派遣社員は正社員に比べて評価が低く、どちらかというと良いイメージが少ないです。
しかし、そのリスクをわかっている上であえて派遣という働き方を選ぶ人がいます。
派遣は雇用や収入が不安定で、長い目で見ても年収のアップはほとんど期待できません。それなのにどうして派遣を選ぶのでしょうか。
マイナスのイメージや不安定さがある派遣をあえて選ぶ理由にスポットを当てて、一緒に探っていきましょう。
正社員より待遇が良くない派遣社員をあえて選ぶ理由について
派遣という働き方は、近年さまざまな角度から良い・悪いと評価が分かれるところがあり、最終的には雇用や収入の不安定さが正社員には敵わないところから、待遇が良くないと判断されることが増えています。
ひと昔前は仕事に一生を捧げるような風潮がどの会社にもありましたが、近年では仕事は仕事、プライベートはプライベートとしてバランス良く働く傾向が見られます。
ワークライフバランスをとりやすいことから、あえて派遣社員を選ぶ方もいますが、本当はどんな理由で派遣社員を選んでいるのでしょうか。
代表的な理由には次のようなものがあります。
あえて派遣社員を選ぶ理由
- プライベートを大切にしたいから
- 残業が少ない方が良いから
- 休日出勤をしたくないから
- 育児や介護があり働ける時間が限られているから
- アルバイトやパートより時給が高いから
- 派遣からキャリアアップを目指したいから
- 組織に属していない分、責任が軽くて済むから
- 時間に融通が効くから
一つひとつの理由を見ていくと、確かに理解できるものがあります。例えば、残業が少ないことや休日出勤をしたくないなどの理由は、正社員の方でも同じ気持ちの方もいることでしょう。
また、育児や介護があって働ける時間が限られているというのも理解できます。日中だけ、夜だけなどのように、育児や介護に支障が出ないように働けるのも派遣の良いところだからです。
アルバイトやパートより時給が高いことも事実で、個人のスキルや専門性によっては正社員よりも高収入を得る方もいます。
そういった意味ではすべての派遣社員の待遇が悪いわけではなく、待遇が良い環境で働いている方もいるのです。
派遣社員の賃金と待遇は意外と悪くない
派遣社員の賃金など待遇は決して悪いわけではありません。
仮に賃金だけを見てもパートやアルバイトよりも高く、時給で1,000円を超えるところがほとんどです。
待遇面でも近年はかなり改善されていて、福利厚生の面を見ても大手派遣会社では随分充実してきています。では派遣社員の賃金から見ていきましょう。
派遣社員の平均賃金は意外と高い
ジョブリサーチセンターの調査によると最大都市圏での平均時給は1,729円と過去最高を更新しています。
この時給を月あたりで単純計算してみると1日8時間のフルタイムで1,351円×8時間×20日(月あたりの労働日数)=276,640円となります。
社会保険や厚生年金が天引きされるので実際にはこの金額よりも低くなりますが、金額だけを見ると正社員に決して収入面で劣っているとは言い切れません。
福利厚生も充実してきている
派遣社員の待遇の一環としてチェックしたいのは福利厚生です。
大手派遣会社2社を参考に見てみると、パソナの福利厚生とリクルートスタッフィングの福利厚生は共に、一般の企業と変わりない内容となっています。
- 社会保険
- 雇用保険
- 有給休暇
- 健康診断
- ベビーシッターなどの育児サービス
- ジムの利用
このほかに、パソナでは家事代行サービスや、女性向けのローン、各種相談窓口、ネイルサロンの利用などがあり、派遣会社により差はあるものの一般企業との差はさほど感じません。
紹介予定派遣を利用すれば正社員への道がないわけではない
派遣という働き方の中には、一般的に派遣会社に登録して働く登録型派遣のほかに、正社員になることを前提にした紹介予定派遣があります。
紹介予定派遣は、最長6ヶ月の派遣期間を経て派遣社員(本人)と派遣先企業の双方が合意すれば正社員になれる派遣の種類です。
派遣期間中に派遣社員と派遣先企業のどちらも双方をお試し期間として見ることができるので、ミスマッチを予防でき納得の上で正社員になることができるシステムです。
一般的な転職活動よりも、実際にその企業で働き現場を知ることができるのも魅力の1つです。
紹介予定派遣経由で正社員になることは簡単ではないものの、派遣は一生派遣のままなどのようなマイナスイメージを払拭することができるでしょう。
今後は「同一労働同一賃金」によって賃金アップが期待できる
同一労働同一賃金(別名:パートタイム・有期雇用労働法)は、派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用の方を対象とした法律で、雇用形態が違っていても同じ仕事内容なら同じ賃金にしようというものです。
正規雇用と非正規雇用の格差をなくすための制度であり、2020年4月から大企業で、2021年4月からは中小企業でも適用されます。
派遣労働者には、派遣先の労働者との均等・均衡待遇と、一定の要件を満たす労使協定による待遇が適用され、特に賃金の面ではこれまで派遣社員はもらえなかった各種手当やボーナスが支給されるようになります。
派遣社員が同一労働同一賃金によってもらえる可能性が出てくる手当
- 役職手当
- 交通費(通勤手当)
- 時間外手当
- (夜勤をする場合は)深夜手当
- ボーナス
今後は同一労働同一賃金の適用により、これらの手当ての分が上乗せされた給与をもらえるのでトータル的な賃金のアップが期待できます。
参考:同一労働同一賃金 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省
派遣社員をやむを得ず選ぶ人もいる
これまで正社員として働いてきた方でも、中には正社員を辞めて派遣社員になる方もいます。
そこにはやむを得ない事情があることがほとんですが、どんな理由で派遣を選ぶのでしょうか。
代表的な派遣社員を選ぶ理由として、次のようなものが挙げられます。
やむを得ず派遣社員を選ぶ理由
- 正社員の採用試験に落ちたから
- 次の正社員の面接までのつなぎとして
- 正社員として働く自信がない
- 人間関係で悩んだ挙句離職してしばらく気楽に働きたいから
- 残業ができないから
- 配偶者や家族の事情で長時間労働ができないから
このほか、家族の介護や看護などの関係でやむを得ず派遣を選んでいる方もいますが、いずれの場合も無職を避けて働きたい気持ちから派遣を選んでいます。
派遣社員で働くメリットとデメリット
派遣という働き方は世間のイメージのように悪いところばかりではありません。メリットもあればデメリットもある、それが本当のところです。
個人の受け止め方や考え方によっては仕方なく派遣を選ぶか、やむを得ず派遣を選ぶか、派遣がベスト! かは変わってきます。
派遣社員で働くことについて、どんなメリットとデメリットがあるのか紹介します。今後の自分の働き方を考える上でも参考にしてください。
派遣社員で働くメリット
自由度が高い
派遣には自分の働く条件を設定することができるため、自分に合う働き方ができます。自分のライフスタイルに合う労働時間や賃金、職種、勤務地などを設定でき、その条件を満たすかほぼ満たす求人の中から仕事を選ぶことができます。
正社員のように幅広い仕事をすることは稀で、派遣契約に則った範囲の仕事のみ行うこともメリットの1つと言えるでしょう。
アフター5は仕事をしたくない、育児と両立したい、プライベートと仕事はきっちり分けたいなどの希望も叶えやすく、自分にとって理想的な働き方ができます。
仕事を選べる
自分の得意分野や経験ある仕事のみを選んで働くことが可能です。
自分は体力に自信がある、英会話が得意、CADを使えるなど、特技や専門性を活かした仕事探しができるのもメリットといえます。
さまざまな経験を積むことが可能
有期雇用である以上、一定期間で別の企業で働くようになります。長い目で見ればさまざまな企業への勤務を体験することができ、案件によってさまざまな仕事を経験することができます。
派遣はベンチャー企業から大手企業まで幅広い企業の求人が集まるため、正社員として入社するには敷居が高いような会社にも、入社することができるのです。
同じ職種でも企業が異なれば仕事内容も異なります。そういった意味ではいろいろな企業で自分の技術を磨くこともできるといえます。
未経験からでも始められる仕事が豊富にある
派遣には誰でもできる簡単な仕事から、研修が充実している仕事など、未経験からでも始められる仕事が豊富にあります。
通常の派遣の仕事は、即戦力を求められることが多いですが、職種によっては未経験歓迎という条件のところもあります。
憧れの仕事がある方やチャレンジしてみたい仕事がある場合、こうした未経験からでも始められる仕事を選ぶのも良いでしょう。
派遣会社に相談することができる
自分の仕事のことを相談するとしたら、家族や友達に相談する以外に転職エージェントなどを利用するのが多いことでしょう。
その点、派遣なら自分の営業担当者にいつでも相談することが可能で、派遣契約が満了となった後、もしくは派遣先に就業中でもさまざまな相談に乗ってもらえます。
自分のキャリアプランについて将来を見据えた内容も相談することができます。
派遣社員で働くデメリット
派遣期間に上限があること
派遣社員として同じ派遣先に最長3年までという派遣期間の上限があります。A社に丸3年勤めたら、どんなに気に入っている場合でも別の派遣先を探さなければなりません。
平均すると半年ほどから1年半くらいで別の派遣先に移り仕事が変わることが多いです。
契約満了となり契約更新されない恐れがある
派遣契約が満了となると、どんなにその派遣先で働きたいと思っていても契約を更新してもらえないケースがあります。
派遣の仕事は平均して3~6ヶ月での契約が中心で、能力やスキルを認められれば契約更新となりますが、力を発揮できなかったり、派遣先企業の方が派遣社員を必要としていない場合は契約が更新されず終了となります。
契約が更新されなかったときは、別の派遣先を探すようになります。
スキルの有無で時給に差がでる
派遣の仕事はエンジニアや薬剤師などのように、専門性が高く需要がある仕事だと時給が高くなり、特にスキルがなければ安くなります。
一般的に専門性が高く経験者の場合だと時給15,00円~4,000円、未経験の場合だと1,000円~1,500円くらいが相場です。
時給1,500円と2,000円では1時間あたり500円の差でも、8時間のフルタイムで比較した場合は1日あたり4,000円、20日の勤務で80,000円もの差が開きます。
こうしたデメリットを嘆くよりも、未経験者歓迎の仕事からコツコツキャリアを重ねていき、業界の経験者になることをおすすめします。
派遣社員の待遇改善も進んでる。何を重視するかの選択は自分次第
日本では派遣社員の数が増えていることもあり、派遣社員の方たちの待遇改善の声はここ数年でかなり上がってきました。
その成果もあり、派遣社員とはいえ福利厚生は受けることができたり、時給も上がっていくなど、待遇の改善は進んでいます。
派遣社員も正社員もそれぞれ良い面と悪い面があるので、自分の生活スタイルや考え方に近い働き方を選びましょう。