押さえておきたい派遣社員の仕組みについて。雇用関係や役割から給与の仕組みまで

派遣社員の働き方

派遣社員という言葉が浸透してだいぶ経ちますが、具体的に派遣社員の仕組について知っていますか?

今回は派遣社員がどのようなシステムで働いているのか、派遣会社や派遣先企業との関係性はどうなっているのか、そして派遣社員として働くことのメリットとデメリットを紹介していきます。

派遣社員に興味のある方や派遣社員で働くか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

派遣社員とは

2020年、篠原涼子主演の人気ドラマ「ハケンの品格」の続編が13年ぶりに制作されました。

前作では特Aランクの評価を受けていた主人公が、今回は特Sランクにパワーアップ。前回の派遣先に戻り、様々なピンチやトラブルを解決していくという内容です。

フィクションなので現実と相違しているところはありますが、このドラマで「派遣社員」という存在を知った方もいるのではないでしょうか?

ここでは派遣社員の特徴や派遣社員の種類について紹介していきます。

派遣社員の特徴

派遣社員の特徴を知るには正社員やアルバイトなどと比較するとわかりやすいです。

派遣の特徴1. 雇用契約は派遣会社と結ぶ

正社員、契約社員、パート、アルバイト、この4つはそれぞれ違いがありますが、いずれも勤め先の企業と直接契約を結び給料も勤め先から支払われます。

一方、派遣社員は派遣元である派遣会社と契約を結び給料も派遣会社から支払われているのです。

派遣の特徴2. 仕事の指示は派遣先から受ける

厚生労働省の派遣の派遣制度のページに記載されている図の通り、仕事の指示は派遣社員も社員やアルバイトと同じく、派遣先企業から受けます。

少し複雑なので正社員のハナコさんと、派遣社員のタロウさんを例に確認します。

ハナコさんは正社員としてA社に勤めていますが、タロウさんは派遣社員としてB社に登録してA社に派遣されています、職場は一緒です。

しかし給料はハナコさんがA社から支払われているのに対し、タロウさんはB社から支払われています。A社はタロウさんを派遣してもらうためにB社に依頼料を支払っていますが、あくまで取引をしているのはB社でありタロウさんではないのです。

しかし、二人ともA社で働いているので、仕事の指示はA社から受けています。

派遣社員の種類

「派遣社員」「派遣スタッフ」「派遣労働者」「派遣」と色々呼び方はあるのですが、これらは基本的にどれも同じです。ただしこれらの呼び方とは別に派遣社員には3つの種類があります。

派遣の種類 1)登録型派遣

一般的に「派遣社員」というとこの「登録型派遣」を指している場合が多いです。

登録型派遣は、まず派遣会社に登録します。登録だけではまだ派遣会社との雇用契約は成立していません。雇用契約が成立するのは派遣先が決まり派遣契約が成立した時です。

ここで初めて派遣社員になります。

そして派遣契約が終了すると、派遣社員と派遣会社との雇用契約も解消されるのです。つまり派遣社員となり給与が発生するのは派遣されている期間のみとなります。

派遣の種類 2)無期雇用派遣

派遣契約とは関係なしに無期限で派遣会社と雇用契約を結ぶのが「無期雇用派遣」です。

これは派遣会社に無期雇用の社員として雇われ、他の企業に派遣されるという仕組で、派遣先が決まっていようがいまいが安定して給与が支払われます。

基本的には1つの契約が終了すれば次の仕事をすぐに紹介してもらえます。

※無期雇用派遣は派遣会社に社員として雇われますが、無期雇用というだけで正社員とは限りません。

派遣の種類 3)紹介予定派遣

派遣期間終了後、派遣社員が派遣先の企業の正社員か契約社員になることを前提としているのが「紹介予定派遣」です。

派遣期間は最長で6ヵ月と定められており、言わばこの期間が企業側と派遣社員のお試し期間とも考えられます。

派遣期間終了の際に企業側と派遣社員本人が同意すれば、正社員か契約社員へと移行します。もちろんどちらか一方が断ると移行はされません。

派遣は不安定というイメージが一般的ですが、無期雇用派遣なら派遣されているものの派遣会社の社員なのでそこまで不安定ではありませんし、紹介予定派遣は派遣社員と派遣先企業の合意があれば正社員か契約社員になれます。

また、今後この記事で用いる「派遣社員」は「登録型派遣」を意味します。

派遣社員とは一言でいうと、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で働く社員のことです。

そのため給与の支払いや福利厚生は派遣会社によって行なわれますが、仕事の指示は派遣先から受けることになります。

派遣社員の置かれる環境や仕組み

派遣社員がどのような環境や仕組みの中で働くことになるのかを項目ごとに分けて紹介します。

派遣期間

派遣には契約期間があります

1日単位の仕事から半年以上のものまで様々です。

1ヵ月から2年ぐらいの派遣が多いといわれ、上限は3年となっています。派遣社員は自分に合う期間の求人を選ぶことが可能です。

給与

時給で計算されるので、出勤日数 × 時間 によって給料が決まります。

また、派遣会社によって異なりますが、ボーナスや交通費は出ないことが多いです。

給与の支払い

給与の支払いは翌月や半月後などが多いものの、派遣会社によって異なります。

そのため登録するときや派遣先が決まった時に締日と支払日は確認しておきましょう。

勤務時間の管理方法

管理方法は以下の2つが主流です。

タイムシート

派遣会社から支給される用紙を使用して自己申告する方法。各派遣会社が設定している締切日にタイムシートをFAX送信し、それを基に派遣会社が給与を計算する仕組みです。

Web管理

Webを利用して勤務時間管理します。最新の勤怠管理システムでは、スマホやタブレットによって打刻をすることが可能です。

派遣期間が定められているなど派遣社員には正社員や契約社員とは異なる点もありますが、給与が時給制であるところなどはパートやアルバイトと共通しています。

こういった細かな点も理解して派遣社員への不安を払拭してください。

派遣社員として働くまでの流れ

派遣社員が置かれる環境や仕組みが分ったところで、今度は求職者が派遣社員として働くまでの流れを確認します。

①派遣会社に登録(ほとんどの場合無料)

職務経歴・スキル・希望の職種や勤務条件などを聞かれることが多いです。

②派遣会社から派遣先の企業を紹介される

一方的に企業を決められるのではなく、①で出した希望に合う企業が紹介されます。

③面談

面談は派遣先の企業や派遣の種類によって異なります。

顔合わせや職場見学という名目で行なわれる場合もありますが、面接に近い選考を行なっている派遣先が多いです。

そのため派遣社員のスキルを聞かれたり仕事内容を聞いたりして、お互いの疑問点・不安なことを極力なくします。

④合意が出来たら仕事スタート

派遣先の企業と派遣社員の両者が合意したら仕事がスタートします。

このような流れで派遣社員の仕事が始まります。

派遣会社と派遣社員の関係

派遣社員がどのような流れで就業するかが分ったところで、今度は仕事を紹介してくれる派遣会社との関係について確認していきましょう。

「派遣社員とは」でも少し触れましたが、ここでは派遣社員と派遣会社の関係をより詳しく紹介します。

派遣会社が持つ派遣社員への役割

日本人材派遣会の人材派遣についての図を見てわかるように、派遣会社は主に派遣先と派遣社員の仲介者のような役割を果たしてくれています。

それでは具体的にどのような事を派遣会社は派遣社員にしているのか確認してみましょう。

給与、福利厚生の提供

派遣会社は派遣社員の給与はもちろん福利厚生も担っています。

他にもスキルアップのための研修を受けることも可能ですが、無料のものばかりではなく有料のものも含まれますし、派遣会社によって行なう研修の内容や充実度に差があります。

勤務先でのトラブルのフォロー

派遣会社により差はありますが、派遣された後も派遣先に担当者が様子を見に来てくれたり、カウンセリングをしてくれたりします。

また、契約外の仕事をさせられるなどのトラブルや人間関係の相談などにも対応し、派遣社員をフォローしてくれるのです。

給与アップや仕事内容の交渉

やってみたいけれど給与面や仕事内容に不満のある場合、派遣先の企業と交渉をしてくれる場合があります。

また派遣の最中に派遣先から仕事内容の変更のオーダーがあった場合、派遣社員の一存で決めることは出来ず必ず派遣会社を通さなければなりません。

変更の内容次第では給与交渉をします。

契約終了後の求人紹介

派遣社員を終了すると派遣会社との雇用契約が解除されてしまいます。

空白の期間を空けたくないならその旨を担当者に伝えておけば希望に合った求人を探してくれます。

派遣会社は、人材を企業に紹介して実際に派遣が決まると利益が得られるというビジネスモデルです。

派遣会社と派遣社員の関係は、役者とプロダクションの関係に似ています。

役者は演技の指示などは監督から受けますが給与はプロダクションから支払われていますし、出演交渉やギャランティーについてはプロダクションマネージャーの担当です。

同じように、派遣社員は職場での指示は派遣先から行なわれ、給与は派遣会社が支払い、給与アップや仕事内容の交渉は派遣会社の担当者が行なうのです。

つまり派遣会社は派遣社員のマネジメントをしていると考えることができます。

派遣先企業と派遣社員の関係

派遣会社と派遣社員の関係を確認してきましたが、次ぎに派遣先企業と派遣社員の関係についても確認しておきましょう。

派遣先企業は派遣社員に自分たちの仕事をしてもらうので、業務内容の指示などを行うため指揮命令関係にあります。

派遣先企業が持つ派遣社員への役割

派遣先企業は派遣社員に対して仕事の指示や服務指導などを直接行ないます。

派遣先企業が派遣社員に出来ないこと

派遣先企業ではタイムシートの記載などは派遣会社への支払いに関わるため行ないますが、派遣社員の給料については基本的にノータッチです。

派遣先ができるのはあくまで派遣企業と契約した範囲内で派遣社員を働かせることなので、意外に制約があります。

出来ないこと 1)就業場所の異動を命じること

派遣会社との契約で定められていない修行場所への移動を派遣先の一存で契約社員に命じることは出来ません。移動させる場合は改めて派遣会社を通す必要があります。

出来ないこと 2)給与や昇給を決めること

派遣社員に給与を支払っているのは派遣会社のため、派遣先が派遣社員の給与や昇級を決めることは出来ません。

出来ないこと 3)賃金を支払うこと

これも「出来ないこと 2」同様、派遣社員の賃金は派遣会社が支払っており、派遣先が直接支払うことは出来ません。直接支払うには派遣社員を直雇用として雇う必要があります。

派遣先企業は派遣社員の給与には直接タッチすることは出来ず、また仕事についても派遣会社との契約に関わる就業場所の移動なども一方的に命じることは出来ません。

派遣社員のメリット・デメリット

派遣社員について色々確認してきましたが、それではいよいよ派遣社員のメリットとデメリットを紹介します。派遣という働き方に迷っている方は特に参考にしてください。

派遣社員のメリット

派遣社員には5つの代表的なメリットがあります。

メリット 1)自分のスケジュール・ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける

希望に合った勤務地・勤務時間・期間を選択でき、自分のスケジュールやライフスタイルに合わせて働けます。

メリット 2)様々な職場で経験を積める

派遣社員は例外をのぞき、最長3年までしか同じ職場に勤めることができないので、自然と多くの職場で経験を積むことになります。

メリット 3)派遣会社に相談できる

派遣会社はいわば派遣先の会社と派遣社員の仲介役のような存在なので、派遣先の会社の不満などがあればいつでも相談することができます。

メリット 4)アルバイト・パートよりも時給が高い

同じ職務内容でもパートやアルバイトよりも時給が高いことが多いです。

メリット 5)未経験でも働くことができる求人が多い

派遣社員は正社員に比べると一般的に採用のハードルが低く、未経験の職種であったとしても派遣として経験を積むことができます。

そのため派遣社員で経験を積んで正社員へのステップにすることも可能です。

育児や介護で長時間の勤務が難しかったり責任のある仕事をしたくなかったりする方に、派遣社員という働き方は合っています。

また、派遣社員で経験を積んで転職で正社員を目指すという考えの方にもピッタリです。

派遣社員のデメリット

派遣社員の4つのデメリットを紹介します。

デメリット 1)将来が不安

正社員と異なり雇用が不安定。雇用期間があらかじめ決められていて、それを過ぎると契約更新か終了かが決まります。

また最長で3年という上限もあり、それを過ぎると基本的には契約は終了となり次の仕事を探さなければなりません。

デメリット 2)交通費・ボーナスが出ない

派遣社員は賞与や交通費が基本的にでません。そのため年間で見ると正社員と派遣社員で給与の差が大きいことがよくあります。

デメリット 3)長期休みがあると給料が少ない

月給があらかじめ決まっていることが多い正社員と異なり、派遣社員は時給制である場合が多いです。そのため長期の休みがあると出勤できず、給料が少なくなってしまいます。

デメリット 4)仕事の出来次第で給料や契約に影響が出ることが多い

契約期間がさだまっているからこそ、シビアなことが多くあります。

派遣社員は正社員と比べると不安定で給与も少ない場合が多いです。

以上のように、派遣社員の代表的なメリットとデメリットをそれぞれ紹介してきました。

メリットとデメリットは裏返しになっている場合もあり、その人の立場によって変わってしまいます。派遣社員を検討するなら自分にとってメリットとデメリット、どちらが多いのかを考えて判断してください。

派遣社員を活用しよう

今回は派遣社員がどのようなものかを詳しく紹介してきました。

一般的に派遣社員は安定せず正社員のほうが良いと考えられています。

安定性と給与面を考えれば確かにそうですが、ライフスタイルに合わない人がいるのも事実です。合わないのに無理に正社員をしても長く続きませんし、無理をして体を壊す恐れもあります。

そのため自分に合った働き方を選ぶことが大切です。

また派遣社員を最終地点と考えず、スキルを磨き実績を積む場所にして転職へのステップにすることもできます。

もし、自分のライフスタイルや目的に合っているのに派遣社員として働くことをためらっているなら、それはもったいないです。ぜひ一歩を踏み出してください。