派遣社員のダブルワークは法律的にOK?メリット・デメリット・注意点を解説

派遣社員の基礎知識

派遣社員のダブルワークは法律的にOKです。そのため、効率良く働けば今よりも収入を増やすのも簡単にできてしまいます。

ダブルワークというと、法律上問題がないのか分からないという方が多いでしょう。もし、禁止されているのに働いたら、後々どのようなトラブルに発展するか不安というのが多くの方の考えです。

しかし、法律上の観点でのみ論じるならば派遣社員はダブルワークは可能なのです。ただし、企業によっては禁止されている場合があったり、デメリットとなる部分もあったりするので、何の知識もないまま始めるのはおすすめできません。

そこで今回は、派遣社員のダブルワークについて解説します。法律上の観点から考えるダブルワーク、具体的な働き方2パターン、メリット・デメリット、注意点3つなどを伝えていきます。

そもそもダブルワークとは?副業との違い

よく「ダブルワーク=副業」と考えがちですが、実はダブルワークと副業は別なのです。

この2つはただ言葉が違うだけではなく、明確な違いがあるので、まずは2つのダブルワークと副業の違いから理解を深めていきましょう。

ダブルワーク

正規や非正規に関係なく、労働者が2か所の職場に勤務して収入を得ている状態です。つまり、投資などで収入を得ている場合はダブルワークと呼びません。

副業

本業と区別するための言葉として用いられていて、本業が休みとなる時間を利用して収入を得る状態です。例えば、会社員が株式投資やFX取引などで収入を得ている場合も副業となります。

ダブルワークと副業には以上のような違いがあります。本業の職場とは別の職場でも雇用されて収入があるならダブルワーク、本業とは別の収入こそあるが、別の職場で雇用されているわけではないのが副業です。

今回のテーマは派遣のダブルワークなので、派遣社員として働きながら、別の雇用主の下で働いている場合に焦点を当てて解説します。

派遣はダブルワークができるのか?

派遣社員は基本的にダブルワークが可能です。これは法律上の観点から考えた場合においても、問題がないとされています。

法律上・雇用契約上から考える派遣のダブルワーク

そもそも労働基準法などにおいて、副業やダブルワーク自体を禁止する法律は存在しないのです。つまり、法律上は派遣社員がダブルワークをしても問題ありません。

ただし、法律上では問題なくても、雇用契約は違反となるケースがあるので注意が必要です。勤務先の雇用契約によってはダブルワークや副業を禁止としているので、万が一違反すると最悪の場合は解雇などの処分が下される恐れがあります。

ちなみに派遣の場合、雇用契約は派遣会社と結んでいるので、ダブルワークが可能かどうかは、派遣会社の雇用契約によって決定するのです。

やはり、労働時間の拘束があるダブルワークとなると、派遣会社に影響を及ぼす恐れがあるため、禁止しているケースがあるのでしょう。副業のように、労働時間の拘束を受けない場合は、雇用契約上においても可能としているケースが多くなっています。

ダブルワークの働き方2パターン

ダブルワークの働き方は、大きく分けて以下の2つのパターンがあります。

  • 昼間+夜間
  • 平日+休日

パターン1昼間+夜間

パターン1は昼間と夜のダブルワークです。

昼間と夜で異なる仕事をするパターンは、しっかりと休日が確保できるので、取り入れている人が多いパターンとなります。

例えば、昼間に事務や製造業などの仕事をして、夜間はファミレスやコンビニといった夜遅くまで働ける仕事をするなどの組み合わせが考えられるでしょう。

朝方や夕方には自宅に帰って家事をするなどの働き方も可能なため、働くママなどが取り入れやすいパターンとなります。

パターン2.平日+休日

パターン2は平日+休日のダブルワークです。

平日に休業日があるような仕事をしている方は、平日休みとなるので、自身の休日(平日)にダブルワークをするといった働き方をしています。

例えば、医療事務や美容室などで働いている場合は、休日は平日になるケースがほとんどなので、休みの日(平日)に、デモンストレーターや販売職といった単発の仕事をする働き方が考えられるでしょう。

このパターンは、本業の休みが平日なら取り入れやすい働き方です。しかし、あなたの休日が少なくなるので、かなりハードは労働環境と言えるでしょう。

ダブルワークをするメリット3つ・デメリット3つ

ダブルワークには3つのメリットと3つのデメリットがあります。

3つのメリット

メリット1.気分転換になる

1つ目のメリットは、気分転換になるという点です。

同じ仕事ばかりしていると気が滅入るという方は意外に多いでしょう。そこで気分を変えるためにダブルワークをしてみると、いつもとは違う作業によって気分が晴れるので、本業にも身が入るようになるのです。

職場が変われば付き合う人も変わるので、なかなか人には話せない悩みや愚痴なども聞いてもらえるというのは、1つの職場だけでは得られないメリットでしょう。

メリット2. 仕事における経験の幅が広がる

2つ目のメリットは、仕事における経験の幅が広がるという点です。

ダブルワークをする際は、多くの人が本業とは異なる仕事を選びます。そのため、1つの仕事では経験できないような職業も体験できるのです。幅広い職業を経験することで、ビジネス全体で通用するマナーやスキルなどが養われるので、新しい仕事を探すに際しても有利となるでしょう。

事務と接客といった形で、全く違った2つの業種を組み合わせて働けば、メリット1で挙げた気分転換も効率良くできるのでおすすめです。

メリット3.収入を増やせる

3つ目のメリットは、収入を増やせるという点です。

そもそもダブルワークをする目的として最も多いのが収入の増加です。そのため、ダブルワークをすれば大幅に収入アップができるでしょう。

生活費として継続的にダブルワークを続けるも良いですし、旅行や欲しいものがあるという理由から、短期的にダブルワークを始めるというのも選択肢の1つです。

3つのデメリット

デメリット1.精神的・肉体的な負担が大きい

1つ目のデメリットは、精神的・肉体的な負担が大きいという点です。

ダブルワークをしていると、当然働く時間や量が増えるので、肉体的に大きな負担がかかります。また、仕事の責任も増えるうえに、職場での人付き合いも増えるので精神的な負担まで増加する恐れがあるのです。

会社によってルールやマナーなども違うので、そのあたりの切り替えが上手にできない方には、少し負担が大きいかもしれません。

デメリット2.自分の時間がなくなる

2つ目のデメリットは、自分の時間がなくなるという点です。

ダブルワークをすれば、当然働く時間が長くなるので自分の時間は少なくなります。場合によっては、1日中仕事や家事などに追われて、自分の時間が一切取れないというケースもあるほどです。

家庭や趣味、プライベートといった時間を大切にするなら、仕事のスケジュール調整などを徹底的に行いましょう。

デメリット3.生活リズムが乱れる

3つ目のデメリットは、生活リズムが乱れるという点です。

ダブルワークは、本業が休みの時間にするものなので、当然夜間や本業の休日などに仕事をすることになります。本来なら身体を休めるべき時間であっても仕事をしなければならないので、生活のリズムが乱れる恐れがあるでしょう。

ダブルワークをする際は、1日のスケジュール調整をしっかりとする必要があります。最初は短い時間でダブルワークをして、様子を見ながら少しずつ仕事を増やすと良いでしょう。

ダブルワークをする際の注意点3つ

ダブルワークをする際は、以下の3つに注意してください。

注意点1.情報漏洩

1つ目の注意点は情報漏洩です。

ダブルワークをする際は、業務上知り得た情報を他の勤務先に漏らさないように注意しましょう。万が一情報漏洩が発覚したあら、解雇される恐れもあります。

また、会社によってはダブルワークこそ禁止していないまでも、「会社のイメージダウンに繋がる副業・ダブルワークは避けてください」としている場合があるので、企業の情報だけでなくダブルワークをしているという事実自体も伝えない方が無難でしょう。

注意点2.稼ぎすぎ

2つ目の注意点は稼ぎすぎです。

これは、現在扶養に入っていて、所得税や配偶者などの控除を受けている場合の方が気を付けるべきポイントとなります。というのも、ダブルワークによって収入が増えると税金控除の恩恵が受けられない可能性があるからです。

具体的には、年間の収入が103万円を超えた場合、所得税の対象となり徴収されます。

例えば、ダブルワークをしていて、複数の職場から年間103万円以上の給料をもらっていたとすると、所得税の対象となるのです。

また、主婦や主夫として配偶者控除を受けている場合は、年間103万円の収入を超えた時点で控除が受けられなくなります。

税金対策を考えるなら仕事の量を調整して、年間の収入が103万円以下になるようにしましょう。

ちなみに年間の収入が106万円を超えると社会保険の支払いが必要となります。

注意点3.年末調整

3つ目の注意点は年末調整です。

ダブルワークをする場合、複数の事業所に従事します。ところが年末調整になると、所属している複数の事業者のうち、どこか1つの企業でしか受けられません。

もしも、複数の企業で年末調整を受けると、双方の企業はその他の会社による所得を知らないので、自社における収入のみをベースに年末調整します。すると、扶養控除などの計算が複数でされる事態が発生するので、結果的に所得税の計算が狂う恐れがあるのです。

以上のようなケースでは正しく納税ができないので、ダブルワークをする際は、どこか1つの会社で年末調整をしてもらうように注意しましょう。

会社にバレずにダブルワークをするには

ダブルワークをする際は、年末調整のやり方を工夫しなければ、会社にバレてしまいます。

そもそも、ダブルワークをしている場合の年末調整はメインとなる企業でしてもらいます。しかし、その他の職場で収入がある場合は、確定申告の必要があるのです。

確定申告をすると、本業と副業の所得が合算されて総所得額が計算されます。この総所得額に対して所得税や住民税が決まるのですが、その手続き次第では、ダブルワークが会社にバレてしまうのです。

ダブルワークとして得た収入に対して住民税などを支払う場合、以下の2つの方法があります。

  1. 普通徴収
  2. 特別徴収

普通徴収とは、住民税を本人が払う方法です。そして特別徴収とは、メインとなる企業の給与から天引きする方法となります。

では、どちらの方法を選ぶと会社にダブルワークがばれるのかというと、答えは“特別徴収”です。

特別徴収を選ぶと、役所から総所得額、メインの給与所得、ダブルワークの給与所得、住民税額といった情報が、本業の勤務先に通知されますので、この際にダブルワークがバレてしまいます。

もしもダブルワークを会社に知られたくない場合は、確定申告の際に住民税の支払いを「自分で納付」にしましょう。

出典元:ゆりもとFP事務所「住民税で副業がバレちゃう!?

このようにダブルワークをする際には、様々な点に注意する必要があります。万が一トラブルが発生すると、本業を失う可能性もあるので、これからダブルワークを始めようと考えている方は、しっかりと会社の雇用契約などを確認してください。