転職をしようとしたときにハードルとなるのがスキル不足です。
今までとは全く違う職種に就こうとすると実務経験が無いため採用が非常に困難になります。
そこでおすすめなのが派遣でスキルアップと実務経験を積むことです。
今回は派遣でスキルアップするための方法や制度や意識すること、注意点、職場の選び方などを紹介します。スキルアップをして転職したいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
派遣でスキルアップは可能か?
やりたい職業に転職をしようとしたときネックとなるのが実務経験とスキルです。
例えば事務職は求人も多いのですが、その分希望者も多く未経験では中々採用が難しくなっています。
ところが派遣会社に登録して事務職に派遣してもらい、そこで経験を積んでから改めて事務職に転職するという方法もあります。
また2015年の労働者派遣法改正により様々なスキルアップのための支援が行われるようになり、派遣で働きながらスキルアップをすることも可能になっています。
しかし派遣でスキルアップをするのも良いことばかりとはかぎりません。派遣でのスキルアップによるメリットとデメリットを確認していきましょう。
派遣でスキルアップするメリット
まずは派遣でスキルアップをすることの6つのメリットを紹介します。
メリット1. 身に付けたいスキルの職業を選べる
派遣には様々な職種があるため、自分に合った、あるいは身に付けたいスキルの職業を選択可能です。
専門的な分野など希望の派遣先が見つけやすく、派遣先を変更し複数のスキルを身に付けることも可能なのです。
あらかじめ身に付けたいスキルが決まっていれば、そのスキルを使用する職種を多く扱っている派遣会社かを確認してから登録すると良いでしょう。
メリット2. 正社員より仕事に就きやすい
未経験な職種やスキルの経験が少なくても、派遣スタッフのほうが正社員と比べてやりたい仕事に就きやすいです。
正社員よりも採用のハードルが少し下がりますので、まず新しい職場を探したいと考えている方で正社員の内定がなかなか決まらない場合は派遣社員も検討するといいでしょう。
メリット3. 法改正により派遣もスキルアップの機会が設けられる
改正労働者派遣法により、正社員だけではなく派遣なども均等にスキルアップの機会が設けられるようになりました。
派遣労働者に対するキャリアアップ措置(法第 30 条の2)
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することが出来るように教育訓練を実施しなければなりません。
・上記の場合において、当該派遣労働者が無期雇用派遣労働者であるときは、当該無期雇用派遣労働者がその職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければなりません。
・雇用する派遣労働者の求めに応じ、当該派遣労働者の職業生活の設計に関し、相談の機会の確保その他の援助を行わなければなりません。
(『派遣元事業主の講ずべき措置は|厚生労働省』より引用)
メリット4. 様々な職場や仕事を経験できる
短期の派遣を選べば同じ職種であっても色々な職場を体験し比較できますし、違う職種ならどれが自分に一番合うかを確かめるのにも役立ちます。
正社員よりも職場を変えやすいということを上手く利用して広くスキルや知識を獲得することも可能です。
メリット5. 資格試験の勉強が進めやすい
正社員などと比べると派遣社員のほうが時間の都合が付けやすく、資格試験の勉強を進めやすいと言えます。
メリット6. 初心者向けの研修が多く始めやすい
派遣ではスキルを持たずに登録する方も多いため初心者向けの研修(教育訓練)が多く用意されています。
このように派遣をしながらでもスキルは身に付けられますし、資格取得を目指すなら時間の都合が付けやすい派遣のほうが有利とも考えられるのです。
また派遣会社によっては、外部のスクールと提携しており補助金が出るところや、自習のための学習室やパソコンなども用意しているところもあります。
派遣でスキルアップのデメリット
メリットばかりに目を向けずデメリットもしっかりと確認しておきましょう。
デメリット1. 有料の研修もある
無料で行なわれる研修もあるのですが、自分で費用を負担しなければならない場合もあります。
派遣会社により差があるので確認が必要です。
デメリット2. 定員があるため人気の研修は受けられないことがある
研修にはあらかじめ定員が決められているので、人気のある研修は希望者が殺到し受けられない可能性があります。
デメリット3. 地方では研修を開催していないことがある
大手派遣会社では本社を都市に置く場合が多く、地方の支部では研修を開催しない場合があります。
その場合、地方の方は研修を受けるために遠くまで移動しなければなりません。
研修自体も有料であった場合、交通費も自分で支払わなければならない可能性が高く負担が大きくなってしまいます。
また、研修が開催されていたとしても自分の目指す業務関連の研修がないケースもあるので、必ずしもスキルアップするための土台が整っているわけではありません。
デメリット4. 高度な専門スキルの研修が少ない
初心者向けの研修が多いことの裏返しになってしまいますが、派遣の研修は高度な専門スキルの得るには不向きです。
派遣でも研修が行なわれスキルアップをしやすくなっていますが、すべてが無料でないところがネックです。
また地方のスタッフは研修を受けにくい可能性があるので、派遣会社がどこで研修を行なうのかはチェックしておくほうが良いでしょう。
そして上級者向けの研修が少ないので高度な専門スキルを身に付けたい方は、派遣以外の方法を検討する必要があります。
派遣の研修は有料が多いことや上級向けの研修が少ないことなどデメリットもありますが、これからスキルを身に付けようという方にはメリットが大きいと言えます。
そもそも派遣されることで実務経験は積めるので、長期の転職計画に利用するには最適です。
スキルアップできる方法や制度とは?
2015年に改正された労働者派遣法では、派遣労働者に教育訓練を計画的に実施してキャリアアップを支援することを派遣会社に義務付けています。(厚生労働省:派遣労働におけるキャリアアップ支援の手引)
この法律で定められた教育訓練を「キャリア形成支援制度」と呼びます。この制度は派遣会社が雇用するすべての派遣労働者が対象となるのです。
キャリア形成支援の考え
派遣労働者の待遇を向上させるために、派遣の仕事を続けながら専門性のスキルアップや仕事の幅の拡大などをしなければなりません。
そのために改正労働者派遣法では、派遣元事業主に派遣労働者のキャリア形成支援に関する責務を明記しました。
派遣元事業主は、派遣労働者に対して、
- 段階的・体系的に必要な知識や技能を習得するための教育訓練
- 希望者に対するキャリアコンサルティング
等の実施を義務化。
こうした措置が確実に実施されるよう、
- 事業の許可・更新要件に「キャリア形成支援制度を有すること」を追加
- 教育訓練の実施状況について事業報告を求め、必要な指導等を実施
労働者派遣事業の認可を得るための条件には「キャリア形成支援制度」を用意することが含まれます。
また『教育訓練計画』の策定もしなければなりません。
教育訓練計画
教育訓練計画では5つの要件を満たしている必要があります。
要件1. 全ての派遣労働者が対象
実施する教育訓練は、派遣会社が雇用する全ての派遣労働者を対象としていなければなりません。
要件2. 無償かつ有給
実施する教育訓練は無償で行なわれ、さらに有給でなければなりません。
実際には有料の研修も行なわれています。
要件3. キャリアアップに役立つ内容
教育訓練は派遣労働者のキャリアアップに役立つ内容にする必要があります。
要件4. 雇用時に職業訓練を実施
派遣労働者として雇用するときに教育訓練を実施する必要があります。
要件5. 長期的なキャリアの形成を目指す
教育訓練は長期的なキャリアの形成を念頭に置いた内容でなければなりません。
派遣会社にはこの5つの要件を満たした教育訓練計画を立て、派遣労働者のキャリアアップを助けることが求められます。
では具体的にどんな教育訓練の仕方があるのでしょうか。
教育訓練の実施方法
どのような方法で教育訓練が行なわれているかを紹介します。
方法1. 派遣先におけるOJT
OJTとは、「On the Job Traininng」の略称で、実務を体験しながら未経験者などに仕事を覚えてもらう教育手法のことです。
方法2. 派遣会社での研修
派遣会社でスキルを身に付けるための研修を行ないます。
方法3. eラーニング
インターネットを使用した学習方法です。そのため自宅でも学習できますし、地方の方もインターネット環境があれば勉強することができます。
方法4. 外部のスクールとの提携
派遣会社が外部スクールと提携し、受講費用の補助や割引などをして自分たちの代りに教育訓練をしてもらいます。
方法5. 資格取得の支援
派遣会社が業務に役立つ資格を取るための受験費用の補助や割引などをします。
この5つの方法以外にも社内検定制度の整備、書籍購入費用の補助など様々な教育訓練の方法があります。
派遣会社を選ぶ際にはどのような教育訓練をしているかもチェックしておくと良いでしょう。
スキルアップを狙う時の注意点
キャリア形成支援制度により派遣労働者もスキルアップのための教育訓練を受けるチャンスが増えましたが、注意点もあるのでチェックしておきましょう。
注意点1. 適切に行なっていない派遣会社もある
キャリア形成支援で教育訓練などが義務化されているものの、派遣会社によっては適切に行われていないところもあります。
登録前に調べておくのも重要ですが登録してから分ることもあるので、求人を探すのと同時に研修制度についてもしっかりと確認しておきましょう。
研修制度に不満があれば別な派遣会社にも登録するのも良いでしょう、派遣会社は複数登録が可能です。
注意点2. スキルアップに熱中しすぎない
スキルアップに時間をかけ過ぎると疲労が蓄積して作業効率の悪化となり、仕事に影響が出る場合があります。スキルアップは大切ですが、まずは仕事をきちんとやらなければなりません。
どうしてもスキルアップに集中したいなら、お金を貯めてから仕事をしばらく休み、スキルアップに集中するのが良いでしょう。時間の自由度が高いことも派遣のメリットなのでこのように活用することもできます。
法律が制定されてもそれをしっかり実行するかは企業次第です。
派遣スタッフは制度を利用しスキルアップを目指す場合でも、仕事をおろそかにしてはなりません。
派遣先と派遣元、どちらにも迷惑をかけてしまいますし、自分自身の信用も失ってしまいます。節度を持って計画的にスキルアップは行ないましょう。
スキルアップをするために意識すべきこと
キャリア形成支援制度により派遣労働者もスキルアップをしやすい環境ができてきました。
しかし、いくら環境が整ったとしても教育訓練を受ける側が上手く活用できないとせっかく受けた研修などが無駄になってしまいます。
スキルアップのためにはどのようなことを意識すれば良いのでしょうか?
1. 社員と良好な関係を築く
スキルアップ以前に社会人としてのマナーやモラルを大切にし、社員と良好な関係を築かなければなりません。信頼を獲得することで評価や今後の継続などにも影響する可能性がありますし、困ったとき助けてもらいやすくなります。
派遣先の人たちと良好な関係を築くこと自体がコミュニケーションスキルを磨くことになるのです。
2. 身に付けたいスキルの仕事を選択する
Webデザインやプログラミングなど自分がどのスキルを身に付けたいかを明確にして仕事を選択します。
今は派遣でも実務経験を付けることで転職して社員になったり、より専門的な仕事への道を切り開いたりすることも不可能ではありません。
3. 学んだことを仕事で活かす
研修などで学んだことを意識的に仕事に活かすことでスキルが向上します。新しい知識や技術を身に付けても普段から使用していないと宝の持ち腐れです。
研修に使った時間や努力を無駄にしないためにも、研修で学んだことは積極的に使ってスキルアップしましょう。
4. スキルアップしたいということをアピールする
自分からスキルを向上させる意識があることを発信していきましょう。
新しい仕事や業務に取り組ませて貰える可能性がありますし、自己アピール力自体も重要なスキルです。
スキルを活かすのは日常の業務です。研修などを受けて知識や技術を身に付けても使わないと意味がありませんし、使わないうちに忘れてしまうこともあります。
派遣でもスキルアップをしやすい環境ができはじめているのですから、それを利用しより有利に働けるようになりましょう。
職場の選び方
研修でスキルを身に付ける他にも、職場で働いて実務経験と共にスキルアップする方法もあります。
実務経験が重視される職種もあり、将来転職して正社員になりたいなら派遣先が自分の求めているスキルに合った会社か確認しましょう。
特に専門分野のスキルを身に付けたいのであれば、それに特化した派遣先を選ぶ必要があります。
身に付けたいスキルと職種の例
どの職種に付けは何のスキルが身に付けられるか具体例を紹介します。
例1. 簿記・会計処理など
経理、財務、会計事務などが簿記・会計処理などのスキルアップに繋がる職種になります。
例2. 語学系
貿易事務、英文事務などが語学系のスキルアップに繋がる仕事です。
例3. CADソフト
CADオペレーターなどがスキルアップする仕事に該当します。
派遣される前に教育訓練やキャリアコンサルティングをしっかり行っている会社なのかを見極める必要があります。
派遣でスキルアップをして次のステージへ!
派遣でスキルアップを行なうメリットやスキルアップを狙うときの注意点、そしてスキルアップをするために意識することなどを紹介してきました。
スキルアップをすることでより派遣で待遇の良い仕事を得たり正社員へ転職したりと、次のステージへ進むことができます。
スキルアップをしたいなら思い切って派遣で働いてみましょう!