皆さんは「健康診断」を受けたことがありますか。
「あるけど自分はまだ受けたことがない」という人もいれば「毎年受けている」という人も沢山いるでしょう。
私が派遣社員として受けた健康診断は、正社員だった時と比べると受診時期や費用など様な点で違いがありました。
本記事では、派遣社員の健康診断について注目し、必ず受けないといけないものなのか、費用は自己負担なのかなどの基本的な知識から、再検査などについての細かな疑問まで詳しくお伝えします。
健康診断を受けたくない、でも受けるのは義務
「健康診断は前日の食事制限があるし、時間もかかればお金もかかるから、できれば受けたくない」という人も多いでしょう。
確かに検査によっては、日中の時間がほとんど検査で潰れてしまうということもあり、非常に疲れますよね。
しかし会社の健康診断は、会社が労働者に対して必ず行うべきもの、つまり義務化されているので、それを拒むことはできません。
以下は健康診断について厚生労働省が述べているものです。
事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。また、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。(参考:厚生労働省「健康診断を実施しましょう」)
上記では、派遣社員であろうと正社員であろうと、雇用形態に限ったものではなくすべての労働者が健康診断を受ける対象となっていますね。
派遣会社が実施すべき健康診断の種類
派遣会社が実施すべき健康診断は、以下のように述べられています。(厚生労働省:「派遣元が実施すべき事項」)
派遣元は、派遣労働者に対し、雇入時及び1年以内ごとに1回、定期に健康診断を行うこと。
また、深夜業に従事する者などに対しては、配置換えの際及び6カ月以内ごとに1回定期に健康診断を行うこと。
上記によると、健康診断には3種類あり「雇入時の健康診断」、「定期健康診断」、特殊健康診断と呼ばれる「深夜業に従事する者などの健康診断」に分かれているのです。
それぞれ以下で詳しく見てみましょう。
雇入時の健康診断
雇入時の健康診断は、常時使用する労働者を雇う時に派遣会社に実施するように義務付けられていますが、対象者の条件は以下の通りです。
(参考:神奈川労務安全衛生協会「定期健康診断に関わる常時使用する労働者とは」)
- 雇用期間の定めのない者(無期雇用)
- 契約期間が1年以上である者
- 契約更新により1年以上引き続き使用されている者
- 契約更新により1年以上使用されることが予定されている者であり、かつ、その者の1週間の所定労働時間が、当該事業場において同種の業務に従事する通常労働者の1週間の所定労働時間の3/4以上であること
上記に挙げられた条件を見ていくと、おそらく派遣会社に社員として入社した人や、最初から1年以上の契約期間がある契約社員などが対象者であるということが分かりますね。
中でも派遣社員に関係があるとしたら、4番目の「契約更新によって1年以上働くことが見込まれている人」でしょう。
しかし、最初から1年以上見込まれる派遣の仕事を紹介されることは少ないので、雇入時の健康診断は対象にならないことが多いと言えます。
定期健康診断
派遣社員は1年に1回の定期健康診断を受診することが義務付けられています。
よく聞く「健康診断」とは、この定期健康診断のことで、「会社の健康診断を受ける」とはつまりこのことを指しているのですね。
本記事では主にこの定期健康診断について説明しています。
特殊健康診断
労働安全衛生法では、派遣会社は「深夜業に従事する派遣社員」と、放射線業務などの「有害業務に従事する派遣社員」に対して「特殊健康診断」という健康診断を実施する義務があると定めています。
この法律によって、該当者は3か月もしくは6か月ごとに特殊健康診断を受診しなければなりません。
定期健康診断の検査項目
安全衛生法第44条では、定期健康診断で受けるべき検査項目が定められています。(参考:厚生労働省「労働安全衛生法令」)
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査(GOT、GPT及びγ-GTPの検査)
- 血中脂質検査(LDL コレステロール、HDLコレステロール、
トリグリセライド) - 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
上記11項目もの検査が受けられるので、普段自分からは検査に行かないという人にはありがたい機会ですよね。
尚この中で、3番目の身長、4番目の喀痰検査、6番目から9番目までと11番目の項目については省略可能、それに加えて特殊健康診断対象者の場合は、3番目の聴力検査と4番目の胸部エックス線検査も省略できることがあります。
健康診断がいつ受けられるかは会社の基準によって違う
健康診断は受ける義務があるとは言え、それがいつ、どんな条件を満たした場合に受けられるのかは派遣会社によって違います。
ほとんどの派遣会社では、就業期間や週の労働時間に基準を設けている場合が多く、例えば「働いている期間が1年以上経っている人」や「6か月を超えて週40時間以上勤務している人」など様々です。
事前に自分の派遣会社の基準を確認しておくことが大事ですね。
健康診断の費用は会社負担?自己負担?
健康診断にかかる費用が会社負担か自己負担かは、派遣会社によって異なります。
健康診断の費用は「年1回無料」という派遣会社も多いですが、通常の検査項目以外にも、自ら違う検査を申し込む場合は自己負担額が発生するケースが多いようです。
私の派遣会社では、定期健康診断で受ける検査項目以外にも検査を沢山受けさせてくれて、しかも全額会社負担でした。
私の友人の派遣会社では、本来10万円かかる人間ドッグを自己負担額1万円で受診できるようです。
しかし、中には健康診断の費用を「補助するだけ」といった派遣会社もあり、その際の金額は会社によって様々ですから、いずれにしても派遣会社に確認しておくのが一番でしょう。
ちなみに、有害業務に従事する派遣社員が受ける「特殊健康診断」に関しては安全衛生法第66条により、費用は全額派遣先の会社の負担となります。
派遣社員が健康診断に行くまでの流れ
私が実際に体験した健康診断に行くまでの流れは、以下の通りです。
- 健康診断の案内が派遣会社から送られてくる
- 病院を決めて電話予約もしくはネット予約
- 問診表、事前検査キットが病院から送られてくる
- 予約した日に保険証と問診票、検査キットを持って健康診断に行く
以下で詳しく見ていきましょう。
健康診断の案内が派遣会社からくる
最初に派遣会社から健康診断の案内がきます。私の場合は自宅に郵送されてきました。
内容としては受診期間や病院名一覧、各病院で受けられる検査項目、予約方法が書かれていることが多いでしょう。
病院を決めて電話予約もしくはネット予約をする
健康診断の案内が届いたら、病院一覧の中から受診する病院を決めて予約しましょう。
ただ派遣会社によっては病院を指定されず、自由に病院を決めて良い場合もあります。
私の場合は指定されている病院の中から選ぶパターンでしたが、各病院ごとに検査できる項目が違うので、自分が検査したい内容に合わせて病院を選びました。(例えば、A病院では乳がん検診が受けられるけれど、B病院では受けられないなど。)
この時の予約先ですが、直接病院に電話をかけて予約するパターンと、派遣会社で特設で設けたと思われる「健康診断予約センター」に電話もしくはネット予約をするという2つのパターンがあることが多いです。
私の場合は後者の方で、派遣会社で設けられている健康診断予約センターに電話をし、受診病院と受診希望日を何個か伝えて、折り返しの連絡待ちになりました。その時期の予約センターは混み合っているので、折り返しの電話がきたのは1週間後です。
問診表、事前検査キットが病院からに送られてくる
予約が完了したら、受診日までの間に病院から問診票と事前検査キットが送られてきます。
事前検査は、受診日の数日前までに実施するように具体的に指示されるので、しっかりと注意事項を読み実施日を守りましょう。
また、健康診断の前日や当日にも飲食の制限がある場合が多いので気を付けて下さいね。
予約した日に保険証と問診票、検査キットを持って健康診断に行く
健康診断当日は保険証と事前に書いておいた問診票、検査キットを忘れずに持っていきましょう。
病院の混み具合や検査項目によってかかる時間は異なりますが、その後の予定は時間に余裕を持って立てた方が無難です。
私の友人はバリウム検査を実施し、健康診断が終わっても気持ちが悪くて結局会社を1日休んでいました。
健康診断にまつわるQ&A
ここまでは健康診断の種類や流れ、費用についてなど基本的な知識について触れました。
健康診断は義務付けられているとは言え、費用が会社負担でない場合もあるなんて納得いかないと思った方もいるのではないでしょうか。
ここからは、健康診断を受ける日は出勤扱いになるのか、健康診断を受けた後に再検査だった場合について等、健康診断にまつわる細かな疑問について回答していきます。
再検査は絶対に受けるべき?費用は出る?
会社で行った健康診断の結果、再検査になった場合、再検査を受けるかどうかは自分で判断することができます。
派遣会社は再検査になった派遣社員に対して、再検査を勧奨することにはなっていますが、再検査を受けさせる義務はありません。
つまり再検査となった時の費用は、当然支給されないことになります。
以下は再検査について厚生労働省が公表している引用文です。
再検査又は精密検査の取扱い
事業者は、就業上の措置を決定するに当たっては、できる限り詳しい情報に基づいて行うことが適当であることから、再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、当該再検査又は精密検査受診を勧奨するとともに、意見を聴く医師等に当該検査の結果を提出するよう働きかけることが適当である。
なお、再検査又は精密検査は、診断の確定や症状の程度を明らかにするものであり、一律には事業者にその実施が義務付けられているものではない(参考:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)
ただし例外もあり「特殊健康診断を受ける対象者」については、事業者に再検査や精密検査の実施が義務付けられています。
健康診断に行く時の交通費は出る?
健康診断に行く際の交通費は基本的には出ません。
何故なら健康診断は労働者の健康確保のために実施するもので、仕事ではないので労働時間には含めないとみなされるからです。
ですから休みの日に自宅付近の病院で受ける人もいますし、通勤時の定期券の範囲内の場所で受ける人も沢山います。
健康診断の日は出勤扱い?有給を使うべき?
健康診断の日が出勤扱いになるか欠勤扱いになるかは、派遣会社によって規定が異なるため確認が必要です。
私の派遣会社の場合は欠勤扱いだったので、休日に健康診断を受ける同僚も沢山いました。
派遣先に許可を得られるなら、勤務日に半休を取って行くのは構わなかったのですが、そうなると半日分の時給が引かれてしまいます。
時給が引かれるのが厳しいという人は、有給を使って健康診断を受けることもできるので、派遣会社に相談しましょう。
派遣期間満了後も健康診断を受けられる?
派遣期間終了後でも健康保険の被保険者の資格が継続している状態であれば、健康診断を受けられことがあります。
例えば以下のどちらかのケースに該当する場合です。
- 同じ派遣会社で次の派遣先が決まっている場合
- 同じ派遣会社の仕事ではないが、退職後1か月に新しい会社に行く場合
上記のケースでは被保険者資格は喪失していない状態と言えます。
ちなみに私の場合は、派遣期間中に他社での次の仕事が決まりましたが、せっかくなので被保険者資格を喪失する前に無料で健康診断を受けさせてもらいました。
検査結果はいつ来るの?派遣会社に見せる必要はある?
健康診断の検査結果については病院にもよりますが、結果が送付されてくるまでに2、3週間かかることがあります。
私の場合も3週間程かかり、忘れた頃に自宅に郵送されてきました。
このように、検査結果については個人的に郵送されてくることがほとんどですが、派遣会社は労働者の健康状態を把握する必要がありますので、もし「診断結果を提出して下さい」と言われたら指示に従って提出しましょう。
健康なくして仕事はできない、健康診断はありがたい機会
本記事では、健康診断の種類や検査項目、流れなど様々なことについて考えてみました。
派遣会社の規定によって受けられる検査や費用、それに伴うルールなどが変わってきますので、気になることがあれば受診前に確認しておきましょう。
健康診断は時間もかかるし面倒だという気持ちもよく分かります。
しかし良く考えれば、会社の費用で健康診断を受けられることで病気の早期発見にも繋がり、安心に変わることも多いですよね。
健康なしでは仕事もできませんし、仕事ができなくなれば生活もできなくなります。
自分のためだけでなく、家族のためにも健康診断の機会をありがたく捉えてみましょう。