
一次試験は未経験者でも挑戦できますが、二次試験は実務経験が必要になっていますので、業界未経験者は受験できません。
平成30年度技術士第一次試験統計によると、機械部門の受験者数1,884人に対し合格者数は656人、 受験者に対する合格率は34.8%となっています。中々難関だと言えるでしょう。
CAD利用技術者試験(1~2級)
CAD利用技術者試験は2次元CADと3次元CADに分かれていて、以下の3つの資格があります。
- 2次元CAD利用技術者試験基礎
- 2次元CAD利用技術者試験1級(建築・機械・トレース)、2級
- 3次元CAD利用技術者試験1級、準1級、2級
2次元CAD利用技術者試験基礎は、CADシステムの基本的な知識の資格です。
2018年度の合格率は79.60%と約8割は合格していますので、狙いやすいでしょう。
ただ現在は2次元CADから3次元CADに移行しつつあるので、機械系エンジニアは3次元CADの資格があった方が有利だと思います。
ちなみに3次元CAD2級の2018年の合格率は47.30%、準1級合格率は52.40%とどちらも約2人に一人は合格しているようですが、1級になると24.30%とぐんと下がっています。
機械・プラント製図技能検定(1~3級)
機械・プラント製図技能士は国家資格です。
資格取得には製図の技術や設計・機械についての知識も求められます。
主な試験内容は以下の通りです。
- 製図一般
- 材料
- 材料力学一般
- 溶接一般
- 関連基礎知識
- 機械製図法、もしくはプラント配管製図法
実技試験は「機械製図手書き作業・機械製図CAD作業・プラント配管製図作業」に分かれています。
2017年の受験者数6,041人に対し合格者数は2,121人。合格率は35.1%と難関でした。
興味があるなら機械系エンジニアで働いてみよう
今回は機械系エンジニアについて書いてきましたが、「設計図を描いてみたい」「機械の組み立てが大好き」などと興味のある人は、ぜひ派遣からスタートしてみることがおすすめです。
ただし、最低限のスキルとして図面を読めるようにならないと厳しいですので、独学で勉強するか、スクールに通うのが良いでしょう。
機械系のスクールで検索すると、「機械設計科」や「CAD専門のスクール」が沢山出てきます。
また、公共職業訓練でもCAD科があるので失業手当を貰いながら勉強することが可能です。
特に2次元CAD利用技術者試験基礎の資格は合格率が79.60%となっているので、基礎の資格を取得して、実務未経験OKの会社で働いてみるのも良いでしょう。
せっかくの興味を捨てずに、挑戦してみてはいかがでしょうか。