20代前半は正規雇用でも非正規雇用でもそれほど月収に差がありません。特に派遣社員は正社員よりも月収は勝っている場合もあります。しかし20代も後半になると正規雇用と非正規雇用の収入の差は徐々に開いていく傾向があります。
そういった意味で28歳はある意味分岐点と言える年齢と言えます。
派遣社員をしている方の中にはこのまま派遣を続けるか、それとも正社員を目指すか悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
今回は28歳の派遣社員が正社員になれるかを中心に、派遣と正社員の年収の比較や派遣の業種による給与の比較、派遣で働くメリットとデメリットなどを紹介します。
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派遣社員から正社員を目指す理由を振り返る
現在28歳で派遣社員をしている方の中には、正社員になろうか迷っている方もいるのではないでしょ201うか?
28歳はすでに第二新卒枠に含まれない年齢ですが、まだ20代なので30代に比べれば採用されやすいです。
そのため30代になる前に正社員になろうとすることは悪くはないのですが、正社員から正社員に転職をするより、派遣社員から正社員に転職をする方が難易度は上がるので、明確に正社員になりたい理由を改めて振り返ることが大事です。
もしかしたら「やっぱり自分は派遣社員の方が向いているかも」と思うかもしれません。
正社員になりたい理由
28歳という年齢がきっかけで正社員になりたい場合、考えられるのは以下のような理由です。
- 安定した収入を得たい
- 収入をアップさせたい
- 福利厚生がしっかりしていてほしい
- プロジェクトの中心で働きたい
- 責任のある仕事をしたい
この5つ以外にも様々な理由がありますが、多くはやはり収入に関係することではないでしょうか?
ではここで28歳正社員の年収と派遣の年収を比較してみましょう。
28歳の正社員と派遣社員の年収の差
dodaの「年代別・年齢別 平均年収情報【最新版(2019年)】」によると28歳の平均年収は390万円です。
しかしこの中には正規雇用と非正規雇用がどちらも含まれています。
正社員と派遣社員では年収にどれだけ差があるのでしょうか?
28歳正社員の平均年収
政府統計を閲覧できるe-Statの令和元年賃金構造基本統計調査には「正社員・正職員計」という名前で年齢ごとの平均給与の統計があります。
28歳(正確には25~29歳)の所定内給与額は月額249,500円、きまって支給される現金給与額が284,800円、そして年間賞与その他特別給与額は768,900円です。この情報から28歳の正社員の平均年収を求めます。
284,800円 × 12ヵ月 + 768,900円 = 4,186,500円
上記より正社員28歳の平均年収は約419万円となります。
28歳派遣社員の平均年収
令和元年賃金構造基本統計調査には派遣社員だけの統計がないため、厚生労働省の「平成30年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」を参照します。
こちらの集計は年齢別にデータを取っていないのですが、派遣社員は年齢によってほとんど収入の差がありません。後ほど詳しく触れますが、派遣社員の給与は年齢ではなく派遣される業種によって大きく影響されるのです。
それでは労働者派遣事業報告書のデータを28歳派遣社員の平均日給として年収を求めます。
派遣社員の日給(8時間労働)の平均はデータの内容を単純に平均化すると12,604円となります。
そのため1ヶ月に22日働いたとして、12ヵ月をかけて平均年収を計算します。
12,604円 × 22日 = 277,288円(月収)
277,288円 × 12ヵ月 = 3,327,456円(年収)
月収が約28万円で年収は約333万円となりました。
派遣社員と正社員の年収を比較
計算をした28歳の平均年収を比較してみましょう。
年収 | 時給換算 | |
正社員 | 419万円 | 1,983円 |
派遣社員 | 333万円 | 1,575円 |
正社員の年収約419万円と比べると、86万円程度の差があります。28歳全体の平均年収390万円とでは約57万円の差です。
正社員に関しては時給という形で給与が計算されるわけではありませんが、時給換算をした時の条件を派遣社員と揃えると1,983円になります。
派遣は業種により時給の差が大きい
派遣社員の年収は正社員の年収よりも85万円以上低い結果となりましたが、派遣社員は派遣される業種により給与に大きな差があります。これは現在なお年功序列が主流である正社員とは大きく違う点でもあります。
そのため取得が難しい資格や特殊なスキルがあれば、50代のベテランより20代の若手のほうが稼ぐことが可能なのです。そういった意味で派遣の世界は成果主義と言えます。高いスキルが必要な仕事ほど賃金も高くなり、誰でもできる仕事は安くなる傾向があるのです。時給に500円以上の差があることも珍しくありません。
派遣の日給の例
業種ごとの給与差がどれぐらいあるか確認するために、労働者派遣事業報告書から抜粋します。
- 農業従事者:8,122円
- 一般事務従事者:10,146円
- 製造技術者:14,002円
- 情報処理・通信技術者:17,658円
- 医師・歯科医師・獣医師・薬剤師:23,595円
農業従事者と医師・歯科医師・獣医師・薬剤師を比較すると15,473円の差があります。
医師などの年収を計算すると 23,595円 × 22日 × 12ヵ月 = 6,229,080円 となり、正社員の平均年収より多くなるのです。
28歳正社員より収入が多くなる派遣の業種
派遣社員でも業種によっては正社員より年収が高くなることが分りました。では医師・歯科医師・獣医師・薬剤師以外でも正社員より高い年収を得られるのはどのような業種かも確認しておきましょう。
正社員28歳の平均年収は約419万円なので、日給に換算すると約1万6千円となります。
日給が1万6千円以上の派遣には以下のような業種があります。
- 法人・団体管理職員:17,884円
- 情報処理・通信技術者:17,658円
- 建築・土木・測量技術者:17,332円
やはり特殊技術が必要となる業種は賃金が高い傾向にあります。
派遣社員は業種により給与に差があり、28歳正社員より高い年収を得られる業種もあるのです。ただし、そういった派遣先は特殊なスキルや資格が必要となります。
年収が正社員より多いといっても、それは28歳の正社員の場合です。年功序列の正社員は30歳、40歳、50歳と年齢を重ねていくごとに収入もアップしていきます。
派遣社員で正社員より年収が高くなるケースは本当に一部のみ
紹介をしたように確かに派遣社員の方が正社員より収入が高くなることもあります。
ただ、それは専門知識や特殊技術が備わっており、そもそも正社員としていつでも雇用されるレベルの方の話です。
全員に当てはまるわけではないですし、むしろ当てはまる人の方が少ないと言えるでしょう。
つまり、単純に年収ベースだけで考えた時に28歳時点では正社員の方が様々なメリットが含まれていると考えた方が良いです。
28歳の派遣社員は正社員になれるのか?
28歳はすでに第二新卒枠から外れており、正社員への採用は以前にくらべて厳しくなっています。
とは言え不可能ではありませんし、結論から言うと採用の可能性は十分あります。
正社員採用へのポイント
30代に近づくほどこれまで何をやってきたか、どんなスキルがあるのかが問われます。28歳が正社員として採用されるためにはどんなことが必要でしょうか? 2つのポイントがあります。
ポイント1)明確な目的を持って就活をする
単に正社員になりたいというだけでは採用担当者の心を動かすことはできません。将来どんな仕事がしたいかを考えて方向性を決めることが大切です。
ポイント2)派遣社員の立場を活用し経験を積んでおく
異業種や未経験分野で働きたいなら、派遣社員をしている間にハードルが低いところから経験を積むことも必要です。中途採用の正社員の募集のほとんどは「実務経験○年以上」「経験者のみ採用」などの条件もめずらしくありません。
また正社員を目指すなら年齢が高くなると方向性を変えるのが難しくなるので、少しでも若いうちに取り組むことも重要です。
手取り額が下がる場合があるけど実質的にはほとんど上がる
派遣社員から正社員になった場合、月々の手取りの金額が下がる場合があります。派遣はボーナスなどが無いこともあり時給は高めに設定されているのです。
ところが正社員は年2回のボーナスがある場合が多く、その分月々の手取額が少ない可能性があります。しかし年収で見た場合、ボーナスをしっかりもらえればアップすることがほとんどです。
また、福利厚生などが充実している会社であれば、年収以外でもメリットが大きいので実質的な年収は派遣社員の時よりも上がることは期待できるでしょう。
28歳はまだ20代ですし正社員になれる可能性は十分にあります。しかし漠然と正社員になりたいというだけではなく明快な目的を持つことが重要ですし、年齢に見合うスキルを身に着けておく必要もあります。
28歳派遣は経験を積めるのか?
未経験の業界の正社員を目指す場合、派遣で働くことで経験を積むことはできるのでしょうか?
経験は積めるがスキルアップにつながりにくい
派遣社員は様々な職場を体験できるため、未経験職種や異業種にチャレンジすればある程度の経験をつむ事は可能です。
ただし契約の範囲内でしか仕事をできないため、それが時給アップにつながったり正社員への道が開けたりするとは限りません。スキルアップをしたいなら、自ら勉強をして資格取得が必要です。
派遣会社の研修制度を利用してスキルアップ
2015年に労働者派遣法(第30条の2)が改正されたことにより、正社員とのスキルの差を埋めるため、派遣会社は派遣社員に教育訓練を受けさせることが義務化されました。
それぞれの派遣会社が教育訓練や研修を用意しているので、それらを利用してスキルアップをすることもできます。
しかし教育訓練は各派遣会社により内容に差があり、有料の場合も多いのでその点は確認が必要です。気に入った研修が無ければ、研修制度が充実している派遣会社に登録するのもいいでしょう。派遣会社は複数登録しても問題ありません。
派遣では異業種や未経験職種に挑戦することである程度の経験を積むことは可能ですが、大幅なスキルアップには繋がりにくいです。そのためスキルアップするなら、派遣会社の研修制度を利用するなどして自分で勉強する方が良いでしょう。
将来を考えると28歳派遣はもったいないのか?
人それぞれに考え方がありますし、その人の置かれた状況により一概にもったいないとは言えません。
介護や育児をしていて長時間の勤務ができない、漫画家やミュージシャンなど夢を追いかけていて責任のある仕事をしたくない、そして同じ職場に長くいたくないなどの理由で派遣を続ける方もいます。
もちろん事情と働き方が合えば派遣社員は良い働き方です。また持っている資格や技術にもよりますが、特殊なスキルがあるなら派遣でも高収入を得ることは不可能ではありません。ただ、28歳が1つの節目の年齢であることも事実です。
28歳という分岐点
28歳という年齢は、他者との差を感じ始める年齢です。大学卒業後から正社員になっていればすでに6年のキャリアを積んでおり、管理職に就いていてもおかしくありません。
また、公務員試験の年齢制限には30歳のものが多く、公務員を目指したいなら今のうちに決断をする必要があります。
28歳で派遣社員をしていることはもったいないかどうかは、本人の置かれた状況や考え方によって変わります。派遣という働き方が合っているのならそのまま続けても良いですし、正社員や正職員を目指したいなら方向性をかえる良い時期でもあります。
最終的にどうするかを決めるのは自分自身です。
28歳が派遣で働くメリット・デメリット
28歳で派遣社員をしていることは本人の考え方次第ですが、30代を眼の前にしてそう簡単に決められない方もいるでしょう。そこで28歳が派遣社員で働くメリットとデメリットを紹介するので、判断材料にしてみてください。
派遣で働くメリット
派遣社員として働くことの代表的な4つのメリットを紹介します。
メリット1)未経験でも働くことができる求人が多い
派遣は正社員に比べて採用のハードルが低く、未経験の業種であったとしても紹介してもらえることが多いです。そのため正社員を目指す場合も、実務経験を積めるのでその点ではプラスになります。
メリット2)働く条件を設定できる
勤務地・勤務時間・期間を選ぶことが派遣なら可能です。そのため自分のライフスタイルに合わせて働きやすく、出産や育児、介護などに柔軟に対応しやすいです。
メリット3)定時退社が可能
就労条件にもよりますが、残業があることが明示されていない場合は残業を断ることができます。また派遣先も、派遣社員に残業代を支払うと割高になるため、頼むケースも少ないです。
しかし就労条件に残業が明示されている場合は別で、残業をすることを前提として派遣先は求人を出しているので断れません。定時退社をしたいなら、就労条件に残業がないことを確認してください。
メリット4)困ったことは派遣会社に相談できる
正社員だと職場で問題があった場合は専門の部署に相談するか、上司に相談することになります。専門の部署があれば良いですが、上司の場合どれぐらい親身になってくれるかはその人によりますし、その上司が問題の場合もあります。
派遣なら派遣会社に相談できるためそういった不安はありません。職場の雰囲気を気にする必要がなく相談しやすい場合が多いです。
正社員と比べると待遇が悪いと思われがちな派遣社員ですが、派遣ならではのメリットは多くあり正社員への転職へ役立つ面もあります。
それでは今度はデメリットについても確認しましょう。
派遣で働くデメリット
こんどは派遣で働くことのデメリット4つを紹介します。
デメリット1)交通費・ボーナスが出ない
派遣社員は正社員と違いボーナスや交通費がでません。その分、時給が高いと考えることができます。
デメリット2)安定した収入や昇給は期待できない
派遣社員は1つの職場で3年以上は働くことができず安定しません。希望条件を高く設定しすぎると次の仕事がなかなか見つからない場合があり、働かない期間が長くなる恐れがあります。派遣社員は派遣されていない期間は無職と同じで、派遣会社からは給与が支払われませんし、ほとんど昇給もありません。
デメリット3)高度な技術やスキルが無いと給与が高い仕事を紹介してもらえない
派遣社員でも正社員より収入を得ることが可能ですが、そのために必要な特殊な資格は取得が難しいものがほとんどです。努力をして勉強しても取得できるとは限りません。
デメリット4)休みが多いと給与も少なくなる
派遣社員はアルバイトや契約社員同様に時給制である場合が多いです。そのため今回のコロナ禍のように働くことができない状況になると収入が無くなってしまいます。
派遣は自由度が高いですが、給与面ではやはり正社員より不利な面は多く、また配属先の部署での勤務上限が3年と定められているため長年にわたって働いていきたいひとにとって、安定感がありません。
現在派遣社員をしている28歳の方で、正社員を目指すか派遣を続けるか悩んでいるなら、ここで紹介したメリットとデメリットを比べてみて、どちらが自分にとって大きいかを考えてみてください。デメリットが大きければ正社員へ向けて準備を始めるべきですし、メリットが多ければそのまま派遣を続けるのが良いでしょう。
派遣は安定しませんが、将来設計をしっかりと立てて働いていくことも可能です。
28歳が派遣で働くのが良いか悪いかは本人が決めること
30代を前にして28歳は迷いが生まれやすい年齢です。
しかし、それは決して悪いことではありません。
28歳で派遣社員を続けていって良いのか、それとも正社員になるべきか、一度立ち止まって考えることは大切です。
派遣では将来不安で正社員になりたいというなら、今まで派遣で積み重ねてきた経験やスキルを分析し転職するのも良いでしょう。
ただし単に正社員になりたいというだけでなく、どんな目的で働きたいのかを明確にしておかなければ採用されにくいです。
もちろん派遣社員を続けるのも良い選択です。自分の置かれた環境などで派遣が合っている方もいるでしょうし、または単に派遣というシステムが好きな方もいるでしょう。どの働き方を選ぶかは最終的に自分で決めなければなりません。
ただ気を付けなければならないのは、年齢が高くなるほど転職は厳しくなるという点です。ここはよく考えなければならない問題ですが、決断を先延ばししてはいけません。
派遣社員か正社員か、どちらを選ぶにしろ後悔の無いようにしましょう。
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