仕事を探す際「派遣・パート・アルバイト」の三択で悩む人は多いのではないでしょうか。
そもそもこの3つの違い分からないという人もいますよね。
しかし会社に就業する前から就業後まで、その違いは明確なのです。
この違いを知っていれば「最初から派遣を選べば良かった」「働き方が合っていなかった」ということを避けることができるでしょう。
本記事では、派遣とパート・アルバイトの違いについて、就業前から就業後までの違いや、働き方以外の「社会保険」や「有給の使いやすさ」などについても詳しく説明します。
パートとアルバイトは基本的に同じ、呼び方が違うだけ
パートとアルバイトは、呼び方が違うだけで基本的に同じです。
アルバイトはドイツ語の「仕事」を語源とする言葉なだけで、どちらも同じ会社の正社員と比較して、週の所定労働時間が短い人のことを指しています。
どちらも有期雇用で期間に定めがあり、会社に直接雇用される働き方です。
日本では、パートタイム労働者の方がアルバイトに比べて労働時間が短いケースが多く、働いている人は主婦層がメインとなっています。
一方でアルバイトの場合は学生がするイメージが強いでしょう。
派遣とパート・アルバイトの違い
パートとアルバイトは基本的に同じだということが分かりましたね。
では、派遣とパート・アルバイトの違いは何でしょうか。
私はアルバイトも派遣も経験がありますが、どちらも短時間労働ができるという点では変わりませんでした。
しかし就業前・就業中・就業後ともに、大きな違いがあったのです。
ここからは派遣とパート・アルバイトの違いを詳しく見ていきましょう。
大きな違いは雇用主
派遣とパート・アルバイトの大きな違いは雇用主です。
派遣の場合は派遣会社に登録し、派遣先が決まったら派遣会社と雇用契約を結びます。
派遣先の企業で勤務するため、仕事の指揮命令は派遣先から受けますが、雇用主は派遣会社なので毎月の給料は派遣会社に貰うのです。
このように、労働者と勤務先の間に第三者(派遣会社)が介入することは「間接雇用」と呼ばれます。
図にすると以下のように三角関係になっているのです。
一方パートやアルバイトの場合、勤務先の会社に直接応募し、採用が決まったらその会社と直接雇用契約を結びます。
「勤務先」と「雇用主」が同じなので、仕事の指揮命令も毎月の給料も同じ会社から貰うのです。
多くの人はこのような働き方をしていて第三者が介入しません。これを「直接雇用」と呼びます。
派遣社員は間接雇用、パートやアルバイトの場合は直接雇用なのです。
仕事探し・採用までの流れの違い
派遣とパート・アルバイトの仕事探しや、採用までの流れの違いを見てみましょう。
仕事の探し方
最初に仕事の探し方の違いです。
派遣の場合はまず派遣会社に登録し、自分が働きたい条件(勤務地や勤務時間・日数・業務内容など)を細かく伝えるところから始まります。
登録後は希望条件に近い求人がメールで自動配信され、担当者から電話で紹介されることも多く、良いと思ったもがあれば応募するという流れです。
何か不明点があれば派遣会社に問い合わせ、派遣会社から回答を得ます。
派遣会社は派遣先の情報などを詳しく知っていますので、応募前に沢山情報を得ることが可能です。
一方パートやアルバイトの場合、自分でインターネット検索をしたり雑誌などから仕事を探します。
自分が働きたい時間帯や曜日などが会社の募集条件と合っているかを確認し、不明点があれば応募前に直接会社に問い合わせなくてはいけません。
業務内容についてなどの詳しい情報は、面接に行くまで曖昧なケースも多いでしょう。
雇用期間の制限
次に雇用期間制限の違いです。
パ-ト・アルバイトは1日~1か月以内の短期の仕事も多く、誰でも応募できます。
また、長期の場合は自分から「辞めます」と言わない限り、同じ職場で長期間働くことが可能なケースが多いです。
一方派遣の場合、労働契約期間が1日~30日以内の単発・短期の仕事は「日雇い派遣」と呼ばれ、日雇い派遣をするには以下のいずれかの条件をクリアしなければいけません。
日雇い派遣ができる条件
- 60歳以上
- 雇用保険の適用を受けない学生(昼間学生)
- 正業収入が500万円以上で副業として従事する人
- 世帯収入が500万円以上で主な生計者以外の人(複数の仕事をしている場合は一番収入額が高いものが主な仕事とする)
上記に該当する場合は日雇い派遣が可能です。
主婦の場合であれば上記3、4の「年収500万円以上の人が副業として行う場合」か「年収500万円以上の配偶者など、メインの生計者がいる人」に該当する必要があります。
日雇い派遣で認められている業務を見てみましょう。
パートやアルバイトの場合は短期間の就業でも簡単にできますが、日雇い派遣の場合は職種など色々と条件があるので、事前に短期派遣できるのか確認した方が良いでしょう。
また、派遣の場合は同じ職場(同じ部署・課)で働けるのは最大で3年間となっていますので、自分で「辞めたい」と言わなくても、3年後には契約期間満了となり退職を余儀なくされます。
ただし同じ職場で3年以上の勤務を希望する場合、派遣先に直接雇用をしてもらえないか交渉することは可能です。
日雇い派遣とは?ルールや例外事由、メリットやデメリットのまとめ
派遣社員の3年ルールと5年ルール。契約満了や直接雇用や無期雇用はどんなタイミングになる?
履歴書や職務経歴書
派遣の場合、会社に応募するのに履歴書や職務経歴書は不要です。
派遣会社に登録する際に自分の経歴などを細かく入力しているため、派遣会社の担当者はそのデータを基に選考を進めます。
何社に応募してもこれらを用意する必要がないので、気軽に応募が可能です。
一方、パートやアルバイトの場合は履歴書や職務経歴書が必要となります。
履歴書に貼る写真も必要になるので、結構な手間がかかりますよね。
面接の有無
パートやアルバイトの面接の場合は会社に一人で出向き、直接上司と面接して「会社の提示した条件に合っている人か」を見られます。
一方、派遣の場合は「派遣社員を選別するための行為」が禁止されていますので「事前面接」といったものはなく、代わりに「顔合わせ」「職場見学」を行うケースが多いです。
派遣の「顔合わせ」や「職場見学」とは、就業前に派遣会社の営業担当者と一緒に派遣先企業を訪問し、派遣先の上司から「業務内容」などの説明・確認が行われることを言います。
派遣の顔合わせや職場見学に進んだ場合、基本的には合格前提のケースが多いのが特徴です。
派遣の職場見学って何する?顔合わせや面接との違いや、服装、質問だと準備しておくべきこと
企業に求められるもの
派遣とパート・アルバイトとでは、企業に求められることが違います。
派遣の場合は「どれだけ即戦力になれるか」ということが求められるため、その人のスキルや経験が重視されることが多いです。
そのため専門職や技術職の求人も多く「実務経験者」「〇〇の資格を有している人」といった条件も沢山あります。
一方パートやアルバイトの場合は、派遣に比べて条件を提示されていることが少なく、採用の対象範囲が広いことが多いのです。
もちろんパートやアルバイトでも会社の即戦力になれるに越したことはないですが、派遣に比べると最初から企業に求められることは少ないでしょう。
待遇の違い
次に、派遣とパート・アルバイトの待遇の違いを見ていきましょう。
賃金の相場、時給が違う
インターネットや求人誌を見ると、派遣の方が時給が高く、賃金の相場が高い傾向にあります。
ジョブズリサーチセンターが行った「三大都市圏における2019年8月度のデータ」では、アルバイト・パートの募集時の平均時給は1,063円、派遣の場合では1,636円と、約600円もの差がありました。(参考:ジョブズリサーチセンター「平均賃金レポート(派遣)」)
実際に私もアルバイトの時と派遣社員の時の時給を比較すると、同じような職種でも時給は400円以上差があったのを覚えています。
福利厚生の差
福利厚生というと「保険」や「有給休暇」、「産休・育休」をイメージする人が多いと思いますが、それだけではありません。
会社によっては「その会社に勤めているからこそ受けられるサービス・特典」があるのです。
派遣社員の場合、大手派遣会社で手厚い福利厚生が用意されているケースが多く、スキルアップの機会に恵まれたり、プライベートに利用できるサービスなどがあります。
たとえば語学・PC講座・IT講座など、様々な業務に関連するスキルや資格取得のための無料講座が受講できたり、研修やセミナーに参加できるなど、スキルアップやキャリアアップの環境が整っているケースが多いのです。
また、レジャーや宿泊施設の割引など、休日に利用できる特典が多い派遣会社もあります。
それに比べてパートやアルバイトの場合、このような福利厚生を受けられる機会は少ないでしょう。
派遣の福利厚生について詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
派遣の福利厚生の種類。社会保険は義務、他に充実した福利厚生がある派遣会社も
就業中・就業後の違い
派遣とパート・アルバイトの就業中や就業後の違いを見てみましょう。
相談相手
派遣とパート・アルバイトでは、就業中の相談相手が違います。
「こんな仕事までするなんて聞いていない」「人によって言うことが違うから仕事がしにくい」など、就業中に様々な悩みを抱えることは多いですよね。
派遣の場合「労働条件の相違」や「職場の環境」の悩みなど、就業に関する相談は全て、雇用主である「派遣会社」にします。
特に労働条件など契約内容の変更に関しては、必ず派遣会社を通さなくてはいけません。
派遣会社が派遣先企業との間に立って、改善の交渉や調整をしてくれるので、自分から派遣先企業に何か言う必要はないのです。
一方パート・アルバイトの場合は仲介する人がいませんので、会社の先輩や上司に直接相談するしかありません。
そのため「言いにくい…」と思って相談しない人も多いでしょう。
次の仕事探し
派遣の場合は一つの会社で契約期間が終わっても、派遣会社からまた次の仕事を紹介してもらえます。
私の場合は契約期間が終わる1か月前に「次の仕事を紹介して欲しい」と依頼したので、次の仕事開始までの間が途切れずに働けました。
一方パートやアルバイトの場合、次の仕事探しも自力で行わなくてはいけないので、条件の良い会社を自分で見つけるのに時間がかかることもあるでしょう。
有給の使いやすさ・引継ぎ
有給休暇は就業してから半年経てば誰でも付与されますが、有給休暇が使いやすいのは派遣社員の方でしょう。
私がアルバイトをしていた時は、有給休暇を取りたいと声を挙げる人は誰一人いませんでしたし、会社からも何も言われませんでした。
アルバイト先は学生が多かったこともあって、有給について詳しく知る人がいなかったからかもしれません。
しかし、派遣社員の場合は年齢層が高い人が周りに多く「有給使っていいからね」と会社側から言ってもらえたので、心置きなく使うことができました。
またパート・アルバイトの場合、有給を使わずに会社を辞めたら消滅してしまいまいますが、派遣の場合は有給を使用しなくても、1か月以内に同じ派遣会社で就業すれば有給を引き継ぐことが可能です。
派遣社員・パート・アルバイトの違いに関するQ&A
ここまでは派遣とパート・アルバイトの違いについて、就業前から就業後まで説明しました。
しかし「社会保険の加入についての違い」や「有給の付与日数の違い」など、就業に関係のない部分で知りたいことはまだ沢山あるでしょう。
ここからは、派遣とパート・アルバイトの違いに関して、よくある質問に答えていきます。
有給休暇の日数は派遣とパート・アルバイトに違いはある?
有給休暇の日数は、派遣やパートなどといった雇用形態で違いがあるわけではありません。
有給休暇の付与日数は、週の労働時間、労働日数によって異なります。
以下の表を見てみましょう。(以下引用:厚生労働省「有給休暇の付与日数」)
労働時間による有給休暇付与日数の違い
上記の図(1)はフルタイム労働者の有給休暇の付与日数、図(2)は短時間労働者の場合を表しています。
どちらにしても就業後半年経つと有給が付与され、その後は1年ごとに所定日数が増えていきますね。
例えば4月1日から1日5時間の派遣やパート・アルバイトを週3日でする場合、半年後の10月1日に5日間の有給休暇が付与されます。さらにその1年後は付与日数が加算されて6日間の有給休暇が取得できるのです。
ただし有給休暇が付与されるには、それまでの出勤が全体の8割以上という条件がありますので注意しましょう。
派遣社員が知っておくべき有給休暇の知識。いつ付与?辞めたら消える?使い方は?
社会保険加入はどちらでも可能?その条件は?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)は派遣やパートなどの雇用形態に関係なく、加入条件を満たせば入れます。
社会保険の加入条件は以下の通りです。
週の所定労働時間が30時間以上(雇用元の正社員の4分の3以上)かつ1ヶ月の所定労働日数が15日以上の場合:
- 契約期間が2ヶ月以上(契約更新により2ヵ月を超える場合も可)
週20時間~30時間未満(雇用元の正社員の4分の3未満)、もしくは1ヶ月の所定労働日数が15日未満の場合:
- 賃金の月額が88,000円以上
- 1年以上の雇用見込みがある
- (派遣の場合)契約期間が2ヶ月以上(契約更新により2ヵ月を超える場合も可)
- 従業員数が501人以上、もしくは従業員数が500人以下で、社会保険加入について労使間の合意で合意がなされている
- 昼間学生でない
上記の条件を満たした場合は、社会保険に加入することになります。
上記のように、短時間労働者の場合はフルタイムで働く人と違って細かな条件を全て満たさないといけません。
結局、派遣で働いた方が良い人はどんな人?
派遣でもパート・アルバイトでも、限られた時間で働くことは可能です。
ただ、「自分のスキルや経験を活かした職種に就きたい人」や「将来のためにスキルアップをしたい人」「より高い時給で働きたい人」「主婦世代」は派遣で働いた方が良いでしょう。
前項でも述べましたが、派遣社員はスキルや経験が求められ、会社の即戦力として働きますので、派遣会社によっては手厚いスキルアップサポートが受けられます。
また「実務経験必須」「〇〇資格保持者」といった高度な条件を指定している求人も多く、レベルの高い仕事をすることも可能です。
そのため「働いている自分に価値を見出せる」のは派遣社員の方だと言えます。
また主婦や子育て中のママが活躍する職場も多く、同じ立場の人がいて働きやすいという点で、主婦世代に向いているとも言えるでしょう。
結局、パートやアルバイトで働いた方が良い人はどんな人?
「短期・単発の仕事がしたい人」や「地元で働きたい人」、「レベルや経験を重視されずに働きたい」という人は、パート・アルバイトで働いた方が良いでしょう。
派遣の場合は、30日以内の仕事をするのに条件をクリアしなければできませんが、パートやアルバイトであれば短期の仕事をするのに条件はありません。
またパート・アルバイトでは地元での求人も多く、高度なレベルを求められることは少ないでしょう。
私の友人は週に3日、4時間だけ近所のスーパーでレジ業務をしています。
ただ、派遣でもレベルや経験を問わず淡々と単純業務をこなす仕事は多いです。
自分に合っているのはどんな働き方を考えよう
今回は、派遣とパート・アルバイトの違いを説明しました。
ここまでの記事をまとめてみましょう。
まとめ
- パートとアルバイトは「同じ会社の正社員と比較して、週の所定労働時間が短い人のこと」を指し、基本的には同じ扱いである
派遣社員 | パート・アルバイト | |
雇用主 | 派遣会社 (間接雇用) |
勤務先の会社 (直接雇用) |
仕事探し | 派遣会社からの メールや電話 |
自分で探す |
雇用期間 | 1か月以内の短期: 条件あり 1つの職場の限度: 3年 |
1か月以内の短期: 誰でも可 一つの職場の限度: なし |
履歴書・ 職務経歴書 |
不要 | 必要 |
面接 | なし (顔合わせや職場見学は あり) |
あり |
企業に 求められるもの |
スキルや経験 | なしのことが多い |
時給 | 高め | 割と低め |
福利厚生 | 手厚い会社が多い | 受けられにくい |
相談相手 | 派遣会社の担当者 | 直接会社に言うしかない |
次の仕事探し | 派遣会社が探してくれる | 自分で探す |
有給休暇 | 使いやすい・辞めても 引き継げる場合がある |
使いにくい・辞めたら消滅 |
- 派遣社員の方が時給が高めなのは、有給休暇分の給料や事務的手続きなどは派遣会社が行い、派遣先企業の負担が少ないからである
- 有給休暇の付与日数は派遣もパート・アルバイトも同じで「週の労働時間」や「労働日数」によって異なる
- 社会保険はどちらも加入条件を満たせば入ることができる
-
派遣社員に向いている人:自分のスキルや経験を活かした職種に就きたい人、将来のためにスキルアップをしたい人、より高い時給で働きたい人、主婦世代
-
パートやアルバイトに向いている人:短期・単発の仕事がしたい人、地元で働きたい人、レベルや経験を重視されずに働きたい人
自分が働く際には、どの働き方が一番合っているのか考えることが大事です。
その時の状況によっても自分に適した働き方は変わります。「今の自分は何を重視すべきなのか」を考えると良いでしょう。