あなたは派遣社員でも失業保険がもらえるという事実を知っていますか?
失業保険と聞くと、正社員だった方はもらえるのは分かっても、派遣社員やアルバイトといった非正規労働者はもらえるのかどうかは意外に知らないでしょう。
また、失業保険がもらえたとしても、手続き方法が分からなかったり、給付金額や給付期間がどのぐらいなのか知らなかったりと分からない点があるはずです。
そこで今回は、派遣社員でも失業保険はもらえるのかについて解説します。
手続き方法や給付金額・期間についても参考にしてみてください。
失業保険とは?
失業保険とは、その名の通り失業した際に、次の仕事が見つかるまで生活費などをサポートするためのお金がもらえる制度です。
会社都合で失業した場合はもちろん、自己都合で失業した場合でも、雇用保険に加入していれば失業保険を受け取れます。
この失業保険制度は、雇用保険と呼ばれる公的支援の一つで「失業等給付」を示しています。
雇用保険では、失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、1日も早く再就職できるよう、窓口での職業相談・職業紹介を受けるなどの求職活動を行っていただいた上で、失業等給付を支給しております。
引用元:ハローワーク 雇用保険手続きのご案内
転職活動を支援すると共に、会社で働く労働者の雇用を安定させる目的もあります。
ただし、次の仕事が見つかるまで永久に受給できるのではなく、期間や金額は失業理由や前職の年収などによって変わってきます。
また、雇用形態は関係なく雇用保険の加入要件を満たせば加入可能です。
この失業保険があることで、次の仕事が見つけやすくなり社会全体の雇用の安定にも繋がっていきます。
雇用保険の加入要件
続いては、雇用保険の加入要件について解説します。
加入要件には、以下の3つがあります。
- 週間の所定労働時間:20時間以上(1ヶ月で87時間以上)
- 雇用契約期間:31日以上の継続した雇用が見込まれる
- 学生ではないこと
それぞれ詳しく解説していきます。
加入要件1.週間の所定労働時間:20時間以上(1ヶ月で87時間以上)
雇用保険の加入要件1つ目は週間の所定労働時間が20時間以上(1ヶ月で87時間以上)の場合です。
パートやアルバイト、派遣社員だったとしても、所定労働時間が20時間以上であれば、雇用保険の加入対象者として検討しなければならないのです。
ただし、一時的に週20時間の労働をしたとしても、それでは雇用保険の加入要件を満たしたとは言えません。
ちなみに所定労働時間とは、法定労働時間の範囲内で自由に決めた労働時間です。
そもそも労働時間には、法定労働時間と所定労働時間という2つがあり、法定労働時間とは労働基準法で決まっている労働時間を意味します。
この法律では、週40時間1日8時間と定められているのです。
・使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
・使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
・使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。引用元:厚生労働省 労働時間・休日
所定労働時間は、法定労働時間の中であれば自由に時間を決めて働けるという意味になります。
この所定労働時間が20時間以上(1ヶ月で87時間以上)の場合は、雇用主が労働者を雇用保険への加入を検討する必要があるという訳です。
加入要件2.雇用契約期間:31日以上の継続した雇用が見込まれる
雇用保険の加入要件2つ目は31日以上の継続した雇用が見込まれる場合です。
平成22年4月1日以前は、「6か月以上の雇用見込みがあること」という加入要件でした。
しかし、平成22年4月1日以降は「31日以上の雇用見込みがあること」と法改正がされたのです。
例えば、事業所の雇用契約に「更新する場合がある」と規定があり、尚且つ31日未満しか雇わないと明記できないのであれば、「31日常の雇用見込みがある」と判断されます。
つまり、雇用保険への加入手続きが必要という訳です。
もちろん、雇用契約に更新規定がなくても、31日以上働いたのであれば雇用保険へ加入する必要があります。
加入要件3.学生ではないこと
雇用保険の加入要件3つ目は学生ではないことです。
原則として、学生は雇用保険加入対象外となっています。
学生とは、学校教育法で定められている「学校に通う生徒」という意味です。
高校はもちろん、大学や専門学校、夜間学校、定時制学校、通信制の学校なども学生と定義されています。
基本的には、学生と定義される方は雇用保険の加入対象外です。
しかし、働くすべての学生を対象外とすると後々トラブルに発展する恐れがあるので、学生でも雇用保険の加入対象となる4つのケースが用意されています。
- 卒業後に働く予定の事業所で卒業見込みの状態で働いているケース
- 休学中に働いているケース
- 大学院への在籍を事業所が認めたうえで雇用契約を結んでいるケース
- 学校の課程修了に出席日数が関係なく、他の労働者と同じ条件で働いているケース
これら4つのうち、いずれかに該当しているなら、学生であっても雇用保険の加入が可能です。
派遣社員が雇用保険に加入する場合
現在、派遣で働いている方は給与明細に「雇用保険料」の天引きがある場合、雇用保険に加入していると判断されます。
しかし当然、派遣社員でも要件を満たしていない方は加入できません。
派遣で働く以上、加入要件2はクリアできるでしょう。
しかし、加入要件1は労働時間が短い方もいるため、派遣なら誰でも加入要件を満たすとはいえないのが実情です。
どうしても加入したいなら、1週間の労働時間を確認してギリギリでも加入要件1をクリアするしかありません。
雇用保険の受給条件
続いては、雇用保険の受給条件について解説します。
受給要件1.雇用保険に加入している期間
雇用保険の受給要件1つ目は保険に加入している期間です。
そもそも、雇用保険は一定期間の加入をしていなければ受給できず、その期間は自己都合退職と会社都合退職によって変わってきます。
例えば、あなたが自己都合で退職した場合は、以前勤めていた会社の雇用期間に加入していた期間が失業日までの2年間で12か月以上を超えている必要があります。
また、自己都合の退職だと、3か月間の給付制限がかかるため、退職してすぐには手当てを受け取れないのです。
次に、会社都合による退職の場合、特定受給資格者となるため、失業までの1年間に6か月以上にわたり失業保険に加入していれば受給ができます。
加えて、自己都合退職のような給付制限もないので、退職後すぐに手当てが受け取れるのです。
このように、雇用保険の受給条件には、一定の期間にわたり保険に加入している必要があります。そして、自己都合退職と会社都合退職によって条件が違うという点についても覚えておいてください。
受給条件2.転職する意思があること
雇用保険の受給要件2つ目は転職する意思があることです。
そもそも、雇用保険とは次の仕事が見つかるまでのサポートとして給付されるものなので、転職の意思がない方が永久に手当てを受け取ったりはできません。
就職する能力があり、尚且つ転職活動をしているにもかかわらず就職先が決まらない場合に、雇用保険が受給できるという訳です。
具体的には、手当てが振り込まれるのは28日おきという決まりがあるので、28日間に最低2回はハローワークに通って転職活動している意思を見せなければなりません。
例えば、いつまでも面接を受けない状態が続いていると、転職の意思がないと判断されてしまいます。
雇用保険は、あくまでも次の働き口が見つかるまでの支援金なので、就職できるのに転職する意思がなければ受給できないという訳です。
派遣社員は通常より短い加入期間で受給できる?
自己都合の場合、基本的には失業日までの2年間で12か月以上は失業保険に加入している必要があります。
しかし、派遣社員は契約が更新されず離職するケースが多々あるため、特定理由離職者となって特定受給資格者と同じ条件で給付が受けることが可能です。
ちなみに厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」によると、特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、その他やむを得ない理由により離職した者とされています。
つまり、会社都合による退職と同様に、失業までの1年間に6か月以上にわたり失業保険に加入していれば受給できるという訳です。
もちろん、給付制限もないので、退職後すぐに手当てが受け取れます。
このように、派遣社員は契約更新がされないなどの理由があるので、場合によっては自己都合でも会社都合による退職と同じ扱いとなるのです。
失業保険はいつからもらえるのか?
失業保険は、離職票を入手(郵送か職場まで取りに行くか)して自分でハローワークに出向き、「受給資格決定」の手続きをした時点で条件に応じた給付がスタートします。
具体的な給付のスタートは、離職の理由で変わってきます。
- 会社都合で離職した場合
特定理由離職者に該当するため、離職票の提出と求職の申込み手続きをハローワークで行った日(受給資格決定日)から数えて7日間(待期期間)後から給付される。 - 自己都合で離職した場合
受給資格決定日から7日の待機期間を経て、さらに3ヶ月間の給付制限期間を経て給付がスタートする
ちなみに、派遣社員は会社都合であっても、「派遣労働者が同じ派遣会社からの派遣先を希望していながら、契約満了後1ヶ月以上派遣就業がない場合」という条件が付きます。
派遣先の紹介があったのに、それを断った場合は自己都合の扱いとなる訳です。
そのため、派遣社員は契約満了で辞めた方が、会社都合扱いとなって7日後から給付を受け取れます。
失業保険の給付金額と給付期間
ここでは、失業保険の給付金額と給付期間について解説します。
給付金額
1日あたりに受給できる金額を基本手当日額と呼び、原則として離職した日の直前の6ヶ月に毎月決まって支払われた賃金(賞与などは除く)の合計を、180で割った金額の50~80%(60~64歳は45~80%)が支給されます。
ちなみに、基本手当日額は年齢区分ごとに上限額が定められており、現在は次のようになっているのです。
30歳未満 | 6,850円 |
30歳以上45歳未満 | 7,605円 |
45歳以上60歳未満 | 8,370円 |
60歳以上65歳未満 | 7,186円 |
この基本手当日額は変更されることもあるので最新の情報に関してはハローワークで確認をして自分の給付金額がどのくらいになるか計算をしてみましょう。
給付期間
給付期間は以下のようになっています。
【1.特定受給資格者及び一部の特定理由離職者】
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30歳以上
35歳未満 |
120日
(*90日) |
180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上
45歳未満 |
150日
(*90日) |
240日 | 270日 | ||
45歳以上
60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上
65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
*受給資格にかかわる離職日が2017年3月31日以前の場合
【2.就職困難者】
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | |
45歳以上
60歳未満 |
150日 | 300日 | |||
60歳以上
65歳未満 |
3060日 |
【3.1と2以外の離職者】
1年未満 | 1年以上
5年未満 |
5年以上
10年未満 |
10年以上
20年未満 |
20年以上 | |
全年齢 | ― | 90日 | 120日 | 150日 |
以上のように、年齢や保険加入期間によって給付期間は異なります。
自身がどのぐらいの期間なのか具体的に知りたい方は、ハローワークで確認してみましょう。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
失業保険の手続きに必要なもの
失業保険を受給するには、以下の書類等を用意する必要があります。
✔ 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
✔ 個人番号確認書類
✔ 身元確認書類
✔ 写真
✔ 印鑑
✔ 口座情報を確認できるもの
失業保険を受け取る手続きは、お近くのハローワークで可能です。
また、ハローワークでは受給要件を満たしていることを確認したうえで、受給資格の決定を行ないます。
派遣社員を辞めて失業保険をもらうなら契約満了で辞めるのがベスト
今回は、派遣社員の失業保険について解説しました。
当然、派遣社員であっても受給条件を満たしていれば、失業保険は受け取れます。
また、派遣社員を辞めて失業保険をもらうなら、契約期間満了で辞めることで会社都合となります。どんなに辛い派遣先だったとしても、派遣を辞めるなら契約満了で辞める方が失業保険をすぐに受給できる訳です。
どうしても今すぐに辞めたいなら仕方ありませんが、我慢できるなら契約満了まで待ってから退職しましょう。